源氏イラスト訳【若紫357】別人
「あらざりけり」と、あきれて、恐ろしと思ひたれば、
「あな、心憂。まろも同じ人ぞ」
とて、かき抱きて出でたまへば、大夫、少納言など、「こは、いかに」と聞こゆ。
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【源氏物語イラスト訳】
「あらざりけり」と、あきれて、恐ろしと思ひたれば、
訳)「父上ではなかったわ」と、驚きあきれて、怖いと思っているので、
「あな、心憂。まろも同じ人ぞ」とて、
訳)「ああ、つらい。わたしも父宮と同じ人ですよ」と言って、
かき抱きて出でたまへば、
訳)かき抱いて出て行きなさるので、
大夫、少納言など、「こは、いかに」と聞こゆ。
訳)惟光大夫や少納言の乳母などは、「これは、どうしたことか」と申し上げる。
【古文】
「あらざりけり」と、あきれて、恐ろしと思ひたれば、
「あな、心憂。まろも同じ人ぞ」
とて、かき抱きて出でたまへば、大夫、少納言など、「こは、いかに」と聞こゆ。
【訳】
「父上ではなかったわ」と、驚きあきれて、怖いと思っているので、
「ああ、つらい。わたしも父宮と同じ人ですよ」
と言って、かき抱いて出て行きなさるので、惟光大夫や少納言の乳母などは、「これは、どうしたことか」と申し上げる。
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■【あら】…ラ変動詞「あり」未然形
■【ざり】…打消の助動詞「ず」連用形
■【けり】…詠嘆の助動詞「けり」終止形
■【と】…引用の格助詞
■【あきれ】…ラ行下二段動詞「あきる」連用形
※【あきる】…驚きあきれる
■【て】…単純接続の接続助詞
■【恐ろし】…恐ろしい。怖い
■【と】…引用の格助詞
■【思ひ】…ハ行四段動詞「思ふ」連用形
■【たれ】…完了の助動詞「たり」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【あな】…ああ
■【心憂(こころう)】…ク活用形容詞「心憂し」の語幹
※【心憂し】…つらい。情けない。嫌だ
■【まろ】…わたし
■【も】……添加の係助詞
■【同じ】…シク活用形容詞「同じ」連用形
■【ぞ】…強意の係助詞(文末用法)
■【とて】…~と言って
※【と】…引用の格助詞
※【て】…単純接続の接続助詞
■【かき抱(いだ)く】…抱く(「かき―」は接頭語)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【出(い)で】…ダ行下二段動詞「出づ」連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【大夫(たいふ)】…光源氏の従者、惟光大夫をさす
■【少納言】…若紫の侍従、少納言の乳母をさす
■【など】…例示の副助詞
■【こはいかに】…これはどうしたことか
※【こ】…これ
※【は】…取り立ての係助詞
※【いかに】…どのように
■【と】…引用の格助詞
■【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲語(作者⇒光源氏)
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