源氏物語イラスト訳【紅葉賀187】あらぬさま
かうあらぬさまにもてひがめて、恐ろしげなるけしきを見すれど、なかなかしるく見つけたまひて、「我と知りて、ことさらにするなりけり」と、をこになりぬ。
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は、光源氏との不義密通の御子を出産しました。源氏は、年増にして色好みの源典侍(げんのないしのすけ)にちょっかいを出したのを、義兄の頭中将に気づかれ、密会中に乗り込まれてしまいます。
源氏物語イラスト訳
かうあらぬさまにもてひがめて、恐ろしげなるけしきを見すれど、
訳)このように別人のようにゆがめて、恐ろしげな様子を見せるけれど、
なかなかしるく見つけたまひて、
訳)かえってはっきりと見破りなさって、
「我と知りて、ことさらにするなりけり」
訳)「わたしだと分かってわざとやってるのだなぁ」
と、をこになりぬ。
訳)と、馬鹿らしくなった。
【古文】
かうあらぬさまにもてひがめて、恐ろしげなるけしきを見すれど、なかなかしるく見つけたまひて、「我と知りて、ことさらにするなりけり」と、をこになりぬ。
【訳】
このように別人のようにゆがめて、恐ろしげな様子を見せるけれど、かえってはっきりと見破りなさって、「わたしだと分かってわざとやってるのだなぁ」と、馬鹿らしくなった。
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■【かう】…このように(「かく」のウ音便)
■【あらぬ】…別の
■【さま】…様子
■【に】…状態の格助詞
■【もてひがむ】…ゆがめる(「もて」は接頭語)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【恐ろしげなる】…ナリ活用形容動詞「恐ろしげなり」連体形
■【けしき】…ようす
■【を】…対象の格助詞
■【見すれ】…サ行下二段動詞「みす」已然形
■【ど】…逆接の接続助詞
■【なかなか】…かえって
■【しるく】…ク活用形容詞「しるし」連用形
※【しるし】…はっきりわかる
■【見つけ】…カ行下二段動詞「見つく」連用形
■【たまひ】…ハ行四段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【ことさらに】…ナリ活用形容動詞「ことさらなり」連用形
※【ことさらなり】…意図的だ。故意だ
■【する】…サ変動詞「す」連体形
■【なり】…断定の助動詞「なり」連用形
■【けり】…詠嘆の助動詞「けり」終止形
■【と】…引用の格助詞
■【をこに】…ナリ活用形容動詞「をこなり」連用形
※【をこなり】…馬鹿らしい。愚かだ
■【なり】…ラ行四段動詞「なる」連用形
■【ぬ】…完了の助動詞「ぬ」終止形
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