源氏物語イラスト訳【紅葉賀176】風冷ややかに
風ひややかにうち吹きて、やや更けゆくほどに、すこしまどろむにやと見ゆるけしきなれば、やをら入り来るに、
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は、光源氏との不義密通の御子を出産しました。源氏は宮中の女官に手を出すこともなかったのですが、年増の源典侍(げんのないしのすけ)には少し興味を持って、ちょっかいを出しています。
源氏物語イラスト訳
風ひややかにうち吹きて、やや更けゆくほどに、
訳)風が冷ややかにほんのりと吹いて、次第に夜も更けてゆくころに、
すこしまどろむにやと見ゆるけしきなれば、
訳)少しうとうと眠っているだろうかと思われる様子であるので、
やをら入り来るに、
訳)そっと入って来ると、
【古文】
風ひややかにうち吹きて、やや更けゆくほどに、すこしまどろむにやと見ゆるけしきなれば、やをら入り来るに、
【訳】
風が冷ややかにほんのりと吹いて、次第に夜も更けてゆくころに、少しうとうと眠っているだろうかと思われる様子であるので、そっと入って来ると、
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■【ひややかに】…ナリ活用形容動詞「冷ややかなり」連用形
■【うち吹く】…吹く(「うち」は接頭語)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【やや】…だんだん。しだいに
■【更けゆく】…夜が更けてゆく
■【ほど】…頃。とき
■【に】…時の格助詞
■【まどろむ】…うとうとと眠る。うつらうつらする
■【にや】…~であろうか
※【に】…断定の助動詞「なり」連用形
※【や】…疑問の係助詞(結び「あらむ」の省略)
■【と】…引用の格助詞
■【見ゆる】…ヤ行下二段動詞「見ゆ」連体形
※【見ゆ】…おもわれる
■【けしき】…ようす
■【なれ】…断定の助動詞「なり」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【やをら】…そっと
■【入り来る】…入ってくる
■【に】…順接の接続助詞
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古文の読解で、多くの人が挫折することになる、いちばんの難関は、
主語の把握
でしょう!
現代文の書きことばと違って、
古文では、主語がほとんど書かれません。
現代でも、話しことばの場合では、
主語が書かれないことも、多々ありますよね。
古文の書きことばは、まさに、現代の話しことばなんです。
そう思うと、親近感が湧くと思いませんか?
では、どうやって主語を見分けるのか?
現代の話しことばと同様、
基本的には、文脈で主語を察します。
ただ、すべて古語で書かれているので、
文脈の把握自体が、ムズかしいですよね~;
そこで、よく言われるのが、
敬語による見分けです。
ここまで、地の文で、敬語(尊敬語)が出てきていませんよね。
前回までもそうだったんですが、
頭中将には、敬語が使われていません。
(※あくまでもこの時は、です。この後、頭中将は出世していきますので、身分に応じて敬語が用いられます)
したがって、誰が入ってきたのかというと、
明らかに、頭中将が主語なんですね!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。