源氏物語イラスト訳【紅葉賀177】修羅場
君は、とけてしも寝たまはぬ心なれば、ふと聞きつけて、この中将とは思ひ寄らず、「なほ忘れがたくすなる修理大夫にこそあらめ」と思すに、
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は、光源氏との不義密通の御子を出産しました。源氏は、年増にして色好みの源典侍(げんのないしのすけ)にちょっかいを出したのを、義兄の頭中将に気づかれてしまいました。
源氏物語イラスト訳
君は、とけてしも寝たまはぬ心なれば、
訳)源氏の君は、うち解けても寝られなさらない気分であるので、
ふと聞きつけて、
訳)すばやく(その気配を)聞きつけて、
この中将とは思ひ寄らず、
訳)この頭中将とは思いも寄らず、
「なほ忘れがたくすなる修理大夫にこそあらめ」と思すに、
訳)「依然として忘れがたく思っているという修理大夫であろう」とお思いになると、
【古文】
君は、とけてしも寝たまはぬ心なれば、ふと聞きつけて、この中将とは思ひ寄らず、「なほ忘れがたくすなる修理大夫にこそあらめ」と思すに、
【訳】
源氏の君は、うち解けても寝られなさらない気分であるので、すばやく(その気配を)聞きつけて、この頭中将とは思いも寄らず、「依然として忘れがたく思っているという修理大夫であろう」とお思いになると、
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■【君】…源氏の君。光源氏
■【は】…取り立ての係助詞
■【とけ】…カ行下二段動詞「解く」連用形
※【解く】…うち解ける
■【て】…単純接続の接続助詞
■【し】…強意の副助詞
■【も】…強意の係助詞
■【寝(ね)】…ナ行下二段動詞「寝(ぬ)」連用形
■【たまは】…ハ行四段動詞「たまふ」未然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【心】…感じ。気持ち
■【なれ】…断定の助動詞「なり」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【ふと】…さっと。すばやく
■【聞きつけ】…カ行下二段動詞「聞きつく」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【この中将】…頭中将をさす
■【と】…引用の格助詞
■【は】…取り立ての係助詞
■【思ひ寄ら】…ラ行四段動詞「おもひよる」未然形
■【ず】…打消の助動詞「ず」連用形
■【なほ】…依然として。いまだなお
■【―がたく(難し)】…~できない
■【す】…代動詞。ここでは、「思う」の意
■【なる】…伝聞の助動詞「なり」連体形
■【修理大夫(すりたいふ)】…修理職(すりしき:宮中の修理を司った職)の長官。従四位下相当。すりのかみ。しゅりのだいぶとも。源典侍のもとに通っているという噂の男。
■【に】…断定の助動詞「なり」連用形
■【こそ】…強意の係助詞(結び;「め」)
■【あら】…ラ変動詞「あり」未然形
■【め】…推量の助動詞「む」已然形
■【と】…引用の格助詞
■【思(おぼ)す】…「思ふ」の尊敬語(作者⇒光源氏)
■【に】…順接の接続助詞
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浮気のまっ最中に、恋人が乗り込んでくる場面!
まさに、修羅場 ですよねー!!
光源氏は、源典侍(げんのないしのすけ)があまりにも誘うので、やや引き気味に、彼女の屋敷に泊まり、男女関係を結びます。
ですが、居心地が悪く、あまり寝付けないようです。
ちょうどその時、
誰かが入ってくる物音がする!
光源氏は、「これは、彼女の恋人である、修理大夫(すりのかみ)だな」と思い込みます。
…実際は、源氏の浮気現場を押さえに来た、頭中将なんですけどねー!
妻の浮気現場に、夫が乗り込む
昔からよくある、修羅場のシーンなんですかね。
だけど、紫式部は、フツーの修羅場ではなく、
さらに、とんでもないアレンジをしていますよね。
では、光源氏は、「夫がのり込んで来た!」と勘違いして、どういう態度に出るのでしょうか?
ちなみに、修理大夫は、源典侍の年齢(58歳前後)からすると、光源氏よりもずいぶん年上の男だと思われます。
さて。
このあとの展開や、いかに!
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
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