源氏物語イラスト訳【紅葉賀185】あが君
女、
「あが君、あが君」
と、向ひて手をするに、ほとほと笑ひぬべし。
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は、光源氏との不義密通の御子を出産しました。源氏は、年増にして色好みの源典侍(げんのないしのすけ)にちょっかいを出したのを、義兄の頭中将に気づかれ、密会中に乗り込まれてしまいます。
源氏物語イラスト訳
女、「あが君、あが君」と、
訳)源典侍は、「あなた様、あなた様」と、
向ひて手をするに、
訳)向かって手を擦り合わせて拝むので、
ほとほと笑ひぬべし。
訳)つくづく笑い出してしまいそうになる。
【古文】
女、
「あが君、あが君」
と、向ひて手をするに、ほとほと笑ひぬべし。
【訳】
源典侍は、
「あなた様、あなた様」
と、向かって手を擦り合わせて拝むので、つくづく笑い出してしまいそうになる。
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■【女】…ここでは、源典侍のこと
■【あが君】…あなたさま。頭中将への呼びかけ
■【と】…引用の格助詞
■【向ふ】…向かい合わせる。面と向かう
■【て】…単純接続の接続助詞
■【手を擦る】…手を擦り合わせて拝む
■【に】…順接の接続助詞
■【ほとほと】…つくづくと
■【笑ひ】…ハ行四段動詞「笑ふ」連用形
■【ぬ】…強意の助動詞「ぬ」終止形
■【べし】…推量の助動詞「べし」終止形
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
頭中将が本命の恋人のふりをして、太刀を抜いて源氏を脅します。
それを見て、源典侍は「あが君、あが君」と、身を挺して光源氏をかばっています。
「あが君」というのは、「わが君」のことです。
頭中将と分かっていたのか、
それとも、光源氏が推測したように、修理大夫だと思って言ったのかは定かではありませんが、
とにかく、この太刀を抜いた男に嘆願しているのですね。
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