源氏イラスト訳【若紫358】略奪
「ここには、常にもえ参らぬがおぼつかなければ、心やすき所にと聞こえしを、心憂く、渡りたまふべかなれば、まして聞こえがたかべければ。人一人、参られよかし」
とのたまへば、
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【源氏物語イラスト訳】
「ここには、常にもえ参らぬがおぼつかなければ、
訳)「ここには、常に参ることができ ないのが気がかりなので、
心やすき所にと聞こえしを、心憂く、渡りたまふべかなれば、
訳)気楽な所にと申し上げたが、つらいことに、父宮邸にお移りなさるに違いないそうなので、
まして聞こえがたかべければ。
訳)なおさらお話し申し上げにくくなるだろうから。
人一人、参られよかし」とのたまへば、
訳)誰か女房が一人付いて参りなさいよ」とおっしゃるので、
【古文】
「ここには、常にもえ参らぬがおぼつかなければ、心やすき所にと聞こえしを、心憂く、渡りたまふべかなれば、まして聞こえがたかべければ。人一人、参られよかし」
とのたまへば、
【訳】
「ここには、常に参ることができ ないのが気がかりなので、気楽な所にと申し上げたが、つらいことに、父宮邸にお移りなさるに違いないそうなので、なおさらお話し申し上げにくくなるだろうから。誰か女房が一人付いて参りなさいよ」
とおっしゃるので、
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■【ここ】…若紫の住まう屋敷をさす
■【に】…場所の格助詞
■【は】…取り立ての係助詞
■【常に】…いつも(副詞)
■【は】…取り立ての係助詞
■【え~ず】…~できない
※【え】…陳述の副詞(可能)
※【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【が】…主格の格助詞
■【おぼつかなけれ】…ク活用形容詞「おぼつかなし」已然形
※【おぼつかなし】…気がかりだ。じれったい
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【心安き】…ク活用形容詞「心安し」連体形
※【心安(こころやす)し)】…安心だ。気楽だ
■【に】…場所の格助詞
■【と】…引用の格助詞
■【聞こえ】…ヤ行下二段動詞「聞こゆ」連用形
※【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲語(光源氏⇒若紫)
■【し】…過去の助動詞「き」連体形
■【を】…逆接の接続助詞
■【心憂く】…ク活用形容詞「心憂し」連用形
※【心憂(こころう)し】…情けない。つらい
■【移る】…(父宮邸に)移る。行く
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(光源氏⇒若紫)
■【べか】…推量の助動詞「べし」連体形撥音便の無表記
■【なれ】…伝聞の助動詞「なり」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【まして】…なおさら
■【聞こえ】…ヤ行下二段動詞「聞こゆ」連用形
※【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲語(光源氏⇒若紫)
■【がたか】…ク活用形容詞「―がたし」連体形撥音便の無表記
※【―がたし】…~にくい。~できない
■【べけれ】…推量の助動詞「べし」已然形
■【ば】…順接確定条件(原因・理由)の接続助詞
■【人】…女房
■【参る】…「来」の謙譲語(光源氏⇒若紫)
■【れよ】…尊敬の助動詞「る」命令形(光源氏⇒女房)
■【かし】…念押しの終助詞
■【と】…引用の格助詞
■【のたまへ】…ハ行四段動詞「のたまふ」已然形
※【のたまふ】…「言ふ」の尊敬語(作者⇒光源氏)
■【ば】…順接確定条件(原因・理由)の接続助詞
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さあ、光源氏が、
若紫を略奪する「言い訳」が、これです。
父である兵部卿宮の邸に移ってしまったら、
もはや、光源氏が、今のようにお遊び相手に
通うことも、ままならなくなる――。
――なんか、
自分のことばっかりが優先で、
あんまり、若紫のことを考えていないって感じですね。