源氏イラスト訳【若紫305】出立
「…今より見たてまつれど、浅からぬ心ざしは、まさりぬべくなむ」
とて、かい撫でつつ、かへりみがちにて、出でたまひぬ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
YouTubeでも「イラスト訳」の動画を作成しています。
見るだけで楽に、古文の速読力が身についてきます。
【源氏物語イラスト訳】
「…今より見たてまつれど、
訳)「…私は今から彼女をお世話申し上げるけれど、
浅からぬ心ざしは、まさりぬべくなむ」とて、
訳)深い愛情は、きっと父宮以上のはず…」と言って、
かい撫でつつ、
訳)若紫をかき撫でながら、
かへりみがちにて、出でたまひぬ。
訳)後髪を引かれる思いで出立なさった。
【古文】
「…今より見たてまつれど、浅からぬ心ざしは、まさりぬべくなむ」
とて、かい撫でつつ、かへりみがちにて、出でたまひぬ。
【訳】
「…私は今から彼女をお世話申し上げるけれど、深い愛情は、きっと父宮以上のはず…」
と言って、若紫をかき撫でながら、後髪を引かれる思いで出立なさった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
■【より】…起点の格助詞
■【見】…マ行上一段動詞「見る」連用形
※【見る】…世話する。面倒を見る
■【たてまつれ】…ラ行四段動詞「たてまつる」已然形
※【たてまつる】…謙譲の補助動詞(光源氏⇒若紫)
■【ど】…逆接確定条件の接続助詞
■【浅からぬ】…浅くはない。深い
※【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【心ざし】…愛情
■【は】…取り立ての係助詞
■【まさり】…ラ行四段動詞「まさる」連用形
※【まさる】…勝る。上である
■【ぬ】…強意の助動詞「ぬ」の終止形
■【べく】…当然の助動詞「べし」連用形
■【なむ】…強意の係助詞
■【とて】…~と言って
※【と】…引用の格助詞
※【て】…単純接続の接続助詞
■【かい撫で】…ダ行下二段動詞「かき撫づ」連用形
※【かい撫(な)づ】…かきなでる
■【つつ】…継続の接続助詞
■【かへりみがちに】…ナリ活用形容動詞「かへりみがちなり」連用形
※【かへりみ】…振り返ってみること。後ろ髪引かれること
※【―がち】…~することが多い。~しながら(接尾語)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【出で】…ダ行下二段動詞「出づ」連用形
※【出(い)づ】…出立する。出かける
■【たまひ】…ハ行四段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【ぬ】…完了の助動詞「ぬ」の終止形
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
光源氏がやっと帰ります。
父宮が迎えに来るだろうと分かっても、
自分が若紫を引き取りたいという思いを断ち切ることができません。
…それを、なんとか、せめて少納言の乳母にだけでも分かってもらいたいと、光源氏は、言葉を投げ捨てて帰って行きます。
もしかしたら、もう逢えなくなるのかも…
と、心中穏やかでない気持ちが察せられます。