源氏イラスト訳【若紫252】契
「…いかなる契りにか、見たてまつりそめしより、あはれに思ひきこゆるも、あやしきまで、この世のことにはおぼえはべらぬ」などのたまひて、
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【源氏物語イラスト訳】
「…いかなる契りにか、
訳)「…どのような前世からの因縁であろうか、
見たてまつりそめしより、あはれに思ひきこゆるも、
訳)初めて見申し上げ た時から、しみじみと愛しくお思い申し上げているのも、
あやしきまで、この世のことにはおぼえはべらぬ」などのたまひて、
訳)不思議なまでに、現世だけの縁とは思われません」などとおっしゃって、
【古文】
「…いかなる契りにか、見たてまつりそめしより、あはれに思ひきこゆるも、あやしきまで、この世のことにはおぼえはべらぬ」などのたまひて、
【訳】
「…どのような前世からの因縁であろうか、初めて見申し上げ た時から、しみじみと愛しくお思い申し上げているのも、不思議なまでに、現世だけの縁とは思われません」などとおっしゃって、
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■【いかなる】…ナリ活用形容動詞「いかなり」連体形
※【いかなり】…どのようだ
■【契り(ちぎり)】…前世からの因縁。宿命
■【にか】…~であろうか
※【に】…断定の助動詞「なり」連用形
※【か】…疑問の係助詞(結びの省略)
■【見たてまつりそめし】…初めて見申し上げた
※【見初む(みそむ)】…初めて見る
※【たてまつり】…ラ行四段動詞「奉る」連用形
※【たてまつる】…謙譲の補助動詞(光源氏⇒若紫)
※【し】…過去の助動詞「き」連体形
■【より】…起点の格助詞
■【あはれに】…ナリ活用形容動詞「あはれなり」連用形
※【あはれなり】…しみじみ愛しい
■【思ひ】…ハ行四段動詞「思ふ」連用形
■【きこゆる】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」連体形
※【きこゆ】…謙譲の補助動詞(光源氏⇒若紫)
■【も】…強意の係助詞
■【あやしき】…シク活用形容詞「あやし」連体形
※【あやし】…不思議だ
■【まで】…範囲の副助詞
■【この世】…現世
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【に】…資格の格助詞
■【おぼえ】…ヤ行下二段動詞「おぼゆ」連用形
※【おぼゆ】…思われる
■【はべら】…ラ変動詞「はべり」未然形
※【はべり】…丁寧の補助動詞(光源氏⇒尼君)
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形(連体形止め)
■【など】…引用の副助詞
■【のたまふ】…「言ふ」の尊敬(作者⇒光源氏)
■【て】…単純接続の接続助詞
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源氏物語イラスト訳の原文は、
こちらのサイトから引用させていただいております。
(渋谷栄一先生監修「源氏物語の世界」)
※フリー素材にしていただき、大変感謝しております。
光源氏のセリフのラスト「ぬ」ですが、
打消の助動詞「ず」の連体形ですよね。
この一文を見ると、
始めの「いかなる契りにか」のところに
疑問の係助詞「か」があるので、
係り結びの法則が成立しているようにも見えますが、
ここで「~ないのか」にするのは不自然なので、
連体形止めとさせていただきました。