源氏イラスト訳【若紫253】願望
「かひなき心地のみしはべるを、かのいはけなうものしたまふ御一声、いかで」とのたまへば、
「いでや、よろづ思し知らぬさまに、大殿籠もり入りて」
など聞こゆる折しも、
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けっして面白いものではありませんが、
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【源氏物語イラスト訳】
「かひなき心地のみしはべるを、
訳)「甲斐のない思いばかりしていますので、
かのいはけなうものしたまふ御一声、いかで」とのたまへば、
訳)あのあどけなくていらっしゃる お一声を、なんとかして…」とおっしゃると、
「いでや、よろづ思し知らぬさまに、大殿籠もり入りて」
訳)「いやはや、万事につけてご存知にならない様子で、寝入りなさっていて…」
など聞こゆる折しも、
訳)などと申し上げる、ちょうどその時、
【古文】
「かひなき心地のみしはべるを、かのいはけなうものしたまふ御一声、いかで」とのたまへば、
「いでや、よろづ思し知らぬさまに、大殿籠もり入りて」
など聞こゆる折しも、
【訳】
「甲斐のない思いばかりしていますので、あのあどけなくていらっしゃる お一声を、なんとかして…」とおっしゃると、
「いやはや、万事につけてご存知にならない様子で、寝入りなさっていて…」
などと申し上げる、ちょうどその時、
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■【かひなき】…ク活用形容詞「甲斐なし」連体形
※【甲斐(かひ)なし】…甲斐がない。どうしようもない
■【心地(ここち)】…気持ち。思い
■【のみ】…限定の副助詞
■【し】…サ変動詞「す」連用形
■【はべる】…ラ変動詞「はべり」連体形
※【はべり】…丁寧の補助動詞(光源氏⇒尼君)
■【を】…順接の接続助詞
■【かの】…あの
■【いはけなく】…ク活用形容詞「いはけなし」連用形
※【いはけなし】…あどけない。幼い
■【ものしたまふ】…いらっしゃる
※【ものし】…サ変動詞「ものす」連用形
※【ものす】…する。いる(代動詞)
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(光源氏⇒若紫)
■【御―】…尊敬の接頭語(光源氏⇒若紫)
■【いかで】…なんとかして
■【と】…引用の格助詞
■【のたまへ】…ハ行四段動詞「のたまふ」已然形
■【ば】…順接確定条件(偶然条件)の接続助詞
■【いでや】…いやはや
■【よろづ】…すべて。万事につけて
■【思し】…サ行四段動詞「思す」連用形
※【思(おぼ)す】…「思ふ」の尊敬(女房⇒若紫)
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【さま】…様子
■【に】…状態の格助詞
■【大殿籠もる】…「寝」の尊敬語(女房⇒若紫)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【など】…引用の副助詞
■【聞こゆる】…ヤ行下二段動詞「聞こゆ」連体形
※【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲語(作者⇒光源氏)
■【折(をり)しも】…ちょうどその時
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源氏物語イラスト訳の原文は、
こちらのサイトから引用させていただいております。
(渋谷栄一先生監修「源氏物語の世界」)
※フリー素材にしていただき、大変感謝しております。
「いかで」とは、
光源氏の、「なんとかして若紫の声を聞きたい」
という、切なる思いです。
「いかで」…だけで終わっているので
①どうして~か【疑問】
②どうして~か、いや~ない【反語】
③なんとかして~したい【願望】
の3つが考えられますが、
後半部も省略されているので、
文脈で判断するしかありませんね;;