小説 恨みの里 4 ヴァーチャルクローン2 |         きんぱこ(^^)v  

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      砂坂を這う蟻  たそがれきんのすけ

WEB 小説 「怨みの里」 

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陰陽師 河辺名字と

安倍清明、そして

近未来っ子たいぞうが、

怨みを持って時空を

渡る鬼達に立ち向かう

近未来ファンタジー小説

9/8日まで 毎日 朝7:00 更新

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8/20 その1        陰陽師二人

8/21 その2       陰陽師現代へ

8/22 その3   ヴァーチャルクローン

8/23 その4  ヴァーチャルクローン2

8/24 その5      もう一つの世界

8/25 その6         夢ひとつ

8/26 その7       酒呑童子現る

8/27 その8     式神(しきがみ)

8/28 その9       頼光都を発つ

8/29 その10        夜叉童子

8/30 その11         大江山

8/31 その12        羅刹童子

9/01 その13        黒歯童子

9/02 その14  曲歯(きょくし)童子

9/03 その15   奪一切衆生精気童子

9/04 その16       鬼とは……

9/05 その17     鬼の肉体滅ぶ時

9/06 その18        虎熊童子

9/07 その19        恨みの魂

9/08 その20       酒呑童子消ゆ


翌朝早く、たいぞうは目が覚めた。

たいぞうが目を覚ますと、顔の上にジャージを着た陰陽師の顔が二つ並んでいた。

「ふぁー早いですねえ、はー今何時ですかあ、まだ五時じゃないですかあ、ふぁー」

清明がたいぞうを覗き込みながら答えた。

「何を言っている、現代人は朝寝坊だな」

「そうだ、今日はわしらも朝寝坊をしたというのに」

「たいぞう、寝ていても構わない、爪楊枝がないかな」

「つまよーじ、ありますよー、えっと何処だったかなぁ何に使うのですかあ」

「決まっているだろう、朝は爪楊枝で歯の手入れをするのだ」

「あーもう、目がさめてしまったあ。ええと、ここにあった、はい」

「おおう、見ろ清明、小さくて見事に綺麗な爪楊枝だ」

「本当だ、戻るときにもらって帰ろう」

「歯磨きはしないのですか」

「はみがき。なんだそれは」

「百円ショップで買った歯ブラシがあったな、あったあった、これに歯磨き粉をつけてっと、はいお二人さん。これで歯を磨いてください」

「歯を磨く?」

「こうやって、はほひーひてひょうへにほしほし(歯をイーして上下にごしごし)」

二人はたいぞうを真似て歯ブラシを動かした

「はー、ひー、はー、はー」

「ひー、すーひーはー」

「なにしてんっすか」

「はーはー」

「清明よ、何だかスースーするぞ。たいぞう何だこれは」

「ハッカが入っていますからね、こうやって水で口を濯いでください」

「おー、口の中がとても気持ち良いな」

「これは素晴らしい」

「これも持って帰ろう」

「じゃあ、あとで百円ショップに行きましょう」

「さて、今日は日記を書けないな、仕方が無いがサボるか」

平安貴族は毎朝具注暦(ぐちゅうれき)を見て、その日の吉凶を読み、仏の名を唱えてから、具注暦の下段にある空白部に日記を書いていた。

藤原道長が具注暦に書いた日記が「御堂関白記」と呼ばれて現在も国宝で残っている。

「朝餉を食ったらヴァーチャルクローンに行こう」

「まだですよ、パソコンとヘルメットが要りますから。名字さんからもらった金を交換してパソコンとヘルメットを買ってきますから。あー、まだ7時ですよ。9時半にならないと店が開かないから。早起きをすると結構暇ですね」

「そうか、宜しく頼む」

三人は二時間ほど時間を潰して、街に出てパソコンとヘルメットを買ってきた。

その間の清明と名字はといえば、たいぞうのパソコンにしがみ付いて大方の操作を理解しようとしていた。

「ちょとまってってくださいよー、直ぐにセッティングしますから。セッティングしたら管理会社に名字さんと清明さんを登録します。登録は直ぐに終わりますから昼ごはんを食べたらヴァーチャルクローンの世界に行きましょう」

「清明、なんだその格好は」

「おまえこそなんだそれは」

「ぎゃはははは、ジャージ着て陰陽師の顔して、髪の毛が立ってるからヘルメットが頭の上に浮いているみたいじゃないですか」

清明は名字の顔を見て言った。

「こまったぞ」

「どうする、髪を切るか」

「髪は切らない、洗い落とそう」

「風呂にシャワーがあるから使ったらいいですよ」

二人はシャワーが風呂かどうかと言うことに戸惑いを抱きながらもシャワーを浴びた。シャワーが風呂ならば具注歴を見て吉凶を判断せねばならない。

「たいぞう、これでどうだ」

「おおー、いいじゃないですか、そのゴーグルというかメガネというか二つの丸い奴を目の所に下ろすんです、そして右耳にあるスイッチを入れてヴァーチャルクローンの中の自分を動かすのですよ」

「なんだか不思議だな名字」

「そうだな、大体わしらは平安時代からパソコンもインターネットも使わずに現代に来ているのだ。そこからまたパソコンとインターネットとやらで別の世界に入るのだからな」

「なんの、こんなものわしらの術から比べれば、童(わらべ)の遊びよ」

「現代のコンピューターはまだまだ発展途上なんですよ」

間もなく、清明と名字にヴァーチャルクローンのアドレスが送られてきた。

たいぞうは安部清明と河辺名字二人のクローンを設定し終わって声をかけた。

「そろそろ行きましょうか」

「そうだな清明、行くとするか」

「よしっ」