舌癌は癌全体のわずか3%。
父の闘病中に、何度も何度も「舌癌」というワードで舌癌患者ご本人やそのご家族の方の手記やブログを検索しましたがほとんど出て来ませんでした。
当時はたとえネガティヴな内容だったとしても、なんでもいいから情報が欲しかったのです。

少しでも「誰かの世界を参考に出来ると有難い」と思う方がいるなら書くべきだと思いました。

とはいえ病気の話はどうしても暗い話になります。
興味のない方や、癌の話で辛い気持ちになってしまう方はご覧にならないでください。

よろしくお願い致します。



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父は舌癌でした を最初からお読みになりたい方はこちらからどうぞ。

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2011.10.16
痛みに耐え切れなくなると薬で眠るという毎日の父に、「外出してみない?」と聞いてみました。

「明日、兄と犬も連れて来るからさ!春に大きな鳥と桜を見に行った公園へ行こうよ!」と。

父はたくさん歩く自信がない様子でしたが、看護師さんが「車椅子貸し出してますから、行ってらっしゃいよ!」と背中を押してくれました。

お昼過ぎの暖かい時間に行こうという事になり、13時に迎えに来る約束をしました。




2011.10.17
犬を連れ、兄を拾ってから病院へ。

お花見の時、父はおにぎりが食べたかったのにわたしはうっかりちらし寿司を作ってしまってガッカリさせたからおにぎりを作っていきました。
食べられないと思うけど。

公園はとても広く、以前見た大きな鳥を見に池まで行くにはたくさん歩かなくてはなりません。

車椅子を借りて行く予定でしたが、父が「歩けないなら帰るから車椅子はいらない」と言うので借りませんでした。

公園に到着し、ほんの3分ほど歩くと「ダメだ、少し横になる」と父が眉間にしわを寄せてベンチへ横になりました。

息が浅く荒く、脂汗をかいていたので拭いて「やっぱり帰ろうか?」と言うと「…少し休めば…大丈夫」と言うので待ちました。

その間、犬は大はしゃぎだったので兄と散歩してきてもらいました。

30分ほどすると「もう大丈夫」と言いゆっくりと起き上がりました。

父と腕を組んで、大きな鳥のいる池までゆっくりゆっくり歩きました。

20分ほど歩き、念願の大きな鳥を見ることが出来ました。

それから春に満開の桜の下でご飯を食べた場所へ行くと、桜が咲いている細い木が3本ありました。

木には札がかけられていて【ジュウガツザクラ】と書いてありました。


私「父さん!桜咲いてたね!お花見また出来たね!」

父「そうだな、あー、おにぎり…食べたかったなー。」

私「作ってきたよ、食べる?」

父「食べたいけど、もう味もわからないし噛めない。」

私「そっか。じゃあニオイだけでも。笑」

父「余計悔しい。笑」

私「ごめん。笑」

久しぶりに父に冗談を言えた。
笑い合えて嬉しかった。


はしゃぐ犬のリードを父が持つと、不思議と犬は大人しく父の横にピッタリとくっついて父のペースに合わせて歩いていました。

駐車場までゆっくりと、途中何度もベンチで休憩しながら戻りました。

病院まで送ると、もう夕ご飯の時間でした。

父は「ここでいい。ご苦労さん、気を付けて。」とゆっくり病院の中に入って行きました。



溺愛していた犬と父が会えたのは、この日が最後でした。





続きます。