明日の月曜日から、テニスのグランドスラム大会のひとつであるウィンブルドンが始まります。錦織は第5シードとして臨みます。錦織以外にシングルスに本戦に出る日本人選手は、男子は添田豪、杉田祐一、守屋宏紀、女子は土居美咲と奈良くるみが出場します。

 

錦織には当然上位進出を目指して欲しいですが、他の日本人選手も少しでも上位に勝ち進んで、全体の底上げができるとデビスカップなど団体戦でも今後に期待できると思います。

 

 

ウィンブルドンは芝のコートで行われます。芝のコートで行われる大会は非常に少ないため、芝にどれだけ対応できるかが勝敗を左右します。

 

芝のコートは、ボールが滑るようにバウンドして勢いが落ちないため、ウィナーが決まりやすいという特徴があります。全仏オープンのアンツーカーとは特徴が正反対のコートで、強烈なサーブを持つ選手やネットプレーが得意な選手に有利と言われています(詳しくは「テニスにおけるコートサーフェスの違い」 参照)。

 

1980年代から1990年代にかけては、男子シングルスではセカンドサーブでもサーブアンドボレーをする選手がほとんどでした。

 

ラケットの性能向上と選手の大型化によって、サーブでポイントが決まってしまうことが多くなり、試合が単調になることが多くなりました。アンツーカーが得意な選手の中には、芝のコートでは勝ち目がないため、ウィンブルドンを欠場する選手も少なくありませんでした(現在はランキングが上位の選手はグランドスラム大会を欠場するとペナルティがあるので、芝のコートが苦手な選手も皆参加しています)。

 

その後に反発力が低いボールを採用してサーブの威力が落ちるようにし、ラリーが続く方向に持って行くようにしました。

 

更に、ウィンブルドンのコートは2000年代以降はボールが高くバウンドするようになったと言われています。主催者側は明らかにしていませんが、管理する側がバウンドが高く弾むように芝の状態を変えているようです。

 

こういったことと、選手のストローク力が上がったことで、最近のウィンブルドンではネットプレーが減りストロークの打ち合いが増えるようになり、ほとんどサーブアンドボレーをしない選手もいます。

 

 

芝のコートというのは、選手がプレーすると徐々に芝が剥げていきます。大会序盤は綺麗な芝の絨毯のようなコートが、大会後半になってくると所々で芝が剥げて土が剥き出しになっていきます。そうなると、ボールが滑らなくなりスピードが落ちるようになり、少しクレーコートに近い状態になってきます。

 

そのため、ウィンブルドンのように2週間にわたって行われる大会では、1週目と2週目ではコートのコンディションが大きく変わり2週目になると1週目ほどビッグサーバーに有利ではなくなってきます。

 

 

男子シングルスの優勝候補は、ジョコビッチ、フェデラー、マレーのランキング上位の3選手です。その中でもジョコビッチが優勝候補の一番手だと思います。

 

全仏決勝で敗れ、その後に芝の大会に出ていませんので芝のコートへの対応が十分ではないのではという声がありますが、フェデラーとマレーとは決勝までは当たることがなく、比較的ドロー(組み合わせ)に恵まれました。

 

マレーは、シード選手が順当に勝ち上がった場合、4回戦で全仏ベスト4のツォンガ、準々決勝でナダルまたはフェレール、準決勝でフェデラーと対戦することになります。今年に入ってから調子を取り戻し、前哨戦でも優勝するなど好調を維持していますが、厳しい組み合わせになってしまいました。

 

フェデラーには今回のウィンブルドンでは、偉大な記録がかかっています。フェデラーは、今年の全仏オープンに出場したことで、グランドスラム大会に62大会連続出場となり、日本の杉山愛氏に並んでいました。今回のウィンブルドンに出場すると、グランドスラム大会最多連続出場が63となり歴代最多となります。

 

63大会連続出場となると、およそ15年間連続でグランドスラム大会に出場することになります。それだけ長い期間、故障で欠場することなく世界のトップの位置でプレーし続けるというのは物凄いことだと思います。



全仏オープンのバブリンカのように、大会に入って調子を上げて勢いに乗っていく選手が現れる可能性もあります。特にビッグサーバーでストロークが攻撃的な選手にとっては、全仏オープンとは違い大きなチャンスがあると思います。

 

 

錦織にとってはグランドスラム大会の中で最も相性が悪いコートですが、昨年の4回戦を上回る準々決勝まで行くことが当面の目標になると思います。

 

錦織はストロークの打ち合いをして自分のリズムを作っていくのですが、芝のコートだとサーブでポイントが決まることが多く、中々自分のリズムに持って行くことが難しくなります。また、イレギュラーバウンドも多く、ライジングで打つ錦織にとっては対応に苦慮するコートサーフェスです。

 

相手のサービスゲームをブレーク出来ない状況でも、自分のサービスゲームを辛抱強くキープして、ワンチャンスをものにしてブレークしたり、タイブレークをとったりして、我慢しながらもセットを取るようなことが求めらると思います。

 

4回戦まで勝ち上がると、昨年の全米オープン優勝のチリッチまたは3月のマスターズ大会で敗れたイズナーのどちらかと当たることが予想されます。この4回戦が最初の大きな山になりそうです。

 

ランキングはチリッチの方が上ですが、今年は調子が悪く、ここまで目立った成績を残せていません。チリッチではなくイズナーが勝ち上がってくるかもしれないです。ちなみに、チリッチの初戦の相手は守屋、イズナーの相手は添田と、ともに日本人選手と1回戦で戦います。

 

準々決勝まで勝ち上がるとジョコビッチが待ち構えています。錦織のプレースタイルは芝との相性が悪いのですが、対ジョコビッチとなると少し様子が変わってくるかもしれません。

 

芝はボールが滑ってきますので、攻めて速いボールを打てばウィナーになる可能性が高くなります。ストロークの打ち合いで、攻める錦織に守るジョコビッチという展開に持ち込めば、ジョコビッチの堅い守備を打ち破って有利な状況に持って行くことができることができます。

 

そうなるとポイントはサーブになってきます。ブレークするチャンスはクレーコートやハードコートよりも少なくなりますので、簡単に錦織のサービスゲームがブレークされるようでは勝負になりません。全仏オープンの時に比べて、サーブの調子が大きく影響すると思います。

 

全仏オープンでは最低でもベスト8が目標でしたが、コートサーフェスとの相性から今回のウィンブルドンはベスト8まで行けば十分ではないでしょうか。準々決勝でジョコビッチと、どのような戦いを錦織ができるのかを見てみたいと思います。



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