テニスではピークは20代で、30代の選手はベテランと言われます。35歳以上になると大ベテランと言われ、現役の選手は非常に少ないので、43歳で現役選手としてグランドスラム大会に本戦ストレートインするだけでも凄いことのなに、ベスト4という成績は素晴らしいというしかありません。日本よりも外国の方が高く評価されています。
一方、男子準決勝に臨む錦織は、日本時間の7日午前1時からジョコビッチと対戦します。両者ともハードコートを最も得意としていますし、フットワークが良くコートカバーリング能力に優れていますので、激しい打ち合いが見られるのではないでしょうか。
ここで、テニスにおけるコートサーフェスの影響を見てみます。プロテニスのツアーにおけるコートサーフェスは、ハード、芝、クレーの3種類に大別され、それぞれ特徴があります。そして、プレースタイルによって、各選手とも得意なコートと苦手なコートがあります。それだけ、コートサーフェスが影響を与えるということです。
コートサーフェスの特徴
項目 |
ハード |
芝 |
クレー |
ボールの速さ |
ボールの速さはそのまま |
滑るような感じで速くなる |
遅くなる |
ボールの弾み |
弾み方は普通でイレギュラーがほとんどない |
ボールが滑り低く弾みイレギュラーが多い |
高く弾みイレギュラーもある |
フットワーク |
靴がグリップしてターンしやすい |
非常に滑りやすい |
滑りながら打てるので届く範囲が広い |
サーブ |
速いサーブと高く弾むサーブが有効 |
速いサーブとスライスサーブが有効 |
高く弾むサーブが有効 |
ストローク |
速いフラットやスピンが有効 |
スライスや速いフラットが有効 |
高く弾むスピンが有効 |
ボレー |
速いボレーが有効 |
スライス回転のボレーが有効 |
ボールの勢いがなくなり決まりにくくなる |
体力 |
暑いときは反射で余計に暑くなり体力を消耗する |
試合時間が短かくなり体力の消耗は少ない |
ラリーが続き試合時間が長くなり体力の消耗が多い |
錦織は、ライジングショットを多用して、強いストロークショットでエースを取るスタイルですので、ハードコートが最も得意なコートです。サーブは改善されて良くなってはいますが、200キロを超えるサーブを打ってポイントを取るタイプではありませんし、イレギュラーが多いので、芝のコートが最も力を発揮できないと思います。
テニスのストロークでは、ボールが弾んだ後に頂点を過ぎてボールが落ちてきたところを打つのですが、ライジングショットはボールが頂点 に達する前でボールが上がっているときに打ちます。そうすると、普通よりも前で打てるために相手からすると速いタイミングでボールが返ってくるので、ボー ルのスピードが同じでも速く感じます。また、打つときにボールにスピードがありますので、反発力が高いため速いボールを打つことができます。
速いタイミングで近くから速いボールが来るのですから、相手にとっては非常に対処が難しくなります。それならどの選手もライジングショットを打てばいいと思うのですが、そう簡単ではありません。
ボールが上がっている最中に打つということは、それだけ速く打点に動かなければなりません。そして、ボールのスピードも速いので、正確 にボールを捕らえるのが難しくなります。また、イレギュラーがあったときは瞬間的に反応しなければならないので、難易度が高いショットなのです。
野球などでハーフバウンドでボールを取るのは難しいのですが、取るだけではなくコントロールして打ち返さなくてはいけないので、野球をやったことがある人はライジングショットが難しいというのが分かるのではないでしょうか。
錦織のストロークショットはトップ選手の中ても速い方です。ライジングショットだと速いボールが打てることを説明しましたが、速いボールを打つには他の要素も絡んできます。
速いボールを打つためには、速くスイングすることが必要ですが、ボールに効果的に力を伝えることも重要です。速くスイングしようとして 力を入れてしまうと、逆にスイングを遅くしてしまうことがあります。それは、余計なところに力を入れることによって、それがブレーキになってスイングを遅 くしてしまうからです。
また、テニスでボールに効果的に力を伝えるには、ボールがラケットに当たった瞬間はボールの勢いを吸収する必要があります。ボールを打 つとき、ボールの勢いでガットが伸びてラケットはしなります。その最中に力を入れて打っても、ボールに力は伝わりません。ボールに力を伝えるには、ガット が伸びきりラケットがしなり終わった後、反動でガット縮みラケットが真っ直ぐになろうとしているときに力を加えます。
つまり、力を抜いてボールの勢いを吸収した後に力を入れると、ボールに効果的に力が加わります。力を入れるタイミングが非常に重要ということになります。
ボレーやサーブでも同様です。打つ前はできるだけ力を抜いて、ボールがガットに当たったときの衝撃を吸収したときに力を加えると、速いボールを打つことができます。単純にパワーがあるかどうかよりも、タイミングがあっているかどうかでボールのスピードが決まります。
テニスでは、これが上手くできる人のことを「タッチが良い」と言います。野球で木製バットを使って打つときや、バレーボールのトスも同じような感覚なのかもしれません。
話を錦織とジョコビッチの対戦に戻します。2人ともハードコートを得意とし、コートカバーリング能力が高いのが特徴です。しかし、相手に良いショットを打たれた時の対応が少し異なります。
錦織は相手に良いショットを打たれたときに、逆に良いショットを打ち返してエースを取ることがよくあり、切り返しが上手い選手です。相手にしてみたら、良いショットを打ってポイントを取れると思ったら、逆にエースを取られるようなボールが返ってくるので非常に厄介なのです。
ジョコビッチも切り返し は上手い方ですが、それよりも凄いのは相手に良いショットを打たれたときに、チャンスボールとなるようなボールを返すのではなく、相手が攻めにくいボール を返せることです。相手からすると、攻めても攻めてもチャンスボールが返ってこないので、まるで壁を相手にしているような感じになります。
このように両者の対応は少し異なるのですが、相手からすると、より厳しいボールを打たないとポイントが取れないので、無理をしてミスをすることにつながります。
準決勝も地上波では放送されませんので、試合を見ることができませんが錦織には是非とも頑張って決勝に行ってもらいたいですね。WOWOWとの契約の関係もありますが、決勝に行ったら地上波で放送して欲しいです。
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