新年最初の記事として何を書こうか迷っていましたが、堅い話ではなく軟らかめの話にしてみました。
昨年、錦織は全米オープンで準優勝し、ランキングを17位から5位に一気に上げました。グランドスラム優勝と世界ランキング1位という目標も、現実味が出てきたような気がします。
全米オープンでジョコビッチなどを破り決勝進出したことも驚きでしたが、試合内容で最も驚きだったのが5月のマドリードオープン決勝でした。昨年末のテレビ番組でも、錦織本人が「あれが今年一番ビックリした」と言っていた試合です。
その決勝の相手はナダルでした。マドリードオープンはのクレーコートでの試合です。ナダルは、スピンがかかり大きく弾むサービスやストローク、抜群の走力を活かした世界最高のディフェンスを持ち、クレーコートを非常に得意としています。
クレーコートと言っても、ヨーロッパのクレーコートは日本と違い、アンツーカーという高温焼成した陶土を細かく砕いた赤褐色の土で出来ています。
アンツーカーのようなクレーコートは、ボールが高く弾み球足が遅くなるという特徴があります。そのため、ディフェンス力が高く、ラリーが長く続くことから体力がある選手に有利となります(「テニスにおけるコートサーフェスの違い」参照)。
ナダルのクレーコートでの強さは際立っており、現役選手の中でクレーコートでの勝率が唯一9割を超えています(2位のジョコビッチの勝率は7割台です)。アンツーカーの全仏オープンでは、10回出場して9回優勝し、通算成績は66勝1敗と圧倒的な強さを誇っています。
2014年の全仏オープンでは、7試合で2セットしか失わず、1セットあたり失ったゲームは2.5です。クレーコートでの強さから、ナダルは赤土の王者と呼ばれています。
アンツーカーの大会であるマドリードオープンで、錦織はナダルの得意なストローク戦で圧倒していました。
以下のリンクで、その様子が見られますので、是非一度見てください。
この試合の2週間前のバルセロナオープンと、マドリードオープンの準決勝までの激闘で、既に錦織の身体は限界に来ており、この決勝戦は棄権する可能性もあると言われていました。
試合が始まると積極的に攻撃を仕掛け、1セット目はナダルのサービスを連続でブレークして取りました。2セット目に入っても錦織の勢いは止まらず、ナダルを応援する地元スペインの観客は信じられない展開に静まり返っていました。私もクレーコートで、これだけ一方的にやられるナダルを初めて見ました。
しかし、第2セット4-2とリードした第7ゲームから錦織の動きがおかしくなり、それ以降はゲームを連続で失い始めました。メディカル・タイムアウトをとり股関節の治療をしましたが、明らかに動きが鈍くなりました。
錦織は股関節の痛みで下半身を満足に使うことができず、サービスやストロークは手打ちになってしまいました。第3セットに入ると、ほとんど走ることができなくなり棄権しました。
準決勝のフェレール戦で、既に痛みが出てメディカル・タイムアウトを取っており、決勝では試合当初から痛みを抱えての戦いでした。
スポーツに「たら」「れば」は禁物ですが、あと3ゲーム錦織の痛みが強くなるのが遅ければ、あのままストレートで勝っていたと思います。翌日のスペインの新聞にも「錦織の怪我がナダルを救った」という見出しが並んでいました。
このときの故障が完治しないまま参加した全仏オープンでは、初戦でストレートで敗れました。しかし、この試合で得た自信は大きく「負けにはなったが、ナダル相手にあそこまで攻めきれたというのは大きな自信になる。」と錦織は言っていました。このときの戦いで得た自信が、全米オープンでの躍進に繋がっていたようです。
今年最初のグランドスラム高いである全豪オープンが、1月19日から始まります。全豪オープンは、錦織が最も得意とするハードコートで行われます。真夏のオーストラリアで開催されるため、気温が40度を超え過酷な戦いになることもありますが、昨年の全米オープンのような活躍を是非とも期待しています。
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