ATPファイナルの準決勝で、錦織はジョコビッチに敗れました。勝つチャンスがあっただけに、非常に悔しい敗戦でした。それとともに、世界ランキング1位の選手との差も感じる試合でした。

 

この試合は、流れが大きく両選手の間を行ったり来たりする展開でした。それに伴い、二人のメンタルの状況も大きく変わるというメンタル・マッチとも言えるような試合でした。

 

1セットは、序盤にジョコビッチが錦織のサービスゲームをブレークしたことで、ジョコビッチが余裕のある試合運びをすることができました。サーブで多くのポイントを取り、ストロークでも押し込み、錦織に攻撃する隙を与えませんでした。このセットで錦織は、セカンドサーブになったときには1ポイントも取ることができませんでした

 

1セットを取られた直後の第2セットの第1ゲームに、いきなり錦織がサービスゲームをブレイクされたときは、このままジョコビッチの楽勝で終わるという流れでした。テレビを見ていた人の中には、1時間もしないうちに試合が終わってしまうのではないかと思った人も多かったのではないでしょうか。

 

ジョコビッチが次のサービスゲームをキープしていれば、そのままジョコビッチの圧勝で終わった可能性があります。それを意識したのか、ジョコビッチの方にミスが出て錦織がブレークバックをします。これで流れが大きく変わります。

 

その後の第3ゲームを錦織が簡単にキープしたため、流れが徐々に錦織の方に傾いてきました。錦織が攻撃的なプレーを増やしていき、ジョコビッチはストローク戦で段々と攻撃ができなくなってきます。

 

1セット目とは逆にジョコビッチの気持ちに余裕がなくなっていき、自分のプレーができなくなり錦織の方に流れが傾いてきます。そして、第8ゲームでジョコビッチのサーブをブレークして、そのまま錦織が2セット目を取りました。

 

 

テレビを見ていた人であれば分かると思いますが、勝敗を左右したのは第3セット第1ゲームのジョコビッチのサービスゲームでした。

 

2セットを取った勢いのまま、15-40と錦織がリードして2本のブレークポイントを握ります。しかし、錦織は攻めにいったショットでミスをしてデュースに持ち込まれ、そのままジョコビッチにキープされました。

 

このゲームを錦織がブレイクできていたら、完全に錦織のペースになり勝利を大きく引き寄せることができました。しかもチャンスがあったにも関わらず、自分のミスによってそれを逃したことで、錦織に精神的なダメージが残ってしまいました。

 

そのダメージを引きずったまま、次のサービスゲームをブレイクされてしまい、錦織の方に来ていた流れを失ってしまいます。但し、ジョコビッチの調子はまだ良くない状態でしたので、その後サービスゲームをキープして付いていけば、まだ錦織にもチャンスはありました。

 

しかし、錦織は我慢できずに第4ゲームのサービスも落とし、今度は流れがジョコビッチの方に行ってしまいました。第3セットは6-0でジョコビッチが取りましたが、ジョコビッチが良いショットを連発して取ったというより、錦織のミスによってジョコビッチにポイントを渡していました。

 

錦織のミスの中には、ジョコビッチによって起こされているものもありました。錦織はこの試合、ダブルフォルトが多かったのですが、試合の序盤からセカンドサービスになると、ほとんどポイントを取れていませんでした。そのため、セカンドサーブでもより厳しいところを狙わないといけなかったため、ダブルフォルトが多くなってしまったのです。

 

 

3セットの第1ゲームを取れていれば、その後の展開は大きく違っていました。更に、ブレークポイントでジョコビッチのエースによってブレークチャンスを逃していたら、錦織の精神的ダメージはもっと小さかったはずです。

 

また、ブレークのチャンスが第3セットのもっと後に来ていれば、違う結果になった可能性があります。第1ゲームの段階では、錦織の調子は良くなってきていましたが、まだ本調子とは言えない状態でした。

 

あのまま普通にサービスをキープし合っている展開になっていれば、錦織の調子がもっと上がっていったかもしれません。その状態でブレークチャンスがあれば、もっと確実にブレークできていた可能性があります。

 

 

技術的な面をみると、錦織はフォアハンドが最後まで本調子ではありませんでした。攻めにいったときのショットでミスが多かったですし、ドロップショットもいつもより甘くなっていました。

 

 

非常に惜しい敗戦でしたが、世界のトップとの差も感じるところがありました。それは、流れが自分の方にない状況でのプレーです。第2セットのジョコビッチは、相手に流れがある状況でも一方的な展開にはならないように我慢してました。

 

結果としてジョコビッチは第2セットを失いましたが、あのままもつれた状態でいけば、ワンチャンスをものにしてブレークしたり、タイブレークに持ち込んでセットを取れることも考えられます。

 

一方、第3セットの錦織は流れがジョコビッチに行きかけたところで踏ん張りきれず、次々とゲームを失いました。頑張ってゲームを取っていき差が開かないようにしていけば、また挽回するチャンスが来たかもしれません。

 

調子が良いときは、どんな選手でもゲームを奪うことができます。しかし、世界のトップ選手は、流れが悪い時や調子が悪い時でも堪えてゲームを取ることができます。

 

 

しかし、今大会で錦織選手がトップになれる可能性は十分にあるということが分かりました。相手に第1セットを一方的に取られ、第2セットの最初のサービスゲームをブレイクされても、そこですぐに錦織がブレークバックして、流れを引き寄せたのは素晴らしかったです。

 

ジョコビッチが相手であれば、普通の選手ではあのまま2セット目も一方的な展開になっていたでしょう。また、自分の力をある程度出せば、ジョコビッチのようなトップ選手相手でも、十分勝てるテニスができることが分かりました。

 

男子テニスは、ジョコビッチ、フェデラー、ナダル、マレーのビッグ4の時代と言われていました。今年はマレーの調子が悪く、現在はその他の3人の選手の力が頭一つ抜けた状態です。

 

今大会の錦織選手を見ていると、上位3人に十分割って入れる可能性があります。半年前には、こんなことは考えられませんでした。これからは、今まで以上に各選手が錦織対策を練ってくると思いますが、来年は更に期待できるような気がします。
 

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