プロテニスツアーは、舞台をヨーロッパに移してクレーコートシーズンを迎えました。5月末の全仏オープンまでは、クレーコート(アンツーカー)での戦いが続きます。
錦織は現在ランキング4位とトップ5を維持しています。今シーズンが始まって3か月が過ぎましたが、ここまでは特別良いというわけでもなく悪くもないという感じで、ランキングに見合った成績だと言えるでしょう。1月の全豪オープンの頃は「世界5位という位置はまだ居心地が悪い」と言っていましたが、しっかりとトップ5をキープしているのは素晴らしいことだと思います。
ここで、今年のこれまでのランキング上位選手の戦いを振り返ってみます。まずは、トップ10の選手の主要大会(全豪オープンとマスターズ1000の2大会)の成績を以下の表にまとめました。
ランキング上位選手の主要大会成績
![上位選手の主要大会成績](https://stat.ameba.jp/user_images/20150414/21/orange54321/c1/df/j/o0522019313276270198.jpg?caw=800)
注)ポイントは過去1年間の獲得ポイント、レースポイントは今年1月からの獲得ポイントです。
ジョコビッチは主要3大会で優勝し、ランキング1位の強さを見せつけています。昨年は腰の故障などで苦しんだマレーが復調し、再びビッグ4と言われるような強さが戻ってきました。それに対して、故障明けのナダルの調子が中々上がってきていません。
今週からはクレーコートシーズンに入りますが、クレーコートは球足が遅くなりボールが高く弾むため、中々エースが決まらずラリーが長く続きます。ストロークのときは足を滑らせながら打つので、他のコートとフットワークが若干異なります。
そのため、クレーコートになるといつも以上に力を発揮してくるクレーコートスペシャリストと言われる選手がいます。このような選手とクレーコートで戦うときは、ランキングが下位の選手でも注意が必要になります。
クレーコートスペシャリストはスペインや南米の選手に多く、逆にクレーコートが少ないアメリカの選手はクレーコートが苦手な選手が多いです。錦織も13歳からアメリカを拠点にしていますので、クレーコートは得意とは言えません。トップ選手ではマレーはクレーを苦手としており、フェデラーも他のコートよりは勝率が低くなっています。
全仏オープンだけ優勝することができないために、生涯グランドスラム(選手生活の間に4大大会を全て制覇すること)を達成できなかった選手は少なくありません。マッケンロー、ベッカー、エドバーグ、サンプラスの名選手が全仏オープンだけ優勝できませんでしたし、現役選手ではジョコビッチがそうです。
ジョコビッチはクレーが苦手というわけではありませんが、ナダルがいるために全仏オープン制覇を阻まれています。フェデラーは、ナダルが唯一全仏オープンで負けた年に優勝を果たして生涯グランドスラムを達成しました。
トップ10の選手の中でクレーコートを得意にしているのは、ナダルとフェレールです。クレーコートでこの二人の選手に勝つのは至難の技で、勝ったとしても試合時間が長くなり体力的なダメージが大きく次の試合にも影響するので、この二人との対戦はできるだけ避けたいと思っている選手は多いでしょう。
特にナダルは「赤土(レッドクレー)の王者」と呼ばれており、クレーコートでは圧倒的な強さを誇っています。
ナダルはATPツアーで65回優勝していますが、そのうちクレーコートでの優勝が46回もあります。中でも全仏オープンは10回出場して9回優勝(なんと1回しか負けていません)、現在も5連覇中と圧倒的な強さを誇っています。全仏オープンを優勝すれば生涯グランドスラムを達成できるジョコビッチですが、過去3年はナダルに敗れています。
クレーコートシーズンでは、全仏オープンまでにマスターズ1000の大会が3つあります。今週はマスターズ1000のモンテカルロオープンが開催されています(トップ10の選手のうち錦織とマレーは欠場)。注目は、ナダルが得意のクレーコートで強さを取り戻せるかどうかです。
ナダルは左利きの選手ですが、本来は右利きだったようです。テニスでは圧倒的に左利きの方が有利なので、幼少時に左打ちに矯正しました。ちなみに、子供の頃はアニメのドラゴンボールが大好きで、DVDも全て持っているようです。
錦織はクレーコートを苦手にしていましたが、昨年はクレーコートの大会で初めて優勝し、クレーコートでも良いプレーをする感触が掴めたようです。マドリードオープンでは、ナダルを内容でも圧倒してあと一歩というところまで追いつめました。
一方で、昨年の錦織のクレーコートでのプレーを各選手が研究してくることが予想されるので、簡単に勝たせてはくれないでしょうし、何より体力の消耗が激しいので大会を通して勝ち抜くのは難しいです。
昨年は故障により、クレーコートシーズンの後半は活躍できませんでしたが(ローマ・マスターズは欠場、全仏オープンは初戦敗退)、昨年の同じ時期よりも試合数が多いにも関わらず怪我はしていません。体力面の不安も年々少なくなっているので、今年は更に期待ができるような気がします。
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