全仏オープン2回戦が行われ、錦織がベルッチに勝って3回戦進出を決めました。ベルッチはクレーコートが得意で、先週の大会でも優勝して調子が良かったので警戒していましたが、見事にストレートで下しました。

 

1セットの序盤はベルッチ が押し気味だったのですが、錦織は何とか凌いでサービスゲームをキープしていました。ベルッチは良いショットを打っていましたが、かなり無理をして攻めに出ていたため、簡単なミスも時折していました。そして、我慢していた錦織は徐々に調子を上げてブレークをして、第1セットを取りました。

 

1セットのベルッチは最初から勝負を掛けて攻めていったのですが、錦織のサービスゲームをブレークできませんでした。逆に先にブレークをされて第1セットを失い、精神的なダメージは大きかったと思います。

 

それを第2セットに入っても引きずっており、それを錦織は見逃さずに攻め込んで4ゲームを連取しました。試合の流れを読んで、一気に畳み掛けたために第2セットも取ることができました。できれば、5-2とリードしたサービスゲームをキープして、あっさりこのセットを取っていればもっと良かったのですね。5-4からの錦織のサービスゲームをブレイクされて追いつかれていたら、試合の流れが大きく変わった可能性があります。

 

3セットも先に2回ブレークをしましたが、またも5-2からのサービスゲームをブレイクされました。しかし、最後はサービスエースで締めくくってストレートで勝ちました。

 

結果として3-0のストレート勝ちをしましたが、1セットを取られたり、第2セットや第3セットで追いつかれていたら、その後の展開は大きく変わった可能性がありました。

 

 

相手のベルッチはストロークが強力で、サーブも回転が掛かり錦織も最後まで苦労していました。ランキングは40位(先週優勝するまでは60位)ですが、クレーコートが得意な選手は全仏オープンではやはり侮れないということを感じました。

 

この試合では、先にブレークを許さず相手に先行されないようにして、常に主導権を握りながら試合を進められたことが大きかったと思います。そして、ベルッチがセットを失って気落ちしている隙をついて、第2セットと第3セットの序盤でブレークした試合運びの上手さが光りました。

 

何回か流れがベルッチに行きかけても完全に行かせなかったのは、錦織も勝負のポイントが分かっており、流れを渡さない力をしっかり持っていたということだと思います。

 

 

戦術面でも、良かった点が幾つかありました。

 

ベルッチのフォアハンドは強烈だったので、バックハンドにボールを集めてフォアハンドの強打をできるだけ打たせないようにしていました。

 

ベルッチはサウスポーなので、クロスだと錦織のバックとベルッチのフォアの打ち合いになります。そうなったときに錦織は早めにストレートに打って、ベルッチにバックで打たせるように仕向けてフォアの強打を封じていました。

 

錦織はファーストサーブの確率が低かったのですが、ストロークの打ち合いで優位に立てていたので、スピードの出るフラットサーブではなく、回転を掛けスピードを落としてファーストサーブを入れていき、ストロークでポイント取る作戦に変えていました。

 

レシーブのときもベルッチの強い回転の掛かったサーブに苦しんでいたので、セカンドサーブでも無理にリターンエースを狙わずに、ストロークの打ち合いで優位に立てるように深く打ったりコースを突いたりするようにしていました。

 

 

今後の課題としては、ファーストサーブの確率をもう少し上げることと、サーブのフリーポイント(サーブだけでポイントを取ること)をもう少し増やすことです。

 

もっと競った展開になったときや相手のレベルが上がった時には、サーブでのポイントがもう少し増えないと厳しいと思います。

 

 

また、この試合では錦織の素晴らしいショットを多く見ることができました。

 

1セット第8ゲームで、相手の角度のあるストロークでコートから追い出されたところからポール回しでポイントを取りました。

 

ポール回しとは、ネットのポールの外側を通って相手のコートに入るショットのことです。テニスではポールの外側でネットの位置よりも低いところを通って相手のコートに入っても有効になります。

 

2セットの第3ゲームでは、ベルッチがドロップショットを打ってネットに出てきたところを、ロブで返してウィナーを取りました。このような場合は、通常相手の両脇を抜くようなショットを打つので、ベルッチもまさかロブを打ってくるとは予測できていなかったようで反応ができていませんでした。

 

これらのようなプレーを見ることができるため、錦織の試合では色んなショットが楽しめて面白いと言われています。

 

 

そして、今回はテレビ東京も思い切った決断をしました。この試合は開始予定が20時でしたが、前の試合が長引けば試合開始が遅れますし、錦織の試合自体がもつれて5セットまで戦うことになれば5時間を超える可能性もあります。

 

NHKであれば試合の時間がズレても対応できると思うのですが、民放だとスポンサーの関係から試合中継を延長するのは容易ではありません。

 

試合時間に合わせて20時から放送を始めましたが、試合開始が遅れたり試合が長引いて最後まで中継できなかったりすれば、視聴者から多くのクレームが出る可能性がありました。そう いったリスクがあるにもかかわらず、ゴールデンタイムに放送したのはテレビ東京にとっても大きな賭けだったと思います。

 

 

錦織の3回戦は30日に行われる予定ですが、シードのフェルナンド・ベルダスコではなくベンヤミン・ベッカーがフルセットの試合を制して勝ち上がってきました。ファイナルセットは10-8という激戦で、ベッカーは1回戦に続いてフルセットの試合をものにしました。

 

ベッカーは勢いに乗っているとは思いますが、2試合続けてフルセットを戦って体力的な消耗が大きいので、その点では錦織は優位だと思います。ベルダスコはクレーが得意(通算勝率が.587に対してクレー勝率は.629)で3回戦は序盤の山だと思っていましたし、ベッカーは球足が早いコートが得意なのでクレーは苦手です(通算勝率が.417に対してクレー勝率は.216)。但し、サーブは強力なので油断は禁物ですが、ストローク戦に持ち込めばそれほど難しい相手ではないと思います。

 

負ければ終わりですので取りこぼしをしないようにしなければいけませんが、上を目指すためには序盤での体力の消耗を出来る限り抑えたいところです。

 

できれば、準々決勝までの5試合の合計試合時間を13時間以内に抑えたいですね。そうすれば準決勝以降で試合がもつれて長くなった時でも、スタミナが切れてしまう可能性は低くなります。



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