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2011年05月30日 23時27分02秒

風見鶏

Theme: ショート・ストーリー


旅ノカケラ


「どこから来たの?」
岬に続く道は一本でこの先に道はない。
あー、めんどくさい。
今来た道を振り返って指差した。
「あっち」
「あはは、あっちって、どこ?」
「昨日はS市」
「S市に住んでいるんだ」
なんだかめんどくさいな。
「いや、その前はA県、1ヶ月前にS県から旅立った」
「ふーん、北上してきたんだ」
「北上?どこへ向かうか迷っているときに、たまたま寄った丘に風見鶏があって、北を指していたんだ。それで走ってきた」
「丘に風見鶏?変なの。そこはいいところだった?景色はいい?」
「それが霧でまったく何も見えなかった。そこが愛妻の丘だったから、北へ向かえば自分にとって大切な人に出会えると思ったんだけどな」
「どうだった?大切な人に出会った?」
「いや」
「で、私に出会ったんだ。これからどこへ向かうの?」
「風に聞いてくれ」

2007年03月12日 20時32分06秒

海の見える駅で待ち合わせ

Theme: ショート・ストーリー


駅
PowerShot A710 IS


「海を見たいね」
あの人に言うと、ある町の駅を告げられた。
てっきり車で迎えに来てくれると思ったら、駅で待ち合わせしようだって。
高台にある木造の小さな駅舎。
ホームに降り立ち、所々ペンキがはげた階段を上がった。
長い通路が改札口まで延びている。
岬のように山の斜面から突き出した通路からは海が広がっている。
あまりにも広くまぶしい、そして暖かな太陽。
無人の改札口を出たけれども、あの人の姿が見えない。
駅前で採れたてのみかんを売っているおじさんがFMラジオをかけっぱなしにしてうたた寝している姿が見えた。
近寄ると、目を覚まし、笑顔でひと言「甘いよ」と告げた。
日に焼けたおじさんの真っ黒な顔とつややかなみかんを交互に眺めながら、ちょうど喉も渇いていたのでみかんを買って近くのベンチに腰掛けた。
みかんを頬張りながら、春の暖かさを運んでくる風に身を任せながら、改札口から見える海を眺めていた。
やがて単気筒のエンジン音が遠くから聞こえてきた。
きっとあの人だろう。

2007年02月08日 21時03分00秒

東京困惑日記 その2

Theme: ショート・ストーリー

郊外から電車に乗って東京に着くと、地下鉄でもないのにわざわざ地下に潜ってから再び地上に出なければならない。右を見ても左を見ても蛍光灯に照らされた細い通路が延びている。人の往来は激しく、どの顔もぶらぶら散歩するような穏やかじゃなくて早く地上に出たい一心で歩幅を早めているように思えてならない。
行き先を決めているならともかく私のように行くあてもなく漠然と電車を降りてしまった者にはとても居心地が悪い。もし間違った出口に出てしまったらその場で迷子になってしまったも同然となる。
人の背丈は違っていても歩く速度は、なぜか同じである。そんな流れの中に不自然な動きが目にとまった。白い蛇がうねうねと歩く人の足元を這っている。人が避けるようでもなく蛇が踏まれないようにかわすでもなくリズムを刻むように蛇が行く。
気がつけば、私はふらふらと蛇の後ろを歩いていた。
真っ直ぐ歩いているつもりが蛇が体をうねらせるように私もふわふわ揺れている気持ちになる。目に映る光景は変わらず真っ直ぐ同じ方向を突き進み、やがて階段が見えてきた。一段上がるたびに登っているのか下っているのかわからず、あいかわらず雲の上を歩いているような浮遊感がする。
長い長い階段で、白い蛇は上へ上へと進んでいく。階段の明かりは薄暗く、蛇の白い肌がいっそうつややかにみえる。外の明かりが差し込むと私は目を細め徐々に黒いシルエットになっていく白い蛇を逃がすまいと目で追った。私の体が光に包まれあまりの眩しさに目を閉じた。そして外の新鮮な空気を感じると体のふわふわした気持ちが治まってしまった。
目を開けると階段を上がりきって、地上の地面に立っていた。
すぐ目の前に這っていた白い蛇を探してみたけれどもどこにもいなかった。

2007年02月06日 11時51分28秒

東京困惑日記 その1

Theme: ショート・ストーリー

冬だというのに背中にあたる日差しが気持ちよくて、電車に揺られながらうとうとしてしまった。起きてみるともう終点で、乗りすぎてしまったと思いながらよろよろとホームに降り立った。地面に足が着いていることはわかる。体がふらふら揺れているようでもあり、自分の周りの景色が揺れているようでもある。ゆらめく景色の中で、ものすごい数の人々がものすごい勢いでものすごい狭い改札口に吸い込まれるように流れていく。
その場に立ち尽くすわけにもいかず、一歩踏み出せば流れゆく人の川へ身を任すように体が動いていく。その流れや速い、速い。東京は時間の流れがものすごく速いようだ。群集の流れは改札口の手前でいったん淀み、1人がかろうじて通り抜ける通路を抜けると蜘蛛の子を散らすようにものすごい勢いで四方八方に散っていった。
私はゆらゆらする景色の中で丸く黒い塊がすばやく動くさまを眺めながらどこに行こうかと不安でたまらなかった。


※これは創作であり、内田百閒へのオマージュである。

2006年05月16日 23時17分54秒

雨音

Theme: ショート・ストーリー

ダブルファンタジー


傘を買った。
あの人に会うときは決まって雨になる。
だから、仕方なく傘を買ったのだ。
電話をして、今度はどこに行きたいか聞いてみたら、公園を歩いてみたいと言う。
「どうせ、また雨だよ」
小さく笑ったあと、あの人が言った。
「雨の公園もいいものよ」
そんなものかな。
私鉄の小さな駅まで彼女に電車で来てもらいぼくが運転する車で公園に向った。
駐車場に着いて、車の外に出ようとしたら、傘がないことに気がついた。
しまった。忘れた。
慌てるぼくの姿を見て、あの人が笑う。
「どうしたの?」
「いや・・・。傘がないんだ」
「じゃあ、一緒に入ればいいじゃない?」
あの人から傘を受け取って、外に出たぼくは助手席を開けながら傘を広げてあの人が出てくるのを待った。
「ありがとう」
雨が降る公園は人気がなくてひっそりとしている。
でも、木も草も花もみんなしっとりと濡れて新鮮な感じがする。
葉っぱについた水滴が列になって水晶のように輝いていたりする。
ゆっくりゆっくり歩く。
あの人が濡れないように、ぼくは頭に雨がかからないように傘を差していたから肩の半分はびしょ濡れだ。
広い公園の半分ぐらい歩いたら、四隅に柱が立っていて大きな屋根が乗っている東屋があった。その下にはベンチが置いてある。
「ちょっと休もうか」
ぼくらはベンチに腰掛けて休むことにした。
「やだ、肩が濡れているじゃない」
「でも、きみは濡れてないだろ」
「そういう問題じゃないでしょ」
タオルを取り出して、濡れた肩を拭き始めた。
それからぼくらはポットに入れてきた熱い紅茶を時間をかけてゆっくり飲んだ。
会話が途切れるたびに雨の音が大きくなるようだった。
でも、雨が落ちてきて、地球を叩くリズムは変わらない。
第一小節、第二小節、第三小節、ぼくの鼓動もシンクロしてくる。
「そろそろ、行こうか」
ぼくらは立ち上がって、また歩き始めようとした。
今度はあの人が傘を持ってくれるという。
すごく恥ずかしくって、あの人との間に隙間が出来てしまう。
「濡れちゃうでしょ。もっとこっち」
そう言われて、慌てて間を詰めたら肩が当たって歩きづらい。
自然と肩を抱いて歩くことになる。
傘を叩く雨の音。
あの人の髪からシャンプーの香り。
突然、あの人が立ち止まって、こう言った。
「キスしようか」
ぼくらは傘を差したまま雨の中でキスをした。
聞こえてくるのは雨音だけ。
そして、あの人のぬくもり。
「ねぇ、雨の公園もいいでしょ?」
確かに雨の公園も悪くはないかもしれない。

2006年01月09日 22時57分36秒

オイルライター

Theme: ショート・ストーリー

zippo


 古いオイルライターがある。
 表面に施されている塗装はすっかり剥げ落ちて、真鍮がむき出しになっている。煙草に火をつけるその目的だけに何年も使われ続け、今では、手のひらと指が触れるところは磨けあげたようにぴかぴかに光り、他の部分はくすんで光を失っていた。一見するとただの古ぼけたライターにしかみえない。
 男はオイルライターを長年使い続けてきた。そして、よく失くす。本人は失くすつもりがなくても、気がつけば、いつの間にかなくなっている。不思議なことに、このオイルライターは彼のもとから消えずに手元に残っている。
 男が5年ほど禁煙をしていたある日のこと。ひょんなことから煙草を吸おうとしたが、火をつけるライターがない。そういえば、あのオイルライターがったはず。部屋の中のあらゆるところをひっくり返したら、オイルライターが出てきた。真鍮はくすみ、手に取ると表面はざらついていた。オイルライターのうわぶたを開けるとカンッと甲高い音が静かな部屋に広がった。そして、オイルライターのケースから本体を引っ張り出して、底に敷き詰められているフェルトをめくり、オイルを注ぎ込んだ。脱脂綿にじゅうぶんオイルがしみこんだのを見計らって、本体をケースに押し込んだ。そして、一回、二回と度着火用のホイールを指で回してみたが、空しく火花が散るだけで火がつかなかった。三度目。ジュポッと音がして小さな炎が立ちのぼり、ほのかなオイルの匂いが鼻腔をくすぐった。何年も使われていなかったにもかかわらず、必要なときに働いてくれる道具。単純な機能だからこそかもしれない。
 男はたまに旅に出ることがある。でも、オイルライターは持っていかない。失くすことが恐いのではなく、強風と寒さと雨に弱いことを知っているからだ。確かに少しぐらいの風でも問題なく着火してくれる。しかし、強風で運良く着火してくれても炎は横になり、最も悪い条件では炎が下の方へ広がりとてもライターを持っていられないときがある。しかも、オイルライターが着火するにはオイルが揮発されなければならず、寒いときはまったく着火できない。冷たくなったライターを懐へ忍ばせ人肌になった頃にやっと着火できるようになる。雨の中でもいったん火がつけば、多少の雨でも消えることはないが、問題なのは着火用のホイールと石が雨に濡れてしまうとまったく火がつかない。雨に強いオイルライターでも雨に濡らさないことが必要になってくる。面倒なことに常にオイル缶を携帯しなければならず、少しでも荷物を減らしたい旅には向いていない。この男が旅に持っていくライターは使い捨てのガスライターとなる。なんといっても小さく軽い。面倒なオイル缶も不要。ガスライターはちょっとでも風があればなかなか火がつかない。そこで男はジャケットの前合わせを片手でつかみ、もう一方の手でジャケットの内側にライターを持っていき、風を避けるように着火させる。ガスライターはオイルライターと同様に着火用のホイールと石が雨に濡れてしまうとまったく着火できなくなる。だから、雨の日はチャックつきのビニール袋に入れることにしている。雨の中でずぶ濡れになって火を使うことはまったくない。だから、安心してビニール袋からガスライターを取り出して使うことができる。
 男がこのオイルライターを使い始めてから、もう10年以上経っている。くすんだ輝きのないライターほど人を魅了するのか。男が煙草に火をつけたとき近くにいた男の視線を感じることがある。目が合うと、相手の男が言った。
 「フタを跳ね上げるときや閉まるときの音がいいっすね」
 「そお?」
椅子に座って煙草を吸いながら目の前のテーブルの上に煙草とオイルライターを置いていたとき近くを通りかかった男の視線を感じることがある。顔を上げて目が合うと、相手の男が言った。
 「ずいぶん使い込んでいて高そうなライターですね」
 「そお?」
ディスカウントショップで三千円もしないで買った安物も時間が経てば、貫禄が増すようだ。いつものようにフタを開け、いつものように着火用のホイールをまわし、いつものようにフタを閉じる。その繰り返しを続けて、何もかもがいつものごとく変わらず変化していない。音もオイルの漂う匂いも炎も、すべて。だから、男にはどうして他の人がこのオイルライタに価値を見出すのかわからない。休憩中に同席した男たちがかわるがわるオイルライターを貸してくれと言って煙草に火をつけていく。どの男も満足したような顔をして煙草の煙をひと吐きして、ありがとうと言ってオイルライターを男に返す。
 ある日、仕事の合間に男はオイルライターを見つめていた。何を思ったのか金属磨き粉を取り出して、ライターを磨き始めた。くすんだ表面が輝きを取り戻し、少しづつ鏡のようになっていく。少し粉をつけては少し布で磨き、男は単純な作業に没頭していく。やがて、休憩時間をいっぱい使って丁寧に磨き上げた。指紋がつかないようにかどを持ち、そっと引き出しにしまいこんだ。一日の仕事を終えて、煙草に火をつけようと昼間に丹念に磨き上げたオイルライターを取り出した。じゅうぶんに磨き上げたライターの表面がぴったり指に吸い付くような感じがした。煙草に火をつけ、テーブルの上にオイルライターを置いたとき、別の男が仕事を終えて部屋に入ってきた。いつもならば男にオイルライターを貸してくれとせがむのだが、テーブルの上のライターをチラッとみただけで通り過ぎてしまった。あくる日も誰も貸してくれとは言わなかった。その次の日も。
 それから一ヶ月経った。ずいぶんオイルライターがくすんできたからまた磨こうと男は思ったが、我慢した。ただオイルライターを磨く単純作業は無心になって、没頭するほど楽しいものだが、まだ磨くには早い。誰もが貸してくれと言うようになってから磨くことがもっと楽しい。

2005年11月16日 20時06分43秒

ありがとう

Theme: ショート・ストーリー

車が多くて、道を横断できない。
しばらくすると、1台の車が手前で停まってくれた。
ありがとう。


でも、アナタの後ろには後続車がいないんだよ。


-owari-

2005年09月04日 23時22分03秒

森の旅人

Theme: ショート・ストーリー

霧深い森の中で傷ついた旅人がうずくまっていた


そのまま通り過ぎようと思ったら


声をかけられた


「こんにちは」


道迷って淋しかったのだろう


ぼくは立ち止まり


三日三晩いろいろな話をした


朝起きてみると


旅人がいない


置手紙があった


ぼくが寝ている間に


幾人も旅人が通り過ぎ


薬を与えてくれて


だいぶん傷が癒えたから


旅立ちます


と書いてあった


ぼくは来た道を振り返ったが


そこには道がなかった


進むべき道も見つからない


今度はぼくが道に迷ってしまった

2005年09月04日 22時31分50秒

天災

Theme: ショート・ストーリー

ある日、水平線より深く沈んでいたぼくに大波がやってきた


ふつうなら、波に巻き込まれないように逃げるか、どこか非難しようと考える


ぼくは慌てず焦らず両手を広げ波を受け止めた


流れに逆らわず波に任せて身をゆだねる


嵐を伴った流れは早く


あっという間にぼくがいた場所から遥か遠に流されてしまった


一瞬の出来事だ


自分から泳いで岸へ這い上がることも出来ただろう


ふわふわした浮遊感がここちよくて


泳ぐことを辞めてしまった


このまま流されてしまえばいい


波に巻き込まれながら流されていけば


きっと大きな海へとたどり着けたはずだった


ところが、嵐が去り


気がつけばゴロゴロした石の上に身を横たえている


しばらく仰向けになって天を見上げていよう


やがて雨が降って頬を濡らすだろう

2005年09月03日 04時04分53秒

夢の中のキス

Theme: ショート・ストーリー

いやな夢を見た。


夢の中でキスをされた。


くちびるの感触の生々しさ。


そして、ぬるぬるした感触。


液体の異物が口に流れこんだ瞬間の気持ち悪さ。


いいもんじゃない。


水銀を口に含んだ女の子にキスをされたのだ。


知らない女の子。


ああ、夢を見てしまったと眠りから覚めながら夢は進行していった。


どこかのホテルか旅館の大浴場。


必死に口ついた銀色の液体を流し落とそうとしている、ぼく。


離れた場所で無言で口の中を液体をゆすいでいる、女の子。


なぜか、そこに体を洗っている何年も会っていない古い友がいた。


「こうなったらXXちゃんか、XXちゃんが間に入らないと、ダメだな」


彼は、そう言った。


ひとり目のXXちゃんは古い仕事つながり男性で古い友とは面識がない。


ふたり目のXXちゃんは聞き逃した。


そこで目が覚めた。


意識の中で夢を繰り返してみる。


女の子とは面識がない。


しかし、前にも1度夢に出てきたような錯覚を覚える。


詳しい内容はわからないが
その子の嫌がることをするいやな夢だったように思える。


自分の知らないところでストーリーが進行しているような

夢の続編を見たという感覚。


そういえば、数日前に金縛りにあった。


いやな夜が続く。


現実の世界ではトラブルが起こりそうもない。


ぼくと外でつながっているラインは1つある。


そう、このブログ。


誰だ?


変な念を送るのは、やめておくれ。


憎悪、嫉妬・・・。


いやなことはブログに吐き出したから、また眠りにつこう。


あーあ、あと数時間しか眠れやしない。

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