東京困惑日記 その1 | 旅ノカケラ

旅ノカケラ

@人生は先がわからないから、面白い。
@そして、人生は旅のようなもの。
@今日もボクは迷子になる。

冬だというのに背中にあたる日差しが気持ちよくて、電車に揺られながらうとうとしてしまった。起きてみるともう終点で、乗りすぎてしまったと思いながらよろよろとホームに降り立った。地面に足が着いていることはわかる。体がふらふら揺れているようでもあり、自分の周りの景色が揺れているようでもある。ゆらめく景色の中で、ものすごい数の人々がものすごい勢いでものすごい狭い改札口に吸い込まれるように流れていく。
その場に立ち尽くすわけにもいかず、一歩踏み出せば流れゆく人の川へ身を任すように体が動いていく。その流れや速い、速い。東京は時間の流れがものすごく速いようだ。群集の流れは改札口の手前でいったん淀み、1人がかろうじて通り抜ける通路を抜けると蜘蛛の子を散らすようにものすごい勢いで四方八方に散っていった。
私はゆらゆらする景色の中で丸く黒い塊がすばやく動くさまを眺めながらどこに行こうかと不安でたまらなかった。


※これは創作であり、内田百閒へのオマージュである。