東京困惑日記 その2 | 旅ノカケラ

旅ノカケラ

@人生は先がわからないから、面白い。
@そして、人生は旅のようなもの。
@今日もボクは迷子になる。

郊外から電車に乗って東京に着くと、地下鉄でもないのにわざわざ地下に潜ってから再び地上に出なければならない。右を見ても左を見ても蛍光灯に照らされた細い通路が延びている。人の往来は激しく、どの顔もぶらぶら散歩するような穏やかじゃなくて早く地上に出たい一心で歩幅を早めているように思えてならない。
行き先を決めているならともかく私のように行くあてもなく漠然と電車を降りてしまった者にはとても居心地が悪い。もし間違った出口に出てしまったらその場で迷子になってしまったも同然となる。
人の背丈は違っていても歩く速度は、なぜか同じである。そんな流れの中に不自然な動きが目にとまった。白い蛇がうねうねと歩く人の足元を這っている。人が避けるようでもなく蛇が踏まれないようにかわすでもなくリズムを刻むように蛇が行く。
気がつけば、私はふらふらと蛇の後ろを歩いていた。
真っ直ぐ歩いているつもりが蛇が体をうねらせるように私もふわふわ揺れている気持ちになる。目に映る光景は変わらず真っ直ぐ同じ方向を突き進み、やがて階段が見えてきた。一段上がるたびに登っているのか下っているのかわからず、あいかわらず雲の上を歩いているような浮遊感がする。
長い長い階段で、白い蛇は上へ上へと進んでいく。階段の明かりは薄暗く、蛇の白い肌がいっそうつややかにみえる。外の明かりが差し込むと私は目を細め徐々に黒いシルエットになっていく白い蛇を逃がすまいと目で追った。私の体が光に包まれあまりの眩しさに目を閉じた。そして外の新鮮な空気を感じると体のふわふわした気持ちが治まってしまった。
目を開けると階段を上がりきって、地上の地面に立っていた。
すぐ目の前に這っていた白い蛇を探してみたけれどもどこにもいなかった。