55.「角見で押して離れる」という弓道の謎(補足編)

 

もし、AIに「弓道の離れ方」を質問すると、

おそらく、押し手(弓手)の「角見で押して離れる」という答えが返ってくるでしょう。今、世の中にある既成情報しか学習できないのですから、それは当然。

(実際にChatGPTに質問した答えを、この記事の最後に掲載しておきます)

 

とすると、

今、AIが、本当に正しい答えを導き出してくれるかというと、そういうわけではないということになります。これが、AIの落とし穴です。

 

だから、

弓道の既成概念も盲目的に信じるのではなく自分でも考えて、理にかなっているのかどうか少しでも確かめること、そして、私たちのような先人になりつつある人においては、知り得た事実を少しづつ訂正して伝えて行くこと。そうすることが「弓道は中らない」を永遠にしない唯一の方法になると思います。それを怠ってきたから、40年前と同じような状態が今も続いているのだろうと思います。

 

私に30年以上のブランクが無かったら、

そのような感覚は持てていなかったのでしょう。しかし、既成概念の謎に気付いてしまいましたから、そのことを記録しておきたいと思ったのです。

 

「角見で押して離れる」という弓道の謎」については、

最も的中と相関が高く、核心部分であり、象徴的なものでもある内容となりました。なので、補足して説明いたします。

 

 

<補足>

「角見で押して離れる」

既成概念、押し手(弓手)の「角見で押して離れる」を盲目的に信じていくと、ほとんどの人は引き離れとなってしまいます。

 

なぜか、

弓を押し出すのですから、弦を引いている勝手(馬手)側は何もしなくても引くことになります。これは、下図でも解るように、単なる力の作用反作用の関係です。

 

また、押しても押しても離れてくれない場合は、勝手(馬手)の腕を引き開き始めることで会の力の均衡を崩すことをきっかけに離すタイミングをとることになります。(私がそうでしたから間違いはありません)

 

どちらにしろ、

結局、勝手(馬手)側を引くという動作が入るので、親指の上に乗っただけの矢先は動いてしまいます。また、3次元的に不安定な取り懸けの筈の位置もズレて、的付けとは別の方向に矢を向けて離すことになり、いくら練習をしても的には中ってはくれません。これが、「弓道は中らない」の原点になるのです。

しかも、

弦を引く方向は、上図のように残身では肘の張りとは逆方向になるため、後の伸びにはつながりにくいのです。

 

ここまで冷静に考察してきますと、

押し手(弓手)の「角見で押して離れる」は、理にかなった引き方とは言えないということに気づいてしまうのです。

 

 

理にかなった引き方とは、

どのようにならないといけないのかを考えてみることにしましょう。

 

3.的中についてで説明していますように、物理的にみると、的中は会のまま離れを向かえることで得られます。ということは、離れの瞬間に引く動作が入らないようになっていなければなりません。

 

しかし、

多くの人は、押し手(弓手)と勝手(馬手)のタイミングを合わせて離して中てることを一生懸命練習するようになります。タイミングがズレてくると途端に中らなくなり、タイミングを合わせるように何度も練習して、これを永遠に繰り返すようになります。(私もそうでした)

 

この負の循環を打破できるのが、下図に示した方法になります。

勝手(馬手)は弦を引いているのに押せるのかと疑問に思うかも知れません。しかし、取り懸けが解けない限りは弦枕(角見)では弦を押す力をかけ続けることができます。それが、49.取り懸けをミクロに考察してみる50.取り懸けをミクロに考察してみる(大切な補足編)で説明している内容です。

 

  • 勝手(馬手)側で弦を押すので、相応して押し手(弓手)も角見で押すことになります。
  • 弦を押し続けていくと、取り懸けが解け離れがでます。
  • 押し手も勝手も押し続けていますから、タイミングを合わせる必要はなく、会のまま離れることができます。
  • もし、押し手(弓手)が弓を押し出そうと動いても、取り懸けは弦を押して離れようと力を働かせているので、弦を押して離れてくれます。また、勝手(馬手)が引き離そうと腕が開き始めても、同様に弦を押して離れてくれます。
 
さらに、
勝手(馬手)の親指の弦枕で弦を押す方向は、肘の張り方向と一致しているので、残身での後の伸びにつながるということにもなるのです。

 

ここまで事実が解ってくると、押し手(弓手)の「角見で押して離れる」を盲目的に信じてやってきたことは今までは何だったのかと、虚しくもなってきます。

 

「弓道は中らない」ではなくて、「正しく引けば、弓道は中る」。みんなで、このことを実現していきましょう。

 

 

残念ながら、物理的にみると、的中するかどうかの90%以上は離れをどのように迎えるかだけで決まります。

 

前回、唐突に書いてしまいましたが、的中は会のまま離れを向かえることで出せるのですから、的中するかどうかは離れの瞬間に決まるというのは疑いようもない事実なのです。

 

ですから、

射技としては、一射の中では最も「離れ」を大事にしなければなりません。

 

しかし、

離れ方についての詳しくは教えてはくれないし、情報も乏しいのが現状です。もっと、事実を共有できるようにしていきましょう。

 

 

<まとめ>

邪道という言葉があります。中て射という言葉もあります。これらは、正論をも黙らせることができる便利な言葉だと思います。

 

勝手(馬手)の「角見(弦枕)で押して離れる」は、

11.取り懸けの親指と中指のクロスをどう解くか」「34.かけほどきを身につけよう」で紹介した方法で身につけることができます。いつでもどこでもできるという点では、左手の人差し指でやってみるのが一番おすすめです。

取り懸けで捻りをかけながら、親指を的の方向に真っ直ぐのばして弦を弦枕で押し出していくようにしていくだけで、取り懸けが解けることが簡単に解ります。

 

45.「矢に学ぶ」⑤矢の離れ口」で紹介しています「離れのイメージトレーニング」を毎日20回以上はやってみてください。この動作が身についてくると立ちで自然に大きな残身がでるようになります。(無理矢理、立ちで出そうとしてはいけません)

色々とあれこれ悩むより、上記の2点のシミュレーション(素振り)を続けることで、必ず成果が現れてくると思います。(補助輪を外して、自転車が乗れるようになるときのように・・・)

 

 

次回は、未定 を予定します。

的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしています。

解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。

 

 

<付録>

ChatGPTとの会話

User
弓道の離れ方を教えてください


ChatGPT
弓道の離れ方についてお教えいたします。弓道の離れ方は、基本的に以下の手順に従って行われます。

構え(姿勢)を整える: 弓道を始める前に、正しい構え(姿勢)をとることが重要です。まず、足は肩幅程度に開き、体重は均等に分散させます。腰は少し後ろに引き、背筋を伸ばします。

矢をセットする: 矢は右手で握り、親指と人差し指で支えます。矢羽を自分に向けて外側にするようにします。左手は弓を持ちます。

弓を構える: 左手で弓を持ち、親指は背面に置きます。四本の指は弓を包み込むように握ります。弓の上下を握りすぎず、ゆるやかに持つようにします。

弓を引く: 左手で弦を引きながら、右手で弓を押し出します。弓は一定の力で引くことが重要です。また、引き終わったときには、親指を弦の上に乗せ、指で弦を支えるようにします。

狙いを定める: 矢を引いた状態で、狙いを定めます。目線は的の中心に向け、全体を見渡すようにします。

矢を放つ: 狙いを定めたら、指の力を緩めて矢を放ちます。このとき、身体の動きを最小限に抑えることが大切です。一気に矢を放ち、的に集中させます。

以上が基本的な弓道の離れ方の手順です。ただし、弓道は非常に繊細なスポーツであり、正確なテクニックの習得には時間と努力が必要です。安全面にも留意し、指導者や経験者の指導を受けることをおすすめします。


User
左手で弦を引きながら右手で弓を押し出しますは、左手と右手が逆です。もう一度、弓道の離れ方について教えてください。


ChatGPT
申し訳ありません、誤った情報を提供してしまいました。以下に修正した弓道の離れ方の手順をご案内いたします。

構え(姿勢)を整える: 弓道を始める前に、正しい構え(姿勢)をとることが重要です。まず、足は肩幅程度に開き、体重は均等に分散させます。腰は少し後ろに引き、背筋を伸ばします。

矢をセットする: 矢は左手で握り、親指と人差し指で支えます。矢羽を自分に向けて外側にするようにします。右手は弓を持ちます。

弓を構える: 右手で弓を持ち、親指は背面に置きます。四本の指は弓を包み込むように握ります。弓の上下を握りすぎず、ゆるやかに持つようにします。

弓を引く: 右手で弦を引きながら、左手で弓を押し出します。弓は一定の力で引くことが重要です。また、引き終わったときには、親指を弦の上に乗せ、指で弦を支えるようにします。

狙いを定める: 矢を引いた状態で、狙いを定めます。目線は的の中心に向け、全体を見渡すようにします。

矢を放つ: 狙いを定めたら、指の力を緩めて矢を放ちます。このとき、身体の動きを最小限に抑えることが大切です。一気に矢を放ち、的に集中させます。

再度、正しい弓道の離れ方の手順をご案内できたことをお詫び申し上げます。お楽しみいただけるよう、安全に練習してください。

ChatGPTも間違いがあって、教えないといけないようです。なんか、それらしい答えにはなっていますが、アーチェリーと混同している内容にも思えます。弓道については、まだまだ、学習が足りないようです。

 

がんばれ!&

 


 

 

 

 

 

 


 

弓道の的中(射技)の物理的考察

もくじ

 

0.弓道の再開

 

1.はじめに

2.的中のための取り懸けについて(三つガケの場合)

3.的中について

4.離れについて

5.手を開いて(緩めて)離すことの弊害について

6.詰め合いについて

7ー1.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~

7ー2.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~

7ー3.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~

7ー4.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~

8.伸び合いについて

9.会のままの残身について

10.会での勝手の手の内を考える

 

11.取り懸けの親指と中指のクロスをどう解くか

12.取り懸けで親指を押える位置は?

13.押し手の手の内を作るとき、角見の皮を巻き込む?

14.「離す」と「離れる」はどう違う?

15.胸弦の活用

16.弓道の離れとアーチェリーのリリースとの比較

17.正射必中に必要な幾何学的な必須条件

18.細かい話にはなりますが・・・

19.弦捻りをかけると離れで弦枕が引っかからないか?

20.中りに重要なのは押し手ではないのか?

 

21.会では見えない動作がある?

22.残身まで開く力αはどれだけ大きくできるのか?

23.集中力、モチベーションを下げない練習方法はないのか?

24.弦捻りの中心は、矢軸か親指の弦枕か?

25.カケ解きはどのように作用させればいいの?

26.既製のカケは親指で選ぶ

27.弦捻りの誤解

28.勝手の中指で親指の腹を押し出すについて

29.弓返りに大切なのは弓の捻り

30.押し肘の回内はなぜ必要か?

 

31.夏の暑さから弓を守るには

32.的中率を上げるためにやれること

33.かけがえのないものを受け継ぐには

34.かけほどきを身につけよう

35.(続)夏の暑さから弓を守るには

36.両肘の張りと弓の裏反りは似ている?

37.的中を維持するには、お風呂でエクササイズという手がある

38.的中のための本当のねらいとは

39.かけほどきの力の反作用も考えてみよう

40.的中は矢から学べ

 

41.「矢に学ぶ」①矢を分ける

42.「矢に学ぶ」②矢筋にのせる

43.「矢に学ぶ」③矢押し

44.「矢に学ぶ」④矢引き

45.「矢に学ぶ」⑤矢の離れ口

46.「矢に学ぶ」⑥矢妻をとる

47.「矢に学ぶ」⑦矢になる

48.スランプの原因を物理的に考察する

49.取り懸けをミクロに考察してみる

50.取り懸けをミクロに考察してみる(大切な補足編)

 

51.離れの瞬間を考察する

52.的中率をさらに上げるためにやれること

53.弦捻りのルーティン

54.「角見で押して離れる」という弓道の謎

55.「角見で押して離れる」という弓道の謎(補足編)

 

 

がんばれ!&