13.押し手の手の内を作るとき、角見の皮を巻き込む?
今回は、押し手で大事なポイントの話をします。
押し手で大事なことは、押し手の手の内と弓との十文字です。
押す力をまっすぐに弓に伝えるための形です。
弓の力を支えているのは筋力ではありません。骨格です。
これは、疑う余地も無い事実です。
筋力は弓の力を支えている骨格をサポートしているだけなのです。
したがって、弓を引くときには、支える骨格の形が大事なポイントとなり、重要な部位の十文字を守るよう教えられます。三重十文字や五重十文字がそれです。直角だとモーメントや分力の影響が出ないのです。
<仮説4>
押し手の手の内を作るとき、角見の皮を巻き込むこと。
(このことは、弓道教本 射法八節図解の「手の内の整え方」に「虎口の皮を下から巻き込む」とだけ書かれています)
<検証>
押し手の手の内を作る時、角見の皮を巻き込むことによって、
①皮が突っ張りになって、会での弓の力を親指の中手骨で真っ直ぐ受けて支えることができます。まるで弓の力を利用して中手骨が押しているようになるのですから、やらない理由はありません。
②さらに、親指の爪を上に向けて反らして、第1関節が曲がらないようにして、中指を押して輪を作ることができます。これは勝手の手の内とほぼ同じことをやっています。
③さらにさらに、矢の乗っている第2関節の上面の傾斜が水平になってきて、矢が落ちにくくなります。ますます、やらない理由は無いのです。
この巻き込みが無いと、親指の中手骨は弓の力に負けて浮き上がり、角見を効かすことができません。紅葉重ねや握卵の手の内も作れなくなります。
最近は剛弓を引いている人はあまりいないので、角見の皮を巻き込んでいれば、手の内が潰れてベタ押しになることは無い筈です。
実際には、弓の力がかかっているので、こんな感じになると思います。
弓は18kgの肥後蘇山 弓禅
私の場合、猿腕なので腕の角度はかなり上向きなのですが、弓と手の内の十文字はしっかりと守っています。なぜなら、巻き込んだ皮が親指の中手骨の姿勢を保ってくれるので、弓力は骨格が支えて余計な力がいらないからです。
親指は中指を押して反るようしています。勝手の手の内と同じことをやっているのです。弓を押す角見と弦を引く弦枕もほぼ同じ位置ですよね。
この事も簡単に検証できます。
まず、手のひらの中心を弓に十文字(直角)にあてて弓を素引きしてみましょう。
このように、親指の中手骨は上向きの角度を持って弓にあたるので、手首に力が必要になり、腕全体に力みが必要になり、肘を入れにくくなります。
では、親指の中手骨を弓に十文字(直角)にあてて弓を素引きしてみてください。
矢軸線方向への真っ直ぐの張りは、余計なモーメントが働かないこの状態でこそ、簡単に実現することができるのです。
腕に余計な力(分力やモーメント)が働くことは、ブレを生む原因となり、矢所が安定しません。
また、会での手の内は、この状態で中指・薬指・小指を弓にあてて紅葉重ねの状態(ただ指で弓の入る輪を作った状態)となるのが自然です。
素引きの状態では弓はしなってないので、小指はとどきづらいと思いますが、大三で会と同じ手の内の状態をほぼ完成させることができていれば、会でベタ押し気味になることはありません。
補足しておきます。
小指を無理やり弓に巻くように指導されて、握り込む手の内になっている人も多いようですが、これは誤解です。
小指の機能は10.会での勝手の手の内を考えるで説明したように、上が長く下が短い日本弓の離れでの回転運動を抑えるためなので、巻く必要は無く、弓にかかって弓の姿勢をコントロールできれば良いのです。
弓への捻りは手の内全体でかけているので(昔は雑巾を絞るようにと教わりましたが)、試しに小指を伸ばして引いてみても、弓返りはちゃんとする筈です。
(29.弓返りに大切なのは弓の捻りの動画参照)
弓道教本 射法八節図解の「手の内の整え方」には、「人差し指は曲げても伸してもよいが指先を下に向けぬように」とありますが、人差し指を下に向けないように伸ばすと、人差し指が中指から離れてしまうので、同じように勝手でも人差し指が中指から離れて伸した形になるでしょう。そのような悪影響が出るので、物理的には、下に向いても中指から離さないほうが大事だと思います。
<まとめ>
弓と押し手の手の内の十文字を整えるなら、角見の皮を巻き込んで手の内を作って、弓の力を利用して、紅葉重ねや握卵の手の内を実現させましょう。
さらに、弓と押し手の手の内の十文字の状態は、会で実現できるように引くことが大切です。自分からは見えないからと言って、会で弓はしなっていることを忘れてはいけません。
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