7ー3.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
<張り合い>つづき
では、どうやって取り懸けを解いて離れるのでしょうか?
親指と中指をクロスさせた状態で、取り懸けはどうやって解けるのでしょうか。
これは難解な知恵の輪を解くことと似ています。
暴発させてはいけないが、ブレのない軽い離れでなければならない。
完全に相反して矛盾しています。
なので、多くの人は、握り込んで暴発を防ぎ、手を開いて離す、となるのは仕方がないと思います。
取り懸けを解く離れを生むためにやれることは、以下になります。
①取り懸けで、軽く弦捻りを加える。
②打ち起こしでも、弦捻りを続ける。(矢口が開き矢こぼれすることを防ぐ)
③大三でも、弦捻りをかけ続ける。(たぐりを防ぎ、肘で引ける)
④引き分けでは、弦捻りを強める。(暴発を防ぎます)
⑤会では、張りと合わせ取り懸けた3つの指を薄く平行に近づける。
(中指で親指を押さえる方向の力を、前に押し出す方向に変える)
⑥徐々に弦捻りを増し、徐々に⑤の方向を変えていきます。
(力むのではありません。親指と中指とがほぼ摩擦だけで止まっている状態となり、親指と中指が少しずつズレてキチキチという音が出る状態になります)
⑦中指がカケ帽子の頭を越えて取り懸けが解け、弦が弦枕から飛び出し、弓の力から解放されて腕が開きます。これが離れの瞬間です。(決して腕を開く動作で離してはいけません)
中指と親指の弾きは指パッチンに似ているのですが、クロスさせている形で異なります。普通の指パッチンではないので、中指と親指をクロスさせた取り掛けの状態を再現して、どの方向に力を働かせればクロスした指が解けるかを、普段からシミュレーションしておくことが大切です。
⑧取り懸けが解けたことで、両拳を残身の位置へ真っ直ぐに開きます。
ここで大切なのは、取り懸けを解く捻りの中心は親指の中心に一致させることで、親指のブレがなく離れることができます。
これは、カケ解きの作用を先生が図解してくれたものです。
離れを生むためには、弦捻りとこの取り懸けを解く指の力の作用(弾き)が必要です。図解ではどうも力の方向が2Dで不充分なため、より精度良く説明するために前からの図も付け加えておきます。
親指を前に押し出す方向というのは、横から見た方向と前から見た方向とを合わせた方向を意味しています。
会で自分自身がやれるのは、この取り懸けが解ける臨界の状態を創り出し、離れが生まれるように努力することであって、決して離す動作をすることではありません。
したがって、離れは自分の努力の先の「確信」で起こることであって、「一か八か」で行うような動作ではないということを意識して欲しいと思います。
これが、カケの構造や取り懸け方法を活かす物理的に理にかなった、離れを生むメカニズムとなります。
私は、先生からはカケ解きのイメージを雨戸のとめがねを外すようにすることだと教わりました。当時、これを理解することはできませんでしたが、ここで説明したような解釈ができたときにやっとその表現を納得することができたのです。
離れは、手を開いて弦を離し、腕を開き、残身を取る、といった体操のような動作を行うものではありません。自分で動作をしようとすると必ずブレが起き、矢所が散ることになります。
離れは、会の張り合いで生まれる現象であって、離すではなく「離れ」という表現は物理的にも正しい、ことが理解できたと思います。
多くの人は本当の離れ方を具体的に習えず、抽象的な表現による指導で、初心者のときのまま勝手を開く動作で離す域から抜け出せないでいます。会の張りとはまったく違った動作をするため、狙いをズラして離す。結果、矢は的の回りに散って、外す練習を繰り返している。これは、指導する側の課題であって、習う側からすれば実にもったいない話(離し)なのです。
- 張り合いは力むことではありません。
- 力の方向を整え、離れが起こるようにゆっくりと増して、残身まで続けて行くものだと、理解してください。
- 会は、離れを生むためにあるのです。