26.既製のカケは親指で選ぶ
初心者や学生の皆さんは、最初は安価な既製のカケを買うことになると思います。安価と言っても1~2万円以上はしますので、決して安い買い物ではありません。
カケが自分の手に合っていなければ、軽妙な離れは出せませんし、的中もなかなか出せません。射形にも悪影響が出てきます。
弓道の的中(射技)の物理的考察の記事で説明してきた内容は、多少はカケがフィットしていない場合でも、軽妙な離れで的中を出せるロバスト性のある方法を説明していますが、フィットしている方が的中精度は良くなりますので、既製のカケのオススメの選び方を紹介しておきたいと思います。
<仮説18>
既製のカケは親指で選ぶ
<検証>
取り懸けの役割を考えてみましょう。
①暴発を起こさないように、弦を弦枕に密着させ、親指と中指をクロスさせて、取り懸けがロックされた状態を作る。
②弓から矢口が開かないように矢を押さえて、矢の姿勢を保持する。
③的付け通りに矢を送り出すために、親指の位置が動かないように、親指を中心に取り懸けを解く。
④耳・頭・腕に弦が当たらないように、弦の軌跡をガイドする。
このように取り懸けの役割を考えていくと、押し手よりも重要で多くの役割を持っていることが良くわかります。
①②④はカケがフィットしていなくても機能させることはできます。
しかし、カケ帽子がブカブカだ(長過ぎる)と、③の機能に影響が出ます。
なぜなら、取り懸けはカケ帽子の先端に中指をクロスさせて押さえる形になっているからです。
取り懸けを解いて離れる瞬間の現象では、クロスさせた中指が親指の先端を乗り超えます。したがって、カケ帽子が長過ぎると中指がカケ帽子の先端に引っ掛かって軽妙な離れが出せなくなるのです。当然、矢所はブレます。
まず、既製のカケを試着してみて、親指の先端がカケ帽子の頭に当たるものを確認して、いくつか選んでみてください。親指の先端が当たらないものは即却下です。中指や人差し指の根元が少し短くて指がすっぽり入いりきらなくても、親指の先端が当たるまで手がカケに入ればOKなのです。
親指の先端を合わせた既製のOKなカケ
(写真ではわかりやすいように、親指を出しています。)
手形をとってオーダーメイドすれば、すべての指が綺麗に収まるのは当たり前です。手形から作ったカケ
しかし、既製のカケから選ぶ場合は、中指・人差し指の先端や親指と人差し指の股が先付きして、親指の先端がカケ帽子の先端に当たらないものが多いと思います。この場合はブカブカだ(長過ぎる)と思ってください。親指の先端とカケ帽子の頭が2mmの開きがあるのでNG!
おそらく、既製のカケは大きなダンボール箱の中にガサッと入った状態で売っていることでしょう。なので、まず、親指の先端がつくものだけを選んで、その中で最も中指や人差し指の収まりの良いものを選択してください。それがベストチョイスです。と、ここまでは誰もが言っていることだと思いますが、この記事ではその物理的根拠を説明していきたいと思います。
ちなみに、私は訳あって上のNGのカケを使っていますが、この弓道の的中(射技)の物理的考察で説明しているカケ解きの方法を実践していますので、ベストな的中シリーズで紹介しているような的中を出すことができています。
これは、取り懸けた3つの指を薄く絞る(クロスする角度を浅くする)ことで、長いカケ帽子の先端の引っかかりを小さくしかつ弦捻りの作用を(てこの原理で)増幅させるようにしているからです。
自分の手に合ったカケで、親指と中指を薄くして、浅い角度で取り懸けた場合、このようにカケ帽子先端の部分と中指の重なりあった一部分(青斜線部分)でロックを掛けていることになるので、親指中心の弦捻りを掛けることで取り懸けが解けて、軽妙な離れが出せます。
しかし、カケ帽子が長くブカブカだと、親指と中指の重なる開始点Aが同じ位置でも、その長過ぎる部分(赤斜線部分)も中指と重なることになり、これではもはや自分で手を開かないと弦を離すことができなくなります。
でも、そんなブカブカなカケを選んでしまった場合でも、悲観することはありません。親指と中指をさらに薄くして浅い角度で取り懸けることで、重なり部分は小さくすることができ、ブカブカなカケでも取り懸けを解いて離れることができるようになります。取り懸けを薄くすることは軽妙な離れを出すために重要なのです。
反対に、中指を折って握るように取り懸けると、手に合ったカケをしていても、親指と中指の重なる部分が増大して、手を開かないと離れない状態になってしまいます。
多くの人は、取り懸けを解いて離れるための取り懸けの手の内を教えられないままなので、手を開いて離すことになり、的中と仲良くなれないままでいます。実にもったいない話(離し)であると私は思います。
<まとめ>
既製のカケは、親指の先端がカケ帽子の先に当たるものの中から選びます。
次回は、弦捻りの誤解を予定します。
的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしています。
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。