8.伸び合いについて
<伸び合い>
これが特に抽象的で難解です。
しかし、安定した的中や鋭い離れを生むためには不可欠なものとなります。
会の状態は外観では静止状態で、矢束や身体が伸びたりする訳はないのに、伸び合えと言っている。張り合いとは違う表現なので、張り合いとは違うものであることは確かだろうと思います。
伸び合いは、人が次の動作を瞬時に行うための瞬発力を発するための溜めであると、私は解釈しています。
矢勢を出すためと説明する方もいますが、物理的に考えれば矢の初速に影響を与えるとは考えにくく、聴覚や視覚による錯覚だと思われます。
伸び合いを簡単に表現するなら、
離れのスタート位置(会)に着いたあと、そこから移動する残身の位置(ゴール)を定めて、そこに向かってブレ無くスムーズにスタート(離れ)を切ろうとする、次の動作への準備状態と理解するといいでしょう。
力みでは実現できません。力みでは必ずブレが生まれ、タイミングのズレも生まれます。このことは、誰もが何かにつけて経験していることだと思います。
例えば、
短距離走のスタートで正に走り出そうとしているランナーはどうでしょうか。静止した状態から狙ったゴールの方向に真っ直ぐスムーズに動き出そうとする。その準備ができていなければ、素早くブレの無いスタートは生まれません。
この時と同じ体と心の状態を創り出せれば、会の静止した状態からでも次の動作へのスムーズな流れを創れるようになり、離れにはキレが、残身には余韻が、生まれるのだろうと考えます。(これは物理的には表し難いものです)
伸び合いは、スタート位置に着いてまさに走り出そうとしているランナーの状態と同じと考えていいと思います。静止していますが、内面ではゴールを目指してもう動いている。
会はスタートライン
正直言ってこの域は、ただ単に弓を引いて離すだけの動作をしている早気では、絶対に味わえない境地なのです。
空手の形競技を見たことがありますか?
キレキレの形の演武で競う競技です。
離れは空手で繰り出される形に似ている。一つの形から次の形に移るときの溜めや、伸びやかな技の繰り出しを見習い、離れに取り入れたいものです。
迷いの無い、キレの良い、正確な離れ、というひとつの形を身につけていきたいと私は思います。
心地良い残身が得られれば、それによってもたらされるものもあります。
めざす的中の姿
次回は、会のままの残身についてを予定します。
的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしております。
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。