7ー2.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
<張り合い>つづき
さてここで、会での力の釣り合いを式に表すと、以下のようになります。
弓力 = 骨格に加わる力 + 骨格を支える筋力 + α(両腕を残身まで開く力)
引き分けが終わった状態では、このαは、ほぼ0です。会の中でこのαを生み出していく、この力の変換を行うことが張り合いということにもなります。αをできるだけ大きくすることによって、鋭い大離れを生むことができるわけです。
では、具体的にどうすればいいのか?
先に説明したように、
引き分けでは腕を折りたたむ方向へ加えてきた力を、会では腕を開く方向に変換する。残身まで真っ直ぐに勝手を導く力を、右肘を始点に加えていく。
この外からは見えない体の中での力の変換をやるかどうかが、離れの原動力となるαを生み、育てていくことができるかどうかのポイントとなるのです。
ここで注意したいのは、引く力は手や腕を始点に加えるのではなく、右肘を始点に加えるということです。
理由は単純で、
手や腕を始点にすると離れの運動は右肘を中心の円弧③で起こるため、離れの際のブレが大きくなります。
右肘を始点にすると離れの運動は右肩を中心に肩と勝手の親指との短い円弧④で起こり、ほぼ真っ直ぐ後ろに離れることができるのです。
物理的にそういう位置関係にあるので、否定の余地はありません。
しかし、
学生の頃の私は、「弓は肘で引きなさい」という教えの単純な理屈が理解できないで、引いた矢束の大きさ優先でたぐり勝手となり、典型的な手を開く離しで、好調不調の波が大きかった。
(たぐれるほど腕力を余しているのなら、弓力を上げることをお勧めする)
腕を開く方向の力を加えていくと、矢束が広がってしまうのでは?
と思うかもしれません。
しかし、会での力の釣り合いの式を見て解るように、勝手を残身の位置まで開く力は弓力の大きさに比べると小さく、骨格を支える筋力との割合が変わるだけとなるので、矢束が広がることはありません。
張り合いで重要なのは、
離れの瞬間、押し手と勝手の親指の位置がブレないようにするため、張りの方向は矢の軸線上に沿って真っ直ぐでなければならないということです。
そして、真っ直ぐに引くということは、上記④のように右肘で引かなければならないということになるのです。
一方、押し手側も肘を始点にして勝手側と同様に矢の軸線方向に真っ直ぐに押せば良いことになります(上記②)。
両肘が力の始点になることによってバランスが取れ、手先の力みも防ぎ、勝手側の力と同期した運動として押し手側も上手く働いてくれるわけです。
通常、人は左右別々の動きをするのが苦手で、意識しなければ同じ動きをしてしまうということなのです。これも否定できない事実です。
左右違う運動をするのは難しい
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。