11.取り懸けの親指と中指のクロスをどう解くか
はじめにの部分で、
射技の中で最も重要な課題は、指を交差させた取り懸け方をどう解くかにあります。これは、難解な知恵の輪を解くことに似ています。力づくで解くか、スムーズに解くか、離れの理屈が解れば迷いは無くなり、残身に思いを向けることが出来るようになります。
と書きました。
そして、会での張り合いの説明の中で、取り懸けの解き方についても説明してきました。
もう少し細かく考察を加えることで、みなさんの取り懸けの解き方への疑問を解消しておきたいと思います。
<仮説2>
親指と中指はクロスしているのに指パッチンができる?
<検証>
親指と中指はクロスさせて取り懸けているので、普通に指パッチンをするのとはまさに"勝手"が違う。普通の指パッチンは指はクロスさせない。親指と中指が簡単に弾(はじ)けないからです。
しかし、取り懸けでは、引き分けで暴発しないように指をクロスさせてロックする。ロックした指は開らくか緩めるしか開(あ)かないと誰もが思うのは当然です。
でもそれは、「離す」であって、「離れ」るではない。自分で起こす動作になるので必ずブレが生じます。(ダーツをやったことがあれば、自分で離してブレなく中てることがどれだけ難しいことか解ると思います)これが、弓道は中らない、難しいとなる最大の原因となるのです。
引き分けでは、
親指(カケ帽子)を起こそうとする弓の力が弦から加わっているので、親指の上側(爪側)を中指で押さえこんで、弦が飛び出さないようにロックした状態にしなければ暴発を起こします。
会では、
中指は親指の腹を滑らせる方向(親指腹を前に押し出す方向)に力の方向を変え、親指はこの力に反発させ、3つの指を薄く絞って平行に近づけていくことで、中指と親指はほぼ摩擦で止まっている状態にしていくことで、ロックした状態から取り懸けを解くための準備を整えます。
しかし、クロスしている指はこれだけで解けるわけではありません。
この状態から弦捻りと右肘の張りを効かせて、クロスした親指と中指とを弦をテコにしてこじ開けるようにしていくことで、摩擦で止まっている状態の臨界を超え、取り懸けが解けるのです。
指がクロスしているので、取り懸けの構造と弦とを活用して取り懸けを解いて行く必要があるのです。
このことは、簡単に検証できます。
ペンを弦に見立てて手で取り懸けの形を作ってみてください。
こんな感じ
この状態で、ただ単に中指で親指を押し親指を反発させても、クロスした指では指パッチン(弾き)は起こりません。
ではこの状態から、ペンを固定して腕を反時計周りに少し捻ってみてください。
⇨あら不思議!
取り懸けは簡単に解け、押し合っていた中指と親指が弾けます。ペンがテコになって取り懸けをこじ開けてくれます。
指がクロスしていても簡単に取り懸けは解けるんです。これが、取り懸けの形とカケの構造の活かし方なのです。
手を開いて離している段階の人でも、弦捻りを効かせることで軽い離れを生んでくれるので、弦捻りをやらない理由はまったくありません。
引き分けで弦枕に弦をしっかり当てて中指で親指の爪側を押えることで暴発を防ぐ役割をしてきた弦捻りは、会で3つの指を薄く絞り弦を挟み込むようにすることで、取り懸けを解いて弾きを生む作用に変えることができます。(この状態では、キチキチと指が少しずつズレていく音が出ます)
それでは、3つの指を曲げて握り込むような形にしてみてください。
第2関節が曲がる
ペンを挟む指の遊びが大きくなって弦捻りで親指を押せず、取り懸けは解けなくなります。3つの指を薄く絞って平行に近づけていくことが不可欠なのはこのためなのです。
そして、弦捻りの中心が親指の中心と右肘を結んだ線になることで、ブレの無い離れを実現できるのです。
<まとめ>
このように、取り懸けの形とカケの構造をうまく活用することで、軽妙な離れを生むことができるようにできています。先人の知恵は偉大です。皆さんもこの知恵の輪をうまく解いて、「離れ」を味わえるようになりましょう。
次回は、取り懸けで親指を押える位置は?を予定します。
的中と仲良くなるために、またのお越しをお待ちしています。
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。