1.はじめに
多くの人は、弓道での的中には弓手(押し手)が重要であると考えています。
間違いではないでしょう。
おそらく、剛弓を引き小離れであった昔は、特にそうであったかも知れません。
剛弓の反動を抑えるには当然であって、私も先生方や先輩方からそう教わってきました。
しかし、
最近はそれほど強い弓は引かず、大離れが良い、とされるようになっていて、昔ながらの既成概念には、少し違和感を感じざるを得なくなってきています。
既成概念にとらわれず、物理的な見方で射技を研究、工学系思考の私が見出した仮説は以下となります。
- 的中に最も重要なのは、「馬手(勝手)の手の内とその働かせ方」である。
- 弓手(押し手)はさほど重要ではない。的付けどおりに真っ直ぐに押せてさえすれば充分である。
- そもそも、人は同時に左右別々の動きをするのは苦手である。勝手をうまく働かせれば、同期した反射運動として押し手も働く。
- 的(押し手)ばかりにとらわれず、正しい方法で勝手を働かせることが、正射必中への道である。
とにかく疑問に感じるのは、押し手の手の内や角見の効かせ方はうるさく言われるのに、勝手の手の内やカケ解きの方法など、勝手のことはめったに教えてもらえないことです。
教本などにも詳しくは書かれていません。まさに勝手にしろの放置状態にすら思えてきます。
物理的に見れば、実際に離れを行っているのは勝手であることは事実です。
しかも、その様子は自分からは見ることはできません。(押し手はいつも見えているのに・・・)
その結果、会から離れの上達は足踏み状態となって、手がかりも得られないまま、肝心な部分は教えられないで、射技は二の次に体配や精神論で弓道とはについて解かれる訳で、弓道は難しい、中たらない、面白くない、となってしまうのも仕方がないと私は思っています。
射技の中で最も重要な課題は、指を交差させた取り懸け方をどう解くかにあります。これは、難解な知恵の輪を解くことに似ています。
力づくで解くか、スムーズに解くか、離れの理屈が解ければ、迷いは無くなり、残身に思いを繋げることが出来るようになります。
誰もがそうであり、私もずっと悩んできましたが、誰も教えてくれない部分である、取り懸けの解き方や会からの離れ方を中心に、誰もが理解できるように、具体的に、そして物理的に、説明していきたいと思います。
皆さんのめざす姿がより具体的になり、楽しく弓が引ける手助けになれば幸いに思います。
ちなみに、
私の通った大学の学部には弓道場が無かったので、市営の弓道場で一般の方と同時に部活の練習をしていました。そこの一般の方の中で同じ学校の卒業生だからと言う理由だけで、熱心に指導して下さるかなり年配の先生がいました。
その方は、このようにレポートを書いて、私たちにかなり重要な事柄を教えてくださろうとしていたのですが、弓道を始めて数年の経験では到底理解できていなかった内容でした。
初歩から上級のことまで100枚近い量となったレポート
今、読み返してみると伝えようとしていたことが良く解るようになりました。かなりの確信(核心)部分が書かれていたことが解ります。本当にありがたい事だと思います。今回の射技の研究にも大いに参考にさせていただいております。感謝です。後世に私たちの経験を伝えることが、この恩に応えることだと思い、今回の投稿を始めました。
多くの学校の弓道部には、指導者がいないようです。これは今も現実のようです。
たまに自主練に来ている学生を見かけますが、気の毒なほど基本ができていないように思います。
週に1回は公営などの道場に出て、一般の人の射技を見たり、解らない事を質問したりする事をお勧めします。それだけで、上達のスピードは倍になるはずです。自分の経験に先人の経験を重ねていくのだから…。
次回は、的中のための取り懸けについて 具体的に説明していきます。
的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしております。