7ー1.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
<張り合い>
張り合いを単純に表現するならば、
離れるまで、以下の3つの方向の力をかけ続けている状態となります。これら以外の力が働くと、押し手や勝手がブレて矢は的付け通りには飛び出しません。せっかく整えた的付けを、わざわざズラして離すことになるのです。
張り ≒ 押し手で矢軸線上に真っ直ぐ押そうとする力
+矢軸線上に勝手を残身の位置まで真っ直ぐに開こうとする力
+取り懸けを解こうとする親指を中心としたカケ解きと弦捻りの力
これら上半身の作用を支える全身の力と合わせて、離れを生むための作用をさせている状態が、会の張り合いと理解すると良いでしょう。
逆に言えば、会ではこれら以外のことは何も考える必要はないと言うことです。
押し肩の収まりやら、勝手肘の収まりやら、もう会に入ったらいじる場合ではなく、会ではひたすら離れを生む努力を続けることです。(収まりは、詰め合いまでで終わらせること)
張り合いは、概念的には、弓に負けることなく、緩むことなく、矢軸方向と残身に向かう力を膨らませ、風船が弾けるように離れを生むと、教えられてきたように思います。
では、張りはどのように効かせるのでしょうか?
引き分けから会に入る時、押し手は的付けまで降ろしてくる力と、勝手は弦を引きながら腕を折りたたんでくる力を働かせています。
これらの力は、離れの方向とはまったく違います。
したがって、この時点で離すと、残身へ開く方向への張りはかかってないので、腕がほとんど開かない小離れになります。暴発を起こした際、このようになります。
早気でもこれに近い形になります。
中には、早気でもそれなりに腕を開いて残身をとれる人もいますが、残身の位置まで腕を広げる動作をやるからであって、張りから生まれた残身ではありません。
会に入ってくると、弓の力の大半は、腕と体の骨格が支えることになります。
抽象的には弓の中に入ると表現されるものです。筋力はその骨格を支える程度となるので、引き分けの時のような大きな力は必要なくなります。
ここからが、離れを生み出すための力(張り)を働かせることができる状態になるわけです。つまり、やっとスタートラインに立てたところなのです。
早気の人は、会を引き分けのゴールだと勘違いしています。
なので、ゴールにたどり着いた瞬間、反射運動で離す動作をやってしまいます。脳が、引き分けは終わりだと指令を出すわけです。
考え方を変えて引けば、早気は治ります。
まだ、スタートラインに立ったばかりで、即、試合を放棄しているようなものだと、しっかりと頭と体で理解してください。
会はあくまでもスタートラインであって、引き分けのゴールではありません。
会では、離れる(スタートする)ための準備に入ります。
矢の軸線上に真っ直ぐな押しと引きの方向の力と、取り懸けを解くための掛け解きの力と弦捻りの力を、離れるまでゆっくりと増していきます。
その先に離れが起こる。これが、会での張り合いということになります。
力むことではありません。
離れが出るように仕掛けていくのですから、もたれになることも絶対ありません。
もたれは、この離れるための準備の仕方を知らないか、途中で止めてしまっているだけなのです。
張り合いのポイント
①引き分けの方向から、会での方向への力の方向変換が、会の張り合いで最初に行うことである。
②張り合いの力は、矢の軸線上に真っ直ぐに効かせること。
(会での矢の安定と真っ直ぐな離れのため)
③取り懸けを解く力(カケ帽子を中指で前に押出す)と弦捻り(カケ帽子を中心とした捻り)とで、取り懸けを解く努力を続けていくこと。
(カケ帽子(親指)を中心にすることで、ブレなく取り懸けが解ける)
④会は「離れ」を生むための「スタートライン」である。
(引き分けのゴールではない)
張り合いは、④を念頭に、物理的には、上記の①②③の3つを離れるまで続けて行くことだと、私は解釈しています。
カケ解きの効かせ方(約35年前の先生の図解)と弦捻り
会のままの残身であろうとすること。
と、この部分の境地のことを私は先生から教わりました。離れは会の張り合いの中で起こることであって、残身までは会のままの力の作用のままで良いと言うことと解釈しています。
つまり、残身までは会の状態のままであって、ブレの原因となるような余計な力(離す力)は加えないのです。
私が弓道を始めて35年以上が立ちますが、
当時と同じ様に、有段者でも矢こぼれ、弦払い、暴発、緩み離れ、掃き矢で困っている人は多いように思います。
ひとつひとつの動作の意味をちゃんと理屈で正しく説明し、理解させて、教えることが、必要な時代になっているのではないかと、私は思います。
その思いもあって、私はこのブログで、取り懸けの方法から、具体的に説明させていただきました。
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。