5.手を開いて(緩めて)離すことの弊害について(的中、上達を妨げるもの)
手を開いて(緩めて)離す。
初心者はこうしなければ離れられないので初めは仕方がありません。
一番簡単な離し方なのですが、的中も出ないし、弊害だらけです。
初心者の域から抜け出すなら、手を開いて(緩めて)離すことの弊害を理解し、取り懸けを解いて離れる方法を身に着けて、上達への道へ踏み出しましょう。
離れだけでなく、残身での味わいや心地良さも変わってくると思います。
①弦で耳や頭や腕をはらう。
- 矢をほおに付けるので、弦は耳の真後ろにあります。なぜ、耳に当たらないのか? その理屈は、会を上から見ると良く解ります。
- 弦はカケ帽子の弦枕の位置にあるが、カケ帽子の先端は耳よりも体の前側にあり、弦枕から外れた弦の軌跡はカケ帽子の先を通り耳の前側を通ることになるので、物理的に、耳には当たらないようになっているのです。
- ところが、初心者は手を開いて(緩めて)離すので、弦はそのままの位置から戻り、わざわざ自分で耳や頭や腕に当たるように離していることになるのです。弦ではらうのは痛いし、怖いし、嫌になります。
- まずは、この物理的に当たらない理屈を理解し、または理解させることで、恐怖心を取り除きます。
- 応急処置としては、勝手の捻りを効かせるようにさせて、親指はそのままの位置で、中指側で手が開くようにする、または指導すると良いでしょう。
- 角見や弓返りが効いてないせいだと、押し手の手の内を指導する人がいますが、矢羽根の長さほどしかない距離の瞬間的な移動で、角見や弓返りが影響しているとは考え難く、物理的な根拠に乏しい、実に疑わしい指導であると思います。(弓返りしなくても払わない人はいます。このことが疑わしいことを証明しています。)
②押し手も開いてしまう。
- 勝手の動作に合わせて押し手も開く(緩める)ので、手首から浮き上がったり弓を投げたりする場合もあります。
- かっこいいものではありません。矢所も定まりません。
③会と残身が別ものになる。
- 会の張りと別の方向に力を急に働かせて離すので、会とのつながりが無くなり、せかっくきれいに引いてきた射の流れを台無しにします。
- 会と離れの間に「動作の節」が入るので、見ていてすぐにわかります。
④矢所が散る、矢が的に中らない。
- 勝手の腕を開くことをきっかけに、手を開く(緩める)動作をするせいで、せっかくの的付けをわざわざずらして離すことになるので、的の中に矢が飛んでくれる筈はありません。
- 初心者のほとんどはこの離し方なので、いくら練習をしても、射形が良くても的中が伸びず、しまいには弓を引くのが嫌になってくるのです。正しい離れ方を理解して、的中を伸ばし、少しでも楽しく弓が引けるようになってもらいたいものです。
初心者は射法八節と弓を引くための筋肉を身につけることが優先なので、手を開いて離すのはしかたないと思います。
しかし、上達のためには、手を開く(緩める)ブチ切りの離し方からは、卒業しましょう。上達の妨げになります。
取り懸けがなぜこのような形をしているのか?
カケと言う道具の正しい使い方は?
なかなか離れの理屈を教えてくれる人がいないのはなぜだろう?
ここで出来ればもう一度、「的中のための取り懸けについて」を復習しておいて欲しいと思います。取り掛けを解いて離れるために必要不可欠な要素となります。
次回は、いよいよ核心である取り懸けを解いて離れる方法を、詰め合い、張り合い、伸び合いと合わせて物理的に考察していきます。
的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしております。
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。