2.的中のための取り懸けについて(三つガケの場合)
弓道での的中の要(かなめ)は、押し手の手の内ではなく、勝手の手の内=取り懸けであると、言う人はどのくらいいるでしょうか。ここで本物かどうかが解ります。
既成概念の受け売りか、実体験に基づいたものか、と言う事です。
取り懸けは無造作に作りがちですが、最も的中につながる重要なものです。ただ弦を握って離せば良いと言うものではありません。機能を理解して、正しく、慎重に行いましょう。
<取り懸けの重要なポイント>
①弦とカケ帽子が十文字であること。
- 弦とカケ帽子は、ほぼ直角にします。
- これを前提に取り懸け方やカケの形が出来ているからです。また、直角がくずれると、他の方向への分力が発生します。この分力が、ブレの原因となるのです。
- 親指が少し下を向き、たぐり気味になっている人を多く見かけます。弦枕の浅い部分に弦が当たるようにすることで、離し易くするためだと思われます(自分も当初はそうでした)。ほぼ直角でなければ、矢軸線方向にまっすぐな離れは、実現できません。
②筈は人差し指と親指の間の凹部分に置くこと。
- 人差し指の凸部に置くと、人差し指の第一関節凸部が矢に当らず、矢口が開きます。矢こぼれしている人は、この位置が良くない場合がほとんどです。矢を前側に落ちないように保持しているのは、人差し指の第一関節凸部を矢に当てる他には、何も無いのです。
- 人差し指をわざと伸ばして、矢を押さえている人を見かけますが、弓力が弱いからできる射癖であって、まったく不必要だし、実に不恰好です。篦じないの原因にもなります。
- また、人差し指と親指の間の凹部分に置くことは、矢を親指に近づけることで、矢をカケ解きの捻りの中心近く置くためでもあります。
- しかし、カケ帽子と矢は、矢一本分程度のクリアランスを空けておかないと、離れで親指が当たって、ブレが出ることになります。
③中指の第一関節の真下か前でカケ帽子を押さえること。
- 中指の第一関節より後ろに置くと、親指が離れで、第一関節の膨らみにひっかかり、離れが鈍くなります。
- そして、人差し指は中指に添えるようにしてください。弓力が強くなると、人差し指のサポートが必要になります。
④中指と親指はほぼ平行に近づく様に薄くすること。
- 暴発を防ぐためには、引き分けでは親指を中指で覆うように押さえますが、会では中指で親指を前下に押し出す様にして、3つの指を薄く絞ることで、取り懸けが解けやすくなります。これにより軽妙な離れが生まれるのです。
- 離れの瞬間、弦は3つの指の間をすり抜けて出ていくので、指は真っ直ぐに近くなければ、弦に当たり、ブレの原因になります。
⑤親指を中心に弦を捻ること。(弦捻り)
(人差し指で矢を巻き込む様にするイメージ。箆(の)じないにはなりません)
- 弦捻りは、引分けでは、弦を弦枕に密着させて暴発を防ぎます。
- 会では、カケ帽子を起こし、取り懸けを解く作用となります。
- 手首に力が入らないように、肘から先の腕全体で捻ることで、肘から手先までが鞭のようにしなやかになり、離れの際のブレがなくなるのです。
⑥取り懸けが解けるまで、カケ帽子を中指で押すように力の方向を変えつつ(重要)、捻りと肘の張りをゆっくりと膨らませ続けること。
- 会では、両肘の張りに合わせて、中指で親指の腹を前に押し出すように(親指の上を滑らせるように)します。
- これが、引き分けの時の暴発を防ぐためのロックを外し、離れに導くために重要な、目に見えない動作となります。
- 力を加えるのではなく、ただ方向を変えるだけでいいのです。
これで始めて、離れへのスタートラインに立てたことになります。弦捻りと肘の張りは、離れるまで続けます。
NHKのアスリートの魂で特集された増渕先生の動画が、youtubeで公開されていて、ためになるので、ぜひ見て実践してください。
ただし、取り懸けの形(勝手の手の内)は流派(カケの形)によって異なるので、注意しましょう。
取り懸けの形(勝手の手の内)を整えることで、射形、離れ、残身は整ってきます。
押し手の手の内よりも、優先すべきだと思います。
<参考>
次回は、的中についてを予定します。
的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしております。
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。