その大規模な養豚場の廃墟は根釧国道を走っていて見つけた。規模が大きすぎて全体像を捉える写真を撮ることができなかった。
豚を飼っているので、柵が全体的に低い。経過した時間が長いため、牧場特有の臭い(酪酸臭等)などは一切しなかった。
まるで爆撃を受けた後のような、惨い崩壊ぶりだ。雪の重さで、廃墟の倒壊スピードはかなり速い。
事務所跡。従業員のくつろぎスペースだったのだろう。お茶を飲みながら同僚と世間話をしていた姿が目に浮かぶようだ。
4号豚舎。「号」ではなく、旧字体の「號」が時代を物語る。
伝染病の蔓延に気を使うのは今も昔も変わらない。豚の体温は人間とほぼ同じため、病原菌の感染もしやすく、気をつけなければならない。最近、豚インフルエンザなどが話題になったのも同じ理由だ。
「一点透視図法」というのを昔、学校の美術で習っていたような気がする。
サイロ。えさのとうもろこしでも入っていたのだろう。
崩壊した建物。
天井。重い雪を支えられるようにトラス構造だ。
崩壊した屋根と、太陽の光が生み出した異次元空間。
円筒形の豚舎もあった。こちらの建築年代は比較的新しいようだ。
天井がまばらに残り不思議な風合いを出している。まるで墜落した宇宙船を内側から見ているようだ。
青空には巻雲がわずかだけ出ていた。
獣魂碑。きっと年に数回は慰霊祭も行われていたのだろう。おいしい肉が食べられるのも、命を失ってくれる生き物がいてくれるおかげ。冥福と感謝の念を抱いて、そっと手を合わせた。
従業員の宿舎らしき建物の近くには、子供の遊具がそのまま放置されていた。
さようなら。またいつか。