2103 :MEMSマイク 単一指向性への進化 その1 | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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 Memsマイクは現在のところすべて「無指向性のみ」という「片肺飛行」を続けてきました。

しかし単体マイクへの採用を考える段階で、「単一指向性」が求められるのは必然的です。

それは元々の目的からはやや異なりますが、「マイクロホンとして生まれた者の運命」です。

 

(マイクアレーやソフト的処理以外では2016年公開のプリモによる「単一指向性Mems」の特許をはじめ、Memsで単一指向性を得るさまざまな議論や研究が確認されます)

 

 

 私はMemsマイクを扱い始めてまだ6年、自分の試作では「Two leaf Mems 」という方式を公表してきました、しかしこれは「耳たぶ効果」という程度、耳に手をかざしたような弱い指向性でした。

 

このTwo laf Memsというアイテムの中でMemsマイク特有の「無指向性マイクの指向性」という矛盾した問題にあらためて気づき、Memsマイクのそれは常識や見た目とは必ずしも一致しないことを知りました。

 

ハート「単一指向性」は必ず実現する!という希望的妄想が現実に・・・

 

 「無指向性マイクの指向性」をカギとして「単一指向性」への道が開けました。

 つまり音穴方向と90度ズレた図面上短辺方向の感度と音質がより優れている事が分かり、それを指向性形成の「原点」としました。

 

 この事がきっかけになり音穴に直角な「軸方向単一指向性」マイク」がスムーズに考察できたわけです。

 

その実現結果は「小さなものをわざわざデカくする」大がかりなマイクアレーではなく、ソフト処理でもなく、Memsマイクの「アナログ的なふるまいによる単一指向性」を求め「これならイケる」という方式にたどりつきました。

それはレガシーで、教科書的なものであり、法則的に自然な帰結でもあります。

 それは2つのMemsマイクの動作を「一般の単一指向性マイクのダイアフラム裏・表」として置換します。

2つ配置したMemsマイクの位相差、レベル差、音速に委ねるアナログの原点回帰です。

 

カプセルに相当する2個のMemsマイク部はきわめて小さい。

 

指向性としては広い帯域にわたって180度特性はフロント比約10dBと、

ちょうどShureのガイコツマイク(55SHⅡ)に似た指向特性といえば想像がつくと思います。

 

 

この最大の特徴は、内部はとんでもない「ミニチュアマイク」でありながら、ドッシリとしたワイドレンジな音のマイクですので近接効果だけに頼ることなくガッツりと収音できます。

BETA58Aの空き家を住まいにしてみました。

「外観」とは不思議な力を持ち、手づくりマイクであることを忘れさせます。つまり外筐を含めた最終形状こそが「マイクロホン」といえるのです。

 

 

(今回Memsマイクで単一指向性を得た方法)

フロントに対する「正の音圧」に対してほぼ裏側位置からの逆相信号をMixすることで背面感度を「位相干渉」(加減算・遅延信号)によって減衰させ、正面側に指向性を得るという指向性方式は「音圧傾度型」です。

 

これを2個の無指向性マイクで実現するために、逆相信号、音速による遅延成分、これをベクトル上で合成したポーラパターンによって「単一指向性」を得ています。

私はこれを「仮想圧力傾度型」(仮称)と名付けました。

 

「仮想音圧傾度型」(仮称)は「音圧傾度型」の概念を使い、2個のMemsマイクで後ろ側を逆相にすることにより、ベクトル合成の結果、指向性を得る方法をそう呼ぶことにしました。

両指向性をベースにして単一指向性に至るそのふるまいは確かなものであります。

 

 

この方式の概念図

A :後ろからの信号レベルが最小になるように*2 (VR1)を調整する。

フロント音質と指向特性のバランス点で調整完了とする。

 

B :Memsの位置だけで最良点が見つけVR1は不要。

 

 

バラックモデル実験

バラックモデルで動作確認を十分おこなって指向性感覚を習得しておく。

ケースに収納した完成状態はバラックモデルよりはるかに良好な指向特性を示してくれます。

 

正面側にICS-40730、背面側に40740を採用しています、これは正面側のワイドレンジさを生かし、「速度成分取り込み」としての裏側は実験の結果後ろ側にサイズの小さいもので最適化しました。

 

 

全周(360度)にて位相干渉させ減算方向へは感度は減少し、トータルのポーラー・パターンで「単一指向性」を得ています。

フロントとバックの180度比は干渉パターンで決まりますが、この場合で正面音質の良さにこだわり、180度比は10dB程度となりました。

 

干渉比を大きくとり、前後比をそれ以上にすることも可能です。

しかしその場合低域特性が大きく制限され、f特上のピーク・ディップ(急峻な上昇点、下降点)と音質変化が生じますので、この合成はデリケートです。

また「音圧傾度型」は2次・3次と高次になるほど挟角度となります。

 

(今回の回路図)

この回路、簡単なのでつい使ってしまいますが、遠距離向きではありません。

5~60m以上、500m未満 延長する場合は「LZ-Ⅱb」の回路に置き換えてください。

 

Memsを差動で利用することが望ましいですが、今回は指向性方式の実用性にテーマをおきましたので、Memsの片出力を使いました。差動出力の場合、6dBレベルアップします。

 

とにもかくにも仮想であれ単一指向性の本流方式である「圧力傾度」方式が実現できたのはありがたく、支えてくださった皆様に感謝です。

 

ビックリマークMemsマイクは一般的手順の手半田付けでは必ず破壊します。

「プレヒート」=一定の予熱処理により安定した手半田が可能になります。  https://ameblo.jp/shin-aiai/entry-12574034452.html?frm=theme

 

      続く

 

 

おしらせ

fetⅡ、fetⅡi、fet3、LZⅡb  など、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わせください (いまや貴重品、秋月のパナソニック WM-61Aとオリジナル・パーツで製作します)

ProbeⅡ(Mems)マイクも同様にリリースしています。

 

モノ作り日本もっと元気出せ 

 

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