【ご注意】
★情報はどんどん発信していきます。ご覧いただき、アレンジも良し、パクリもOKです。
ただし記事から得た情報の利用公開については出典・引用をあきらかに、管理人の指示に従ってください。
※ このマイク「ProbeⅡ 」はご注文による製作領布を承ります
長らくお待たせしました。
今回使用したのはMemsマイクのトップクラスであるInvensense「ICS-40730」、その能力は1年前の記事でご紹介しました。
Memsマイクを単なる「サウンドセンサー」から世界レベルの「高性能マイクロホン」へと昇華させることを第一目標としました。
「手作り臭さ」の排除と「Mems離れ」した高品位コンデンサマイク音を最大課題としたプロジェクトです。
記事最後のほうでYOUTUBE音源を案内しています。
似た形状の高級海外製品とはまったく次元の異なることが一瞬でおわかりになるでしょう。
測定用マイクロホンによく似た形状でまとまりました、トップメッシュの膨らみも音響的特徴です。
ホルダーはK&M MH4がジャストフィットします。
使用したICS-40730はややぶ厚い形状をしたMemsマイクです。
Memsマイクは現在でも一般的には低域100Hzまでが普通であるなか、ICS-40730は-3dBポイントが15Hz以下、-10dBポイントはほぼDCと、ブッチギリの周波数特性を持つ「DCバイアス型」コンデンサマイクです。
SN比はMemsマイクとして、世界最高値である74dBと、他のスペックを含め、周波数特性だけ見ればこれと同等のMemsマイクはこれまでの私の調査と試作の中で、高耐音圧・超ワイドレンジのICS-40300のみですがSN比が低いため決して40730の「高品位」には及ばない。
筆者が調査したかぎり、ICS-40730は現在において世界最高のMEMSマイクです。
(入手について)
このMemsマイクの入手法はMOUSERやDigikeyなどによるUSAからの輸入以外にはありません。
(10個未満では@340~370円位、個数・レートにより変動します)
「1個買い」はたいへん危険で無意味です、 「破壊」を見込んでかならず余分に購入してください。
マイク自作の経験者でもInvensenseのMEMSをはじめて手にするなら最低10個は必要でしょう。
国内には一切ありません、くれぐれも秋葉原や日本橋、大須をムダに歩き回って探さないでください。amazonにもありません。
そこにあるのは他メーカー旧世代の廃棄品同等、低次元なMemsマイク(ICマイク)が「シリコンマイク」として売られているだけです。
海外高級マイクと勝負できるその音
その音はShinさんオリジナルのFetⅡなど「ファンタム式パナ改マイク」=WM-61A(改)とよく似ており、さらに低・高域を伸ばした優れた特性のマイクとして仕上がりました。
SN比、ダイナミックレンジともにそれより10dB以上優れています。
WM-61Aの自作に慣れた方がICS-40730の音にはじめて触れたとき、「自作新時代」を強く感ずることになるでしょう。
高域は40KHZ程度まで伸びています。
驚くのは、DPA 4006AやSCHOPES、Erth Works、といった海外高級マイクと遜色ない録音結果を得る自作マイクとなりました、どうぞご自身の手で実際に比較してみてください。
自作、それは加工途中ごと試聴することナシに完成することはなし得ません。
リード線半田付→試聴、 メッシュ包み・パイプ通し→試聴、 脱脂綿による管鳴き処理→試聴
(これを省いてマイク作りは成り立ちません)
Wao!(圧倒的なSN比とダイナミックレンジそして超ワイドレンジ)
ICS-40730のSN比74dBという特性はWM-61Aの「62dB以上」より何と10dB以上優れた74dB以上。
あまりにもSN比が高くキツネにつままれたように「サー・ノイズ」は聴こえません、ダイナミックレンジの大きいことにも一瞬「エッ」と驚き、「別物!」と感じるのが正直な印象です。
「ProbeⅡ」の完成
はじめまして「ProbeⅡ」です。
機種名は外観形状から「ProbeⅡ」としました、それは幻の「Probe1」 がかつて存在したからです。
もっとも「FetⅡ」や「LZⅡb」など、「Ⅱ 」はShinが自信をもってお薦めできるハンドメイドマイクに付けられる暗黙の記号のようになっています。
「マイクロホンは美しくなければならない」が私の持論です。
美しい音は美しいかたちを求めます。
そして「美しいマイクロホンは美しい音に同調する」という事実を経験上身に着けてきました。「オカルト」とは言い切れないマイクロホンや楽器の鉄則であり物理的には説明不可能、でもこれは事実です。
先端部6Φ、長さ45mmのロングノーズにより絶品の「音場型」無指向特性を得ています。
先端ノーズ長はロングからショートまで試すなか45mmと決めました。
これはさらなるロングノーズも魅力的ですが、ここでは取扱いやすい45mmとした次第です。
ステンレスパイプを「パイプカッター」で切断するだけですから使用目的や好みによって自由にできるのがいいですね。
メッシュ密度の違い(メッシュ40~メッシュ100)
フロントメッシュに求めたのは次の3つの目的です。
①マイクロホンとしての完成形、 ②Memsデバイスの固定と保護、③ウィンドスクリーン効果、
ここで注意したいのは「音質に変化を起こさせないこと」です。
そのバランスからメッシュサイズを決めました。また加工のしやすさや、ICS-40730の電極をショートさせない構造を作り出すため最終的に「メッシュ60」を選びました。
ステンレスメッシュの絞り加工詳細は過去記事をご参考ください。
(あれっMemsマイクと開口面の方向が変?)
Memsマイクは長方形立体物ですので音穴は裏面またはおもて面にあります、この形状をパイプに仕込んだら音穴はパイプに沈んでしまい、開口面には向きません。
音穴と開口面とは90度ずれていますが、Memsマイクでの検証は6年前から続けてきました。
理論的には30年以上昔にサンケンとNHK技研が「COS-11」の開発のなかで音の進入路を90度曲げる方法を完成させています。
これはICS-40720、740、INMP-411(ADPM-411)使用のマイクで採用しましたが、今回の音響設計では音穴の半分を顔出させる方法でそのハードルを下げて容易かつさらにクセのない高品位な音を実現しています。
結果、出力レベルをUPしながらハイエンドピークを避け芯のある、より実態感の強い超ワイドレンジ(20~30000Hz以上)な音を得ています。
ちなみに音穴を正面に向けると可聴域のエネルギー感が減少し、20000Hz付近が急上昇します。
(ケース材料)
こんな仕掛けです
1. CLASSIC PRO AXP-221
2. 6φステンレスパイプ(t= 0.2mm必須)お気をつけください
CLACIC PRO AXP221内部のジャック構造を壊しながらリード線穴を開けて通します。
この材料はのちに秋葉原「コヌマ」の製品(91M602)を使用し外観をバージョンアップしています。
秋葉原「コヌマ」の製品 91M-602(左)、右はクラシックプロ AXP-221
ProbeⅡ 先端部実装構造
※パイプ鳴き防止の「音響抵抗」(rm)となる素材はアクリル綿など化学綿は厳禁、この「音響回路」を完成させるには自然素材である「綿」(脱脂綿)であることが必須、小さな塊にして丸め、「これ以上入らない」くらいの密充填が必要、それは想像を超える量になります。
完成した先端部(音声試聴チェックはかかさずに)
① ICS-40730を両面テープで机に張りつけ、ヒートガン又はドライヤーで100℃1分間熱する(プレヒート)
② 電極にクリーム半田を乗せ、リード線の半田付けをおこなう。
③使用線材:AWG32。 GND用ホルマル線(エナメル線)0.1mm 2本どり、というように極細線を使用。
リード線は色分けして接続電極を絶対に間違えないこと、リード線長は200mmと、かなり長く必要です。
④AXP-221側とステンレスパイプ間の導通を確認し、2液性エポキシ接着剤で両者を固定する、その時Memsの音穴位置を上の構造図のとおりにする。
⑤材料であるClasic pro AXP-221 Phone~XLR変換アダプタ先端部はリード線穴を開けるためにあらかじめ内部金属破片をバラしてはずしておく。
注意
下記のデリケートな取扱いに自信のない方は製作をやめてください。
「プレヒート」を省略するとMemsマイクICS-40730は簡単に破壊します。
誤配線でMemsマイクは簡単に破壊します
ブレッドボード試作中、ちょっとした誤接触・接触不良→復旧、Memsは一瞬で破壊します
(ブレッドボードを使った試作そのものがMEMSマイクには向いていない気がします)
リード線を付けたMemsマイクは作業の区切り区切りで音出し試験を行いながら進める必要があります。
「おなじようなもの」を作っても失敗します、特にパイプ径が太くなれば「管鳴き条件」は一層厳しいものになり、可聴周波数を見事に汚してくれます、
「全部完成してから音を確認する」という方法は絶対にいけません、必ず失敗します。
マイク作りは「聴きながら作る」が鉄則です。
上記注意事項は筆者が一昨年秋から現在までにInvensenseのMemsマイクを使った開発をおこなってきたなかで得られた結果です。
各種30個近いMemsマイクを破壊させてまいりました。
原因は複数ありますが、とりわけデリケートなこのデバイスの取り扱い方は自分のノウハウとして蓄積されたと思います。
これは「未踏領域」を制覇する「授業料」と考えます、すなわちこのマイクを開発するためには最初から最低40個のICS-40730が必要だったわけで、これまでにテキサス州の拠点からICS-40730のためにだけ3便のUPSが到着しました。
途中、2019年よりメーカー(Invensense社)とも複数回コンタクトをとっております。
聴感上の違和感から発見した「OUTPUT極性表示誤り」を位相試験で検証して指摘しました。
ネットでは2021年1月現在「正誤混在状態」にあります。
(これは「TDK Invensense」のデータシートが正しく、「Invensenseのpdf」は誤りです)
正しいのはこちらです
DS-000139-ICS-40730-v1.1.pdf (invensense.wpenginepowered.com)
!くれぐれも混乱しないよう強く警告します。
Memsマイクと成型したステンレスメッシュをパイプの反対側まで導く
半田付け箇所にストレスを与えないよう「竹串」を使ってパイプ内に送り込む。
これには「メッシュ絞り成型」を十分マスターしておく必要があります。
(この作業前と後には当然Memsマイクの試聴は十分におこなう)
メッシュ先端は必ず3mm突き出し、音響条件を決定する。
ステンレスパイプとメッシュとの間は2液性エポキシ接着剤を流す。この際、音穴にかかる部分には接着剤がかからないようにする。(音の変化を避けるため)
パイプ内には「竹串」を使って脱脂綿をめいっぱい詰めて不要な「固有鳴き」を防ぐ。
その脱脂綿の量はたった6Φ 70mmのパイプとは思えないほど大量になりました。
これを省いた場合、まず使い物にならないでしょう。
(ここでも常に試聴はかかさない)
(ProbeⅡ 回路図)
おなじみShinさん回路です、10年以上の実績の中どんな高級回路にも負けたことがありません。
ICS-40730ではMEMSのバランス使用(差動接続)とアンバランス使用(Single接続)が可能です。
ただし差動出力型のMEMSマイクは片出力(シングル)で使う方が「単独マイク」目的にはあらゆるファクターが優れています。その場合、使用しない逆相側はオープンのままにします。
(実際にMEMSマイクメーカーのデーターシートで確認できます、常識が正しいとは限りません)
バランス使用(差動接続)の回路(こちらはおすすめしません)
ICS-40730の使い方はバランス使用(差動接続)、アンバランス使用(Single接続)どちらでも構いませんが、どちらかといえばスペックが僅か上位になるSingle接続の方をおすすめします。
※ICS-40730のOUTPUT極性には十分ご注意ください。
ネットでは現在整理されつつありますが「正誤混在状態」にあり、誤った旧データシートをそのまま信じると「逆相マイク」になりますのでくれぐれもご注意ください。
筆者の指摘により訂正されたTDK発表のデータシートが正しいです。
(TDKで訂正された正しいデータシート)
(Webにまだ残っている誤った旧データシートの例)
http://www.farnell.com/datasheets/2632669.pdf
(「ProbeⅡ」はじめての屋外録音の様子)
さっそく道路に出て車両通行音を録音(Zoom H6、ウィンドスクリーンはとりあえずナシで)
(ウィンドスクリーン)
屋外ではやはりスクリーンメッシュだけの効果では吹かれます。
簡単でよいのでウィンドスクリーンは必須です
ウィンドスクリーンは内径3~5mmのものが適合します。
(録音音源)
◎このときの録音音源があります、お聴きください。
(地響きのような低音域では風のゆらぎのような超低周波振動まで感じられます)
かならずヘッドホンで大きめの音量、良質なオーディオインターフェースをお使いください。
(ヘッドホンでもPC直挿しでは判断不可能です)
くれぐれも・・・
MemsマイクはIC回路と機械構造の超精密合体部品です。
一般的手順の手半田付けでは破壊または内部で「局所変位」します。(自分の場合、「0.2秒半田付け」だけで済ませたマイクも1か月後には「バリバリ音」だけのマイクになっていたものや、半田付け直後にすでに破壊が起こっているものがありました)
逆に言えば、「半田付け」だけでここまで壊れまくるデバイスも珍しいと思います。
「プレヒート」=一定の予熱処理により安定した手半田付けが可能となり確立できたのは凄惨な事実から這い上がることができた貴重なレシピです。
https://ameblo.jp/shin-aiai/entry-12574034452.html?frm=theme
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以上
※ このマイク「ProbeⅡ 」はご注文による製作領布を承ります
おしらせ
fetⅡ、fetⅡi、fet3、LZⅡb など、ご注文により人気機種の製作を承っておりますのでお問い合わせください (いまや貴重品、秋月のパナソニック WM-61Aとオリジナル・パーツで製作します)
FetⅡmems、およびProbeⅡ(Mems)マイク使用も同様にリリースしています。
モノ作り日本もっと元気出せ!
【おことわり】
★ここで公開している回路・写真・説明文などは音響家の方、アマチュアの方でハンドメイドまたは試験評価なさる場合の参考として考えております。
★製作物・加工物の性能・機能・安全性などはあくまでも製作される方の責任に帰し、当方(Shin)ではその一切を負いかねます。
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★情報はどんどん発信していきます。ご覧いただき、アレンジも良し、パクリも結構です、その場合、出典をあきらかに願います。
Shinさん独特のこだわりと非常識を以て音響の世界を刺激してまいります。
ShinさんのPA工作室 管理人 Shin
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