自分を把握する力(メタ認知)を呼び起こす
Non-Identification(非同一化) についてもう少し詳しく考えてみましょう。これには、メタ認知が関係します。メタ認知というのは、自分の知識や感情を把握することで、人にしかない新しい脳の働きです。人はこの能力のおかげで、自分自身をみつめることができ、それにより他人の心を類推することができるようになります。また、自分の言動が環境や相手に与える影響を考えることができます。そして、メタ認知が十分に働いているときは、心は落ち着いていて冷静な状態になっています。この能力は、より良い人生を送るのにとても重要な能力ですが、偏桃体が優位になっていると能力が低下します。メタ認知自分をコントロールするためには、しっかりと把握できる必要があります。そのために、人はメタ認知という仕組みを持っています。メタ認知が働いている時、以下のようなことが把握できています。 何をどのように感じているのか? 何を考えているのか? 何をしようとしているのか? 何をしているのか? 何を知っているのか?その確からしさはどうか? 自分の言動がどのような結果に向かっているのか?メタ認知は理性的な新しい脳の働きなので、これが働いている時は偏桃体はおとなしくしています。逆に偏桃体が優位な状態になるとメタ認知は上手く働きません。扁桃体優位なとき、感情に振り回されたり、考えを追うことに気持ちが向きすぎて、建設的に考えられていないことに気づけなくなります。その良い例が、ぐるぐる思考です。自分が考えていることが良い結果につながるかどうか関係なく、不満や不安について考え続けてしまいます。そして、人の気持ちや都合には気が回らず、状況もよく把握できなくなっています。偏桃体が優位になり、メタ認知の機能が落ちているのです。メタ認知を働かせるメタ認知が働いている時は、自分を映画やドキュメンタリーの主人公のように見ることができます。もしくは肉体な感情反応をする自分とは別に、それを監視し操作する自分を感じられるかもしれません。例えば、困難な状況におちいって、緊張で首や肩に力が入ったり呼吸が浅くなっているそんな自分を一歩引いたもう一人の自分が観察できます。このようにメタ認知が働きだすと、湧き上がった感情や恐れ、緊張などはしばらくすると消えていきます。前頭前野が優位になり、扁桃体が鎮まってくるからです。RAINで Non-Identification(非同一化) というのは、メタ認知を使おうとすることで、前頭前野を働くようにし、偏桃体の活動をおさる効果があるのだと思います。メタ認知を働かせる色々な瞑想マインドフルネスのエクササイズにはいろいろなものがありますが、すべて自分を細かく観察する要素が含まれます。 何を感じているか? 何が聞こえているか? 何を嗅いでいるか? 何を味わっているか? 何を考えているか? どう動いているか?このようなことを細かく観察します。このようなエクササイズが沢山用意されているのは、自分を観察し続けるというのは難しいことで、かつ心にとって重要だということだと思います。だから、そのトレーニング方法が色々と用意されているのです。一人の時間を作ってやるエクササイズには、主なものとして以下のようなものがあります。 レーズン・エクササイズ (干しブドウをゆっくり食べながら、匂い、触感、噛んだ感じ、自分の咀嚼のしかなどを観察) ボディースキャン (横になり、手足の先からパーツごとに何を感じているか観察) 呼吸瞑想 (座禅のこと。空気が鼻を通る感じ、お腹の動き、頭に浮かぶ考えなどを観察) 歩く瞑想 (ゆっくり歩きながら、重心の移動、足への力のかかり方などを観察)外出中などにできるエクササイズとしては、以下のようなものもあります。 聞こえているものと5つ同時に観察する 自分の感じていること5つ同時に観察する 食事を細かく観察しながらとる 頭に浮かぶ考えにラベリングする 自分の感情の変化を観察し続けるこれにより、メタ認知の仕組みを刺激すると、心の冷静さが戻ってきます参考文献※ACTはマインドフルネスを基にしたセルフ・セラピーです。今日からはじめるマインドフルネス: 心と身体を調える8週間プログラムAmazon(アマゾン)1,800〜6,990円よくわかるACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー) 明日からつかえるACT入門Amazon(アマゾン)2,814〜7,656円