「暑さ寒さも彼岸まで」というが、今年のコロナ禍での猛暑もお彼岸を迎えた途端に終息してしまった。毎年、この時期に私が歌う曲は「I'll Remember You」、と聞いて「知ってる知ってる、あの有名なジャズ•スタンダードでしょ?」と思った人は勘違いである。それはおそらく「I Remember You」(1941年)という全く違う曲だ。
私が晩夏に歌うのはwillが入った未来形で、ハワイのシンガー•ソング•ライター、クイ•リーが1965年に作った曲。ジャズ•スタンダードの黒本、赤本、青本は勿論、「永遠のポップス」にも載っていない。“ハワイのシナトラ”ことドン・ホーのヒット曲なのでハワイアン曲集には載っていたりするが、この曲はハワイアンかどうか?
私が知ったのは1973年1月の歴史的な衛星生中継「アロハ•フロム•ハワイ」でエルビス・プレスリーが歌ってからである。何が歴史的かって、世界約40ヵ国で10億人以上が視聴した、最初にして最大かつ最後の衛星生中継音楽番組だからだ。インターネットが普及しオンデマンド配信が可能となった今では考えられない。
プレスリーは生涯、アメリカとカナダ以外で公演をしなかったが、来日公演要請に応えての生中継だったので日本のゴールデンタイムに合わせ19時半(ハワイ現地時刻0時半)開始で37%超の高視聴率を記録したという。当時まだ高校生だった私も、TV放映時の高揚感はしっかり覚えている。
1973年のこのイベントで22曲を歌ったプレスリーは当時38歳。もう50年代の“キング•オブ•ロックンロール”時代の思春期の若者ではなかった。映画出演に明け暮れた60年代を経てステージへのカムバックを果たし、父親にもなり、押しも押されぬエンターテナーとしてスロウバラッドなど大人の歌を中心に歌っていた。
この曲を私がこの時期に歌うのは、その歌詞ゆえ。「I’ll remember you long after this endless summer is gone/この終わりなき夏が過ぎ去ってからもずっと君を想い出すだろう 」って、過ぎ去ってしまう(gone)なら、それはそもそも終わりなき夏(endless summer)じゃないじゃん!と突っ込みたくなるけれど…。*1
「I’ll be lonely oh so lonely living only to remember you/私は独り寂しく貴方との想い出の中だけに生き」「I’ll remember you your voice as soft as a warm summer breeze/夏の風の様に暖かい貴方の声と」「your sweet laughter mornings after ever after I’ll remember you/甘い笑顔で始まる朝を今も思い出す」と続く。*1
そして最後に「You’ll remember too/貴方も想い出すはず」で終わるこの詞は、常夏の島ハワイでまさに終わりなき夏を過ごす愛する人の笑顔のように美しく、儚い。「アロハ•フロム•ハワイ」放映時、プリシラ夫人との離婚調停中だったというプレスリー(彼はこの4年後に亡くなるのだが)の哀愁を帯びた歌声が切ない。*1
この曲を持ち歌にしていたプレスリーは、「アロハ•フロム•ハワイ」をチャリティ•イベントとし、7年前34歳の若さで急逝したクイ•リーの没後に創設された癌基金に収益を寄付している。今も様々な人々が歌い継ぐことで彼は思い出され、彼がテラスで微笑んでいるendless summerは永遠に終わらない気がする。
*1:日本語詞は私の「なんちゃって」和訳
♪I’ll Remember You 2001年3月25日・大塚「Greco」でのヴォーカルセッションにて♪
Saigottimo















