コロナ禍で猛暑日が続いて気付いたら9月、もう夏が終わろうとしている。4月以降は歌も朗読も自粛しているので、今年は夏の歌を歌わないまま終わりそうだ。最近でこそ「夏」といえばボサノヴァが主流だが“スタンダード・ヴォーカリスト”の私は「海」をテーマにハワイアン等様々なジャンルのスタンダード(古い曲)を歌ってきた。
1946年のシャルル・トレネの代表曲で「海」という意味のシャンソン「ラ・メール」もその一つ。英語詞では「ビヨンド・ザ・シー(Beyond The Sea)」としてボビー・ダーリンが1960年に全米6位のヒットにしている。彼は37歳で夭折したジャズ界のエンターテナーであり、彼の半生を描いた自伝映画のタイトルにもなっている。
若い方々は同じボビーでも90年代にクルマのCMで流れたAOR(アダルト・コンテンポラリー)の旗手、ボビー・コールドウェル盤の方がお耳馴染みがあるだろう。また2003年にディズニー映画「ファインディング・ニモ」のエンディング・テーマにもなった(歌:イギリスのロビー・ウィリアムズ)ので、英語版は子供達にもよく知られている。
【左上:ボビー・ダーリン、右上:ボビー・コールドウェル】
【下:映画「ファインディング・ニモ」のWebリボン】
この曲は古くから日本でも親しまれており、菅美沙緒さんの日本語訳詞も一般に普及している。以前にこのブログでスペイン語の「キエンセラ(Quien Sera)」が英訳詞の「スウェイ(Sway)」になると別の曲のようだと述べたが、この曲も原語のフランス語詞、訳詞の英語、日本語でそれぞれ味わいが全く異なってくるから面白い。
そこで「一回、全部試したろうか」と思い、1コーラス目をフランス語でルバート(テンポのない語り調)、2コーラス目を日本語でビギン(ツタータ、ツタツタ、というリズム)、3コーラス目を英語でスイング(4beat)で歌ったことがある。2006年10月12日(木)、四谷三丁目・Bobby'sでの根市タカオさん(b)主催のセッションでのことだ。
日本語をビギンで歌おうと思ったのは、母親が晩年(といっても51歳で早逝したので40代後半だが)自宅に先生に来てもらってエレクトーンを習っていた時期があり、この曲をビギンのリズムで弾いていた記憶があったのと、改めて日本語の訳詞を見ると何となくビギンのリズムが合うように感じたからでもある。
●1コーラス目はシャルル・トレネのオリジナル風に、ナンチャッテ(カタカナ)フランス語をルバートで、
「ラメール、コンファドゥンシー、ルローン、デゴール、フォクレール、アデガフレーム、ダッハジョーン、ラメール…」
●2コーラス目はビギンのリズムに日本語訳詞をのせて、
「ラメール、なーつの日~、波~は踊る~、光の~影、ラメール…」
●3コーラス目はJack Lawrenceの英語詞をスイングで、
「Somewhere beyond the sea Somewhere waiting for me…」
3か国語の歌詞を暗記し頭をフル回転させながら歌い終わると、根市さんが「ようやく3コーラス目で調子が出てきたね」と笑い、ヴォーカル仲間で大先輩の稲葉さんも笑顔で「あんた、なーんかスゴイことやったねー」と感心してくれた。で、結論としては、やっぱりジャズバンドの伴奏で歌うなら「英語&スイング」かな、という事だった。
「ラ・メール」には「母」という意味もある。カタカナで書くと同じだが、フランス語のスペルは微妙に違い、海は(La Mer)母は(La Mere)だ。ラテン語で海は(Mare)だからきっと語源は一緒で“全ての生命の源”つまり「母なる海」ということなのだろう。なので私は”母の日”に因んで5月に歌う事もあるが、残念ながら今年はもう歌えない。
Saigottimo

