「こんにちは」の謎 | 特許翻訳 A to Z

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1992年5月から、フリーランスで特許翻訳者をしています。

「こんにちは」という挨拶を、フランス語で bonjour と言います。「こんばんは」は bonsoirです。

どちらも挨拶としては一語だとはいえ、分解すると bon は「良い」を意味する形容詞、jour は「日」を意味する男性名詞の単数形、sour は「晩」を意味する男性名詞の単数形です。

 

フランス語の形容詞は、関係する名詞と文法上の性・数が同じになるため、女性名詞との組み合わせになるとbonbonne になりますが、joursoir に結合した bonの性・数は通常の語法どおりです。


一方、イタリア語で「こんにちは」はbuon giorno、「こんばんは」は buona sera

giornoは男性名詞の単数形で「日」、seraは女性名詞の単数形で「晩」。

「良い」という意味の形容詞buonoが後ろに続く名詞の性と数に一致して変化しているだけで、語としての構成はフランス語と同じですね。

 

英語でも、good morning/afternoongood eveningは、いずれも形容詞goodに単数名詞が続きます。

 

日本語の「こんにちは」が、今ここにある「日」、「こんばんは」が今ここにある「晩」だというのと似たような感覚で、「日」と「晩」がそのまま挨拶になっていますよね。

 

ところが・・・・

スペイン語で buenos díasbuenas nochesになると、なぜかdia(日)やnoche(晩)が複数形に。

朝と午後をあまり区別しない仏・伊とは違って午後のbuenas tardes もありますが、やはり複数形です。

名詞の性と数に応じて、ちゃんと形容詞も変化していますし。

 

フランス語やイタリア語と同じラテン語系の言語なのに、なぜスペイン語では複数?

 

この差がとても不思議で、先日スペイン語を話す友人に会ったときに単数で言うことはないのか確認したところ、buenos díasだけは bueno díaと単数で使われることもないわけではないようです。

ただ、ないわけではないというだけで普通は複数、そして残りについてはすべて常に複数で、単数形の表現を挨拶で使うことはないとのことでした。

 

挨拶は、そういうものとして「ひとまとまり」で覚えるため、普通、名詞の単複など考えないと思います。

 

でも、よくよく考えてみると、なぜスペイン語では「日」「晩」を複数にして挨拶をかわすようになったのか、理由を知りたくなりませんか(ならない?笑)。

 

ラテン系言語で、ラテン語それ自体に最も近いのがイタリア語、最も遠いのがフランス語だそうですから、ますます中間に位置するスペイン語が挨拶で複数形をとる理由が知りたい・・・・。

まずは、どこを調べると答えが出そうか?を突き止めるところからですね。