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皆さん「尿素(にょうそ)」ってご存知ですか?
よく「手荒れには尿素!」という感じで紹介されることがある、
保湿効果の高い成分として知られていますね。
ハンドクリーム等として愛用している人も多いのではないでしょうか。
しかし、実は尿素配合のクリームは使い方を誤るとかえって手荒れを悪化させる原因になることがあります…。
今日はこの「尿素」という成分について、
その成分特性に伴う注意点と、正しい使い方についてお話していきます。
◎「尿素」配合製品の特徴
「尿素」という成分は単なる化粧品の成分ではなく、
以下の商品のように「指定医薬部外品」や「医薬品」の有効成分として採用されています。
資生堂さんの「尿素10%クリーム」は有名な製品ですね。
こちらのアイテムは「指定医薬部外品」…(かつては医薬品だったけど後に医薬部外品に移った製品)で、
尿素、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸ジカリウムの3つの成分を有効成分として配合しているクリームです。
尿素は角質柔軟効果と保湿効果の有効成分。
酢酸トコフェロールは血行促進作用の成分。
グリチルリチン酸ジカリウムは抗炎症成分。
つまりこの尿素クリームは尿素だけでなく色々他にも有効成分が入っています。
ただ尿素が10%も入っているので、かなり効果が偏っていると思います。
あとは「ケラチナミン」という医薬品も有名ですね。
これは「第3類医薬品」で
有効成分は「尿素」20%のみです。
なので、効果のほぼすべてが尿素によるものです。
ところで
さっきから尿素10%とか20%とか言っていますが、
基本的に化粧品の成分で10%以上配合する成分は水か油か界面活性剤(洗剤のみ)かという感じで、
有効成分に当たるような成分で10%以上入れるものは基本的にありません。
グリセリンなどの保湿基剤で稀に入れるかな?という感じです。
(10%入れられるのはグリセリンくらいだと思いますが…)
なので、そういう意味でも「尿素」というのはかなり特殊な成分ということは知っておいて良いかもしれません。
◎尿素の「保湿効果」
次に、尿素にはどういう効果があるのか?というと
まず第一にあるのは「保湿効果」です。
保湿効果が非常に高い成分として知られていて、化粧品にも微量で配合されることがあります。
尿素が保湿効果を発揮するのは、かなり難しい話を大昔にしているのですが
簡単に言うと「水と結びつく働きがとても強い」からです。
尿素というのは「水素結合」と言う特殊な結合を通常の保湿成分よりも沢山結ぶことができます。
(「水」は水素結合を結ぶのが得意な液体)
これは、エタノールやBG、グリセリンなどの基本的な保湿基剤が保湿効果を持つのと同じメカニズムです。
グリセリンなども水分と水素結合を結ぶことで保湿しています。
根本的な保湿能力だけの話をすると、尿素はグリセリンよりも高い保湿効果を持ちます。
それこそ医薬品の有効成分として認められるほどです。
◎尿素の「タンパク質変性作用」
ただし、尿素には単なる保湿効果だけではない機能があります。
それは「タンパク質変性作用」と呼ばれるものです。
尿素はあまりに水素結合を結ぶ力が強いため、周囲の物質が結んでいる水素結合に割り込んで、
その結合力(水素結合)を断ち切ってしまうのです。
皮膚の表面には「ケラチン」というタンパク質が敷き詰められています。
僕らの皮膚表面の「角質」の基本成分はこのケラチンなんですね。
(「ケラチナミン」の名前の由来だと思います)
ケラチンは4種類の化学結合で強固に結びついている非常に硬いタンパク質なんですが、
ケラチン(角質)の結合には「水素結合」もあります。
尿素はこの水素結合を切って、ケラチン(角質)の結合を弱めてしまうのです。
(ペプチド結合でつながっているのはタンパク質=ケラチンのモデルです)
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
(↑ケラチン内部の水素結合を尿素が奪うので結合が弱くなる。)
※ちなみに僕は大学の研究でケラチンの分解を促進するタンパク質変性剤として尿素も使っていました…苦笑
ケラチンの結合力が弱まる=角質が柔らかくなる
ということで、
尿素クリームに強力な「皮膚柔軟効果」があるのはそのためです。
さらに
角質の結合力が弱まることで角質のターンオーバーも促進され、
より早く角質が剥がれ落ちるようになります。
(弱いピーリング効果)
こうして尿素はそのタンパク質変性作用により角質を強力に柔軟化でき、
さらに溜まった角質の除去に効果的なのです。
尿素20%のケラチナミンの効果として、ガサガサの角質を改善する効果が謳われてのはそのためです。
◎皮膚のガサガサ・ゴワゴワの改善には効くが、【炎症手荒れ】には逆効果!?
ちなみに、
実はこのように、ケラチン(角質)の水素結合を断ち切る物質は身の回りにもたくさんあります。
例えば「水」や「エタノール」などもそうです。
皮膚は水に塗れると乾燥時より柔らかくなりますよね。
お風呂に浸かり続けると指先がしなしなにふやけるのを覚えていると思います。
これは、実は水がケラチンの水素結合を奪っている状態で、
結合が弱っている=角質自体ももろくなっています。
しかし、水素結合の切断は乾燥すると元に戻るので、
水やエタノールが水素結合を一時的に奪ったとしても、乾燥すれば元通りになります。
一方で「尿素」は蒸発しない成分なので、乾燥して元通りになることがありません…。
これは感覚的にわかると思いますが、
皮膚は水に濡れ続けるとそのバリア機能が低下してしまいます。
(もちろん角層中に一定の水分は必要ですが、一定以上はかえってバリア機能の低下につながるので、保湿もし過ぎれば肌に毒というわけです)
尿素も同じくで、使用時は実際にケラチンがもろくなった状態ですので
肌バリアは低下した状態になります。
つまり、
「手荒れに効く」とは言いますが、
この「手荒れ」というのはあくまで角質のガサガサやごわつきに留まるもので、
炎症を起こして敏感になっている「炎症手荒れ」には、
肌バリアを低下させてしまうことでかえって悪化の要因になることがあるんです。
つまり、炎症がある部位などには使用してはいけないのが尿素の注意点です。
これは、ケラチナミンの添付文書の「使用上の注意」などにもハッキリと記載されています。
傷口、亀裂部位、炎症部位などには使用してはいけないことになっています。
もちろんケラチナミンは20%だからより効果が強く、
資生堂さんの10%のものは比較的マイルドではあるのですが、
肌が弱い人だと10%でも十分刺激要因になりますのでご注意いただく必要があります。
◎自分の「手荒れ」は、【乾燥手荒れ】?【炎症手荒れ】?
今回尿素について記事にしようと思ったのは、
僕のお友達の専門家の方でも「手荒れに尿素クリームお勧め!」と言っている方は実際に沢山いらっしゃって、効果も実感している人も多いと思うのですが、
お話を伺っていると「手荒れ」という言葉の感覚が違うのかもしれないと感じました。
僕の感覚だと「手荒れ=痒みや炎症を伴うもの」なんですよね。
というのは僕はかつて爪まで変形するようなかなりごっつい手荒れに悩んでいて、
(↑7年前の手荒れ)
僕のイメージだと「手荒れ」=ここまでは行かないまでも汗疱とか手湿疹とかがある程度出てきた状態だと認識しているんですよね。
ですから『手荒れに尿素はキツイぞ…』と条件反射で思ってしまいます(^^;)
でも人によってはそうではなくて、
ただ乾燥してカサカサ・ゴワゴワしている状態
くらいのを「手荒れ」と言っているケースも多いようなのです。
確かに炎症を起こすかどうかは体質に依存していて、乾燥はするけど炎症はあまり起こさない人も多いと思います。
なので、炎症を伴うような手荒れ=【炎症手荒れ】なのか、
乾燥によるゴワゴワ・カサカサ手荒れ=【乾燥手荒れ】なのかで、
尿素クリームを使って良いのかどうかというのがハッキリ分かれると僕は思いました。
特に炎症手荒れの場合は尿素クリームは悪化要因になる可能性が高いので、
使用の推奨はしません。
また、乾燥手荒れに関しては、場合によっては尿素クリームの使用はありです。
ただ、尿素は効果も大きい分リスクもありますので、
僕としては極力基本的な保湿ケアで対処した方が良いのかなとは思っています。
◎敏感肌に適した手荒れ時のハンドケアは?
敏感肌の方や、炎症手荒れも含めて僕がお勧めしていいるハンドケアは、
かなり昔にもなんかの記事で書いてますが
皮脂の主成分である『油脂』を適宜補給することです。
かずのすけ@kazunosuke13手荒れ対策のハンドケアで絶対的にお勧めしたいのはとにかく【油脂】を補給することです。 油脂は皮脂の約40%程度を占める油分で肌バリアの基盤とも言える成分。 顔の皮膚などは皮脂を自分で分泌できますが、手…特に「手のひら」は皮脂を… https://t.co/qG0zFxEoNy
2020年11月01日 20:47
油脂は別のメカニズムで角質柔軟効果を発揮しますし、
(角質に浸透して細胞間の潤滑剤として働くため)
手のひらに皮脂腺がないため手は常に油脂分が不足した状態になりがちです。
油脂を適切に補給して、かつ刺激要因との接触を徹底的に避け、保護クリームなどで水分の蒸発と刺激の抑制をすることで、効果的な手荒れケアが可能です。
詳しい内容は上記ツイートのツリーに詳しく記載していますので、是非こちらも御覧くださいね💡
では今日は以上です!
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