2021年7月23日掲載
2025年6月24日改訂・再掲載
2025年8月8日改訂
これまでに玉原高原で撮影した写真を本項にまとめます。
【玉原高原の概要】
群馬県沼田市の標高1200~1600mに位置し、関東随一と称されるブナ林がある。玉原高原では1929~1944年までの15年間、国策によって大規模なブナ林伐採が行われた。この伐採は、産業の少ない時代に奥地林の木材資源を活用し、製材・製炭等の事業を興すことによって地域経済を発展させようとする、当時とすれば画期的な大事業として行われた。この事業により多くのブナが切り出され、人工的に多くのギャップが作られた。戦後になると放置され、現在は極相林に近くなっている。高原の両端にそびえる鹿俣山、尼ヶ禿山に至る道の周囲にもブナ林が広がっている。
玉原高原は地理的には関東地方に位置するが、気候は日本海型気候域に属し、冬の積雪は2m以上となる。ここで見られるブナは大形で薄い葉をもつ「オオバブナ」と呼ばれるタイプで、植生区分はブナ-チシマザサ群集(日本海型ブナ林)となる。群馬県の日本海型ブナ林としては太平洋側に向かった分布の最前線に位置し、赤城山ではブナ-スズタケ群集(太平洋型ブナ林)となる。日本海型ブナ林は、小規模ながら玉原高原より南の迦葉山や三峰山でも見られる。群馬県では中之条-三国峠-沼田を結んだ線が、ブナ-スズタケ群集とブナ-チシマザサ群集の境界線となっている。
玉原高原ではイヌブナは見られないが、沼田市周辺では子持山、三峰山、迦葉山、川場村で見られる。
【ラベンダーパーク周辺】
ラベンダーパーク前ではダケカンバやシラカバが見られます。
写真の個体は樹皮は白っぽいものの黒い枝痕がなく、上の方の枝は橙色を帯びるのでダケカンバだと思います。
このダケカンバの樹皮は、根元寄りから橙色です。
ダケカンバの樹皮。ダケカンバやシラカバは陽樹のパイオニア種です。
今や自然のシンボル的存在のブナ。この葉を見ると心が安らぐ気がします。
ペンションビレッジ周辺にはブナの大木が幾つかあります。太平洋側地域と違って後継樹も多く見られます。
【尼ヶ禿山】
尼ヶ禿山周辺はブナ二次林で、ブナ平に比べると大木は少ないです。アスナロも混生しています。
玉原湖・迦葉山方面~尼ヶ禿山ではアスナロが目立ちます。ヒノキに似ていますが、枝葉はヒノキよりも大形です。和名は「明日はヒノキになろう」という意味といわれます。
ブナの葉。葉の大きさは東京のブナ(コハブナ)の2~3倍ほどあります。普段コハブナに見慣れているため、大きく感じます。
山頂(標高1466m)からの光景。玉原湖が見えます。山頂にはミヤマナラが少数ありました。
【玉原湿原】
夏の玉原湿原(2025年8月3日撮影)。
中央の低木はミヤマナラです。
小尾瀬とも呼ばれる玉原湿原。夏の雲が広がります。
早春にはミズバショウが咲くそうです。
玉原湿原にはミヤマナラが多いです。ミズナラの高山型変種で、多雪のため地面を這うような樹形になります。
【長沢三角点周辺】
新緑のブナ林。
幹が真っ直ぐに伸びて樹形が美しいブナ(長沢三角点付近)。
【水源ルート】
トチノキ(左)とブナ(右)。
谷沿いはサワグルミ・トチノキが優占種で、ブナは斜面上部に生える傾向があります。
トチノキの大木(写真中央)。
【ブナ平】
玉原のブナ林の中でも中核的な場所です。ここの基岩は、武尊山が112万年前に噴出した溶岩台地です。寒冷地を好むブナは、何回かの氷期を経て2万年前以降の気温の上昇に伴って山地帯に移動、世代交代を繰り返しながら現在に至っています。
幹を真っ直ぐに伸ばしたブナ。
ブナ平のブナの中でもひときわ存在感のあるマザーツリー。玉原高原のブナ林は二次林ですが、ブナ平周辺はブナの優占度が高く、ミズナラは少ないため、ほぼ極相林です。
マザーツリー。樹高25m・胸高直径1mくらいです。
日本海型ブナ林はブナの優占度が高いです。植生はブナを優占種として、ミズナラ・ホオノキ・カエデ類・シナノキ・トチノキ・アスナロなどが混生しています。
新緑のブナ林を見上げた様子。
ブナの樹皮。灰白色で滑らかですが、コケ類や地衣類が付着して斑模様に見えます。
鹿俣山方面との分岐点にあるブナの大木。
【探鳥路】
探鳥路のブナの大木。
斜面に生えるブナの大木。
散策路沿いに生える2本のブナ。
【鹿俣山】
鹿俣山方面はスキー場になっており、ゲレンデに出る場所もあります。
〈参考リンク〉