2021年7月23日掲載
2023年6月20日改訂・再掲載
2024年5月19日改訂
 
これまでに玉原高原で撮影した写真を本項にまとめます。
 
【玉原高原の概要】
 群馬県沼田市の標高1200~1500mに位置し、関東随一と称されるブナ林がある。1929~1944年まで国策によって大々的な森林伐採が行われたが、戦後になると放置され二次林となった。高原の両端にそびえる鹿俣山、尼ヶ禿山に至る道の周囲にもブナ林が広がっている。
 玉原高原は地理的には関東地方に位置するが、気候は日本海型気候域に属し、冬の積雪は2m以上となる。ここで見られるブナは大形で薄い葉をもつ「オオバブナ」と呼ばれるタイプで、植生区分はブナ-チシマザサ群集(日本海型ブナ林)となる。群馬県の日本海型ブナ林としては太平洋側に向かった分布の最前線に位置し、赤城山ではブナ-スズタケ群集(太平洋型ブナ林)となる。日本海型ブナ林は、小規模ながら玉原高原より南の迦葉山や三峰山でも見られる。群馬県では中之条-三国峠-沼田を結んだ線が、ブナ-スズタケ群集とブナ-チシマザサ群集の境界線となっている。
 玉原高原ではイヌブナは見られないが、沼田市周辺では子持山、三峰山、迦葉山、川場村で見られる。
 
【ラベンダーパーク周辺】
ラベンダーパーク前ではダケカンバやシラカバが見られます。
写真の個体は樹皮は白っぽいものの黒い枝痕がなく、上の方の枝は橙色を帯びるのでダケカンバだと思います。
このダケカンバの樹皮は、根元寄りから橙色です。
ダケカンバの樹皮。ダケカンバやシラカバは陽樹のパイオニア種です。
今や自然のシンボル的存在のブナ。この葉を見ると心が安らぐ気がします。
ペンションビレッジ周辺にはブナの大木が幾つかあります。太平洋側地域と違って後継樹も多く見られます。
 
【玉原湿原】
小尾瀬とも呼ばれる玉原湿原。早春にはミズバショウが咲くそうです。
玉原湿原にはミヤマナラが多いです。ミズナラの高山型変種で、多雪のため地面を這うような樹形になります。
 
【長沢三角点周辺】
新緑のブナ林。
苔むした樹皮のブナ。
幹が真っ直ぐに伸びて樹形が美しいブナ(長沢三角点付近)。
 
【ブナ平】
玉原高原のブナは樹皮が白っぽいのが特徴です。
ブナ平のブナの中でもひときわ存在感のあるマザーツリー。玉原高原のブナ林は二次林ですが、ブナ平周辺はブナの優占度が高く、ミズナラは少ないため、ほぼ極相林です。
マザーツリー。樹高25m・胸高直径1mくらいです。
日本海型ブナ林はブナの優占度が高いです。植生はブナを優占種として、ミズナラ・ホオノキ・カエデ類・シナノキ・トチノキ・アスナロなどが混生しています。
林床にはササが繁茂しています。ササが繁茂していると林床に太陽光が殆ど届かないため、ブナ実生の枯死率が高くなります。ササは数十年に一回、一斉に開花・枯死しますが、枯死したササ群落は元に戻るまで20年前後かかるそうです。ササが枯死すると林床が明るくなり、ブナ実生の生存率が大幅に高まります。ブナは寿命が200~300年と長いため、ササが一斉枯死する機会が何回かあり、その時に大規模に世代交代するそうです。
新緑のブナ林を見上げた様子。 
ブナの樹皮。灰白色で滑らかですが、コケ類や地衣類が付着して斑模様に見えます。
案内マップで「幹の太いブナ」と記されている個体。存在感があります。
玉原高原は国有林の水源涵養保安林です。ブナの森は保水力があり、「緑のダム」ともいわれています。ブナ林は戦後にスギ・ヒノキ・カラマツなどの人工林に置き換えられ、現存は少なくなりました。
探鳥路にて撮影。
樹皮に苔が殆どない個体。
 
【尼ヶ禿山】
山頂(標高1466m)からの光景。玉原湖が見えます。山頂にはミヤマナラが少数ありました。
ブナの葉。葉の大きさは東京のブナ(コハブナ)の2~3倍ほどあります。普段コハブナに見慣れているため、大きく感じます。
 
【鹿俣山コース】
鹿俣山コースもブナ林に覆われています。途中、ゲレンデに出る場所もあります。
 
〈参考リンク〉