栃木県足利市の行道山に行きました。事前に地形図を見た限りでは針葉樹林の記号が多かったため、あまり期待していなかったのですが、実際に行ってみると天然林が多く、フモトミズナラが多数見られたため、記事を書くことにします。
足利市駅または足利駅からバスに乗り、行道山で下車。行道山浄因寺を過ぎるとフモトミズナラが優占する天然林になります。
北関東で時々見られる葉の切れ込みが深い個体。ハゴロモガシワ(カシワの園芸品種)のような個体も時々あります。
行道山北の林。フモトミズナラが優占し、コナラ・アカマツ・ホオノキ・ヤマザクラ・リョウブ・ツツジ類などが混生します。土壌が浅く、岩盤が剥き出しになるような場所ではフモトミズナラの優占度が高いです。シイ・カシの若木は見られず、フモトミズナラが土地的極相になっています。
行道山(石尊山)山頂からの眺め。フモトミズナラが生えているのがわかります。
山頂からフモトミズナラの葉をズームで撮影。足尾山地は山々がつくられてから海に没したことがなく、アジア大陸と関連のある植物も残存していることから、大陸と陸続きだった頃に日本にも分布していたモンゴリナラがこの地に残存したという見解もあります。モンゴリナラ(学名:Quercus mongolica)は京都府立植物園で見たことがありますが、私にはフモトミズナラとの違いがわかりませんでした。フモトミズナラはモンゴリナラを祖先種とする独立種(学名:Quercus mongolicoides)、モンゴリナラとミズナラの雑種起源、モンゴリナラの変種(学名:Quercus mongolica var. mongolicoides)とする学説もあるため、最早モンゴリナラと殆ど変わらないのかもしれませんが…。
フモトミズナラの大木。痩せ尾根の二次林なので大木は少ないですが、大きなものは樹高10m以上あります。ナラ枯れで完全に枯死した個体は少なかったものの、3~4割くらいが被害を受けていました。
両崖山に向かうにつれてフモトミズナラは少なくなり、コナラが優占になりました。土壌がある場所ではコナラの方が多く、コナラが優占する場所ではアラカシも出現しました。アカマツ→フモトミズナラ→コナラ→アラカシと遷移していくようです。
両崖山・天狗山では2021年2月に山火事が発生しました。山火事跡地ではアカマツの若木が多数育っており、教科書通りの植生遷移(二次遷移)が見られました。
山火事跡地。やがてフモトミズナラやコナラも鳥散布・動物散布によって侵入すると思われますが、50~60年くらいで山火事が起こる前の植生に戻るでしょうか?
両崖山から天狗山にも行きました。天狗山は2014年に私が初めて自生のフモトミズナラを見に行った場所です。当時はコナラが優占する林にフモトミズナラが点在していました。現在は山火事やナラ枯れによって、フモトミズナラはかなり少なくなっていました。
織姫神社から見た渡良瀬川と渡良瀬橋。森高千里の歌で有名ですね。何故か足利は独特の風情がある気がします。
渡良瀬橋には歌碑があります(2024年9月6日撮影)。JR足利駅の発車メロディー・東武足利市駅の列車接近メロディーも渡良瀬橋です。
綺麗な葉があったので採集して自宅でスキャンしました。新緑の時期ですが、虫食いの葉が多かったです。
葉身は20.4cmでした。この個体は典型的な葉ですが、北関東では鋸歯が鋭い葉、二重鋸歯の葉、切れ込みが深い葉、葉身30cmくらいある葉などもあり、東海よりも変異が大きいです。また、堅果は東海のものよりも大粒です。
私は以前から北関東のフモトミズナラは東海のものとは形質が微妙に異なると言ってきましたが、北関東のフモトミズナラに固有の名称をつけるとしたら、ワタラセナラ(渡良瀬楢)やリョウモウナラ(両毛楢)なんて名前が良いなと思います。
群馬県桐生市・吾妻山よりも天然林が多く、フモトミズナラの数も多かったように感じます。どんぐりの時期にまた訪ねてみようと思います!