何かある日は、景色がお知らせしてくる。
後ろの席の男の子たちが、「虹だ!」と言ってたのは、これみたい。
ブロッケン現象。って言ったら夢がないか。
安曇野の穂高神社の神事で奥穂高にある穂高神社峯宮に登ったときに、ブロッケン現象なるものを知った。
そう思えば不思議である。
安曇野からの旅が続いている、という徴(しるし)なんだろう。
最初の目的地は、白山のサルタヒコがなぜか告げてきた不思議な場所。
この森を抜けたら異界。
隠り世への扉というのか。
二つのガマ(洞)の間にあるこの場所は、お墓なんだなって感じた。
なぜこのタイミングで告げてきたのかは謎。
ここからちょうど伊江島のタッチューが見えた。
不思議なおじさんに遭遇。
サルタヒコ、これだったんだ。
あ、このためか。
「その凧みたいなの、なんですか?」
不思議なおじさんは、わたしの顔を、じっとみて言った。
「あなた、生まれ高いね」
サーダカ。
与那原のヒロさんも、わたしのことをそう呼んだ。
25年前、世界遺産に登録される前の誰もいなかった斎場御嶽や聞得大王が回った拝所東御廻り(あがりうまーい)に連れて行った。
そしてそれがどういうところなのか、説明することは一切なかった。
聞いても教えてくれなかった。しかも、わたしは調べることもなく、あの何にもない森がなんなのかを知ったのはずいぶん経ってからだった。東御廻りにいたっては、知ったのは数年前である。
そしてそのきっかけになったのは、丹後を一緒に旅するはずだった(安曇の庭に誘われて(安曇野から丹後へ その1)〜海なし県の海の神)歴史オタクのオペラ歌手がFacebookに投稿していた記事だった。
「ここに、魂を乗せて、天にあげる」
「平家の落人、きてるからね。ここに」
「!!!!」
「あそこに、火を焚く場所があったでしょう、あそこで焚いてね、煙にして天に上げてあげるの。赤い龍は夫、青い龍は妻、白い龍は側室で、ノロ(神女)」
「ノロは結婚しちゃダメで、バレたら殺されたんだよ。でも王様とか偉い人の相手をする人だった」
「そうなんだー。うちの曽祖母は奄美のノロなんだけど。でも、わたしがいるってことは」
「わたしにも王様の血が入ってるってことかな」
わたしはおどけて言った。
おじさんは、真剣な顔で
「そうだよ」
と答えた。
「僕は若い頃悪いことをしたから、罰で神様の御用をさせられているね」
おじさんはいった。
「神様はバチを与えるんですか」
わたしはちょっと意地悪な質問をしてみた。
おじさんはしばらく黙って、そして言った。
「自分が、反省するために言っている」
「ですよね」
完全なる神は罰を与えたりしない。
罰を与えるのは人間だ。
人間は感情があるけど、神にはない。
わたしが、信じる神には。
このおじさんは、わたしと同じ神を見ている人なんだな、って思った。
今帰仁の不思議おじさんは、自分の名前の地名が(和歌山の)熊野にあって、自分の先祖は熊野の人だったと思うといい、昔ダムの工事で丹生川上神社の近くで働いたことがある、と言った。
熊野、か。
牛頭天王、八坂、祇園。
祇園といえば、伊勢平氏おじさんがよく口にする「祇園女御」って人がいるな。
平清盛をかわいがったっていう、白河天皇の御妾さん?
熊野はとにかくきている。
「維盛の子孫だから、あなたとは他人じゃない」と手紙に書いてきた尾鷲の大先生(都をつなぐ旅 2(番外編・熊野の神ふたたび) 〜平維盛の子孫だから、あなたとは他人じゃない!?)も熊野だし、もちろん、伊勢平氏おじさんだって熊野である。
そして、伊勢平氏おじさんが気にしている「なぜ平家は負けたのか」のキーになるのは熊野の湛増(弁慶の父)。
「教えたいことがたくさんあるから、いつでも電話して。」
「でも、すぐボクの方があなたに教えてもらわないといけないことになると思う」
おじさんは、謎の言葉を残して、不思議な凧を持って洞に消えた。
与那原のヒロさんみたいな人が25年を経てまた現れた。
その後、安須森にある大石林山へ。
今回の沖縄行き唯一の予定。
今のわたしの原点になった旅(ヤマトと卑弥呼と沖縄と 〜伊江島の神様が宇宙人ヒロをとおして25年かけて伝えてきたこと)の伊江島・タッチューの神様と、しろくまさんが亡くなる前に行った安須森(アスムイ)の神様会いに行こうと思った。
ずっと旅程が決められなくて、なんとなく1日目に北部に、2日目に那覇に宿をとった。
空港から直行で伊江島、2日目に大石林山、3日目に久高島に行こうと思っていたが、大石林山の所長の喜瀬さんは、この日程はちょうど不在と聞いた。
じゃ、縁がないから別の時に、と思ったら、1日目だったら時間をとってくださるという。
それで大石林山を訪ねて話を聞いた。
神について、祈りについて、琉球王朝について。
そして、彼がこれからしようと思っていることについて。
なんと閉園まで。
彼は、30年前請われてこの地に来て、安須森を拓いた人である。
今は有名な歌手や芸能人も訪れるパワースポットとして有名になったけど、彼が訪れたときは、古(いにしえ)の祈りの場だけがあった。
地上神と天上神。
彼は、30年かけて地上神が本当に伝えたかったことに気づいた、と言っていた。
白山のサルタヒコがいう水平の神と垂直の神。
わたしが神と呼ぶのは、天から降りてきた垂直の神だけなのだが。
部屋は広かった。
普段こんなリゾートホテルには泊まらないが、GOTOプランで選べるホテルで場所で選べばここしかなかった。
で、周りはみんな家族連れ。しかも高い。
夕食難民にならぬよう、喜瀬さんにたずねておいた串焼き屋を訪ねた。
・・・。
提灯が消えている。
嫌な予感。
でも!
なんかテントの向こうで鳥を焼いてる匂いがする。
間違えたら恥ずかしいから、電話してみる。
まさにその方向から着信音がなった。
で、テントを覗き込んで聞いてみた。
「あの、お店やってます?」
「うん?お店はここじゃないよ」
「休みだね」
「!!!」
「間違えました、すみません」
「よかったら一緒に食べませんか?廃鶏ありますよ。」
「いいんですか!?ありがとうございます!!」
(つづく)