島巫女仲間に支えられ 〜伊雑宮と八ヶ岳 その3 20年ぶりの | かんながら

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旅の記録です

からの続き。
 
本当は、山から電車に乗って、大事な神事の約束の時間に帰るつもりであったが、電車に乗るためのリミットの時刻の間際になって伊勢平氏おじさんは、なんか(彼にとって)重要なことを喋り始めた。
 
 
実は、20年ぶりにこのブログにも何度も登場している私の「天気の子」の街時代をカウンセラーのように支えてくれた亀好きの元ダンナから、重要なものを預かる約束をしていた。
 
こういう時は慎重にしたほうがいい。
それは、「妨害」なのか、それとも「印」なのかはわからないが、「エイヤー!」でやると大事なことが調わない。
私は「今」動けるように、「予め」の約束は極力しないが、この件に関しては、何かあったらリスケをお願いすることに決めていた。
 
だから、帰る予定は横に置いて聞いた。
どの道、山からはタクシーにきてもらうか、おじさんのクルマでなければ降りられないのだから。
大事な場所には、最高の状態で行きたいが、不機嫌でも振りまかれてはたまったものではない。
 
話の内容は、いつものように過去の仕事の成功体験と、「あの時こうしておけばよかった」というアイデアであるが、目新しい内容としては、今日会う人の仕事の関係の人物の話題があって興味深い。
なんか意味があるのだろう。
出版、新聞、広告という分野は不思議なもので、亡くなったしろくまさんも含めて知人が多い業界である。
それはその分野の人と知って出会ったのではなく、たまたまそうだ、ということが多い。
 
あとは、「日本をよくしたい」みたいな思い。
政治家との昔話について語る。
 
「善政」は確かにテーマだ。
「麒麟がくる」の明智光秀、聖徳太子、天日槍。
 
残念ながら、聞いていてつまらないように感じるのは、「今につながらない話」だからである。
やり直しの旅  〜伊勢平氏おじさんと白山ひめで書いたが、最初の食事の席で、ついその心の声が口をついて出てしまい、泣いて謝らなければ収束しないくらい、デパートの食堂で怒られた。
 
 
 
私にとっての大事な神事は、亀が大好きな2番目の元ダンナ(”地を這う蚯蚓(みみず)のように” 〜あのとき、蚯蚓を選んだ)からランチタイムに「三輪山の土器を預かる」ということであった。
クルマで帰れば間に合いそうなタイミングで、「どれくらい待てますか」と聞いてみた。
 
彼からはすぐに「リスケで」と返事があった。
今日だと奈良入りに間に合って、川口由一さんに見せることができるから、今日がよかったが、仕方がない。
繊細な案件なので無理はしたくない。
 
 
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家に着く頃、
「1時間くらいなら、夕方でもいいですよ。」
とメールがあった。
 
 
ありがとう。それは私にとっては「まさに希望通り」。
ランチタイムって、嫌な人に会うにはリミットがあっていいんだけど、そうでない時って落ち着かないし。
 
とは言ってもそれは一方的な私の感情であるので、相手がどう思っているかはわからない。
 
待ち合わせ場所にすでに到着していた彼は一緒にいた20年前と、何も変わらなかった。
懐かしさや愛おしさが込み上げてくるとかもなかったが、「過去の人」という感じでもなかった。
 
私は嫌いな人とでも一人でいるよりは人の気配がする方がよく眠れるのであるが、今日から一緒に暮らすことになってもなんらストレスなくやっていけそうな空気感であった。もともと一緒に暮らしていたときから、厚かましく居候させてもらっていたのだ。
 
断っておかねばならないが、あくまでも、「私の方は」であって、「彼の方が」ではない。
 
 
そして大事な案件の「三輪山の土器」を預かった。
彼がもう50年近く前に卑弥呼の宮殿の上で自然農をやっていた川口由一さんと一緒に歩いた時に拾ったものらしい。
 
昨年メール相手をしてくれていた時に、「いつか会えることがあればりこさんに渡したい」と言っていたものである。
その土器は、突然びしょ濡れになったり、水を含んでグニャグニャになったり、生きているみたいに変化していたことを聞いていた。
 
だから正直に言って、あずかったはいいが、壊さないか不安であった。
 
その話を聞いたあと、なぜかいろんな人から意図せず聞こえてきた情報によると、
その土器は、『日本書紀』には、神武天皇が大和に攻め込む際、天香具山の埴土で80枚の平瓮を作り、神に捧げることで戦いに勝利した、と言われる天香山の土で作られた「八十平瓮」に似てるなって思ったからだ。
 
少なくとも、なんらかの祈りを込めて作った土器のように感じたからである。
 
「渡した以上は、それがどうなろうが、構わない」と彼は言ってくれたが、もしこれに「国家の安寧」でも祈られていて、それを私の不注意で壊しでもしたら大変ではないか。
 
だから、預かるのは怖かったのだ。
でも昔の道具に触れると、その時の様子がわかる、という絶対世界に生きる川口さんにみてもらわねばなるまい。
新型コロナの影響で、講座が中止になり続けて川口さんにもなかなか会えず、彼が個人的に会いに行く予定もキャンセルになってしまった。
ここはようやく講座の席が確保できたこのタイミングで私のお役目であろう。
 
 
そして、これと、と言ってくれたのが
 
ローズクォーツのピンクの亀。
本屋で数年前に買ったと言っていた。
 
 
で、「こういうの、どこにつけるんですか」
って聞いたら、
彼はラピスラズリの同じものを鍵につけていた。
 
 
「え、これ、私がもらっていいの」
「うん」
 
 
カメのことが、人より好きなんじゃないかと思うくらいカメが好きな彼から、手渡された、お揃いの亀の根付。
しかもローズクォーツ。なんだか不思議。
 
 
そして
 
 
彼は、土器の他に、比嘉康夫さんの奄美の祭祀の写真集をくれた。
あ、平瀬マンカイ。
八月踊りとも言われる祭り。
それは、しろくまさんが、「いつかみてみたい」と言っていた奄美大島の祭りである。
 
8月踊りは盆踊りのような祭りで、飲んで踊って歌って、大人の祭り。
マンカイ。
北政所、北条政子、お万の方、「マン」という言葉の意味について、最近読んだ本に書いてあった。
 
 
約束の地、國吉に祀られていた神は 〜372年ぶりの日蝕夏至の日にで書いた、与那原の宇宙人ヒロさんは共通の友人だったが、もう10年も前に亡くなっている。
そして、彼もまた宇宙人ヒロさんと伊江島に行き、タッチューに登ったと言っていた。
伊江島の神様に呼ばれてたか。
 
 
 
彼が頼んだトリュフのリゾットと私が頼んだピザがきた。
「ピザが冷めないうちにどうぞ」と言われた時に、今朝おじさんが「小渕元総理」の話をしている時、私は「冷めたピザ」が頭から離れず、そのことを考えながら上の空で聞いていたので、そのセンテンスのシンクロが面白くてたまらなかった。
 
 
そしてピザを黙々と食べていたが、
 
「あのさ、そのトリュフののっかってるところ食べてみたい」
 
「ああ、言ってよ。どうぞ」
 
 
そして、トリュフのリゾットをもらう。
 
 
こんな私でも気を遣う、こともある。
でも、それでいいのかな。
私は今、人の顔を見てなかったか、ってすごく思う。
 
 
そして、ふわっとこのテーブルの私たち二人の会話をちょっと離れたところから眺めてみて、やっぱりこの人も「サーダカ」だなって思う。
 
 
 
「りこさんには、早くまたしろくまさんみたいな人が来るといいですね」
 
去年は、即答しただろうな。
「うん!」って。
 
でもなぜかわからないけど、もうそう思わなくなってしまった。
情のある人は優しい。
 
でも、私はそれにこたえられないような気がする。
 
 
地域ネコくらいの立ち位置でないと、相手がもたない。
 
 
でもほんとにいいんだろうか、それで。
わたし自身がわからない。

 

 

 
私たちは、写真塾で知り合った写真仲間である。
 
「ねえ、ちょっと、あなたが撮ってみてくれる?」
 
ポンと彼の前に置いて、彼にiphoneを渡した。
 
 
「うん」と言って、彼はそれを受け取り、カシャ、っと撮った。
 
それがこの写真。
渡したまんまの場所で、動かすことなく撮っていた。
 
 
「ねえ、この写り込んでるの何?」
「ああ」
 
「これって変わらないね」
 
わたしは50ミリのマクロ一本しか持ってなかった。だからいつも思い切り寄った写真ばかりで、無駄なものは何も写り込んでおらず、どこで撮ったのか、被写体に思い入れがなければ全くわからなかった。
 
彼は昔から、「空間が写っている作品が好き」という人だった。
遺品整理で写真を見たからわかる。
何かがなにげなく写り込んでいる写真は、その場に戻りやすい。
 
何年か経った時、この写真を見て、今日のことを懐かしく思い出すのかも知れないな。
 
 
一駅だけ、電車に一緒に乗った。
 
「またね」と言ったのか、
「元気でね」と言ったのか、
 
覚えがない。
 
まるで、明日また会社で会う同僚のように別れた。
 
 
本当は、相手がどう思っているかはわからないのに。
そして、運命がどうなっているかは、いつだってわからないというのに。
ただ、「また連絡していい?」とか「また会いましょう」みたいな約束が、不毛なものだというように思えるようになってしまった。
 
 
一夜明けて。
 
 
朝のお参りに行くのに、鍵を取り出した時、ピンクの亀を見て、ハートの奥から声がした。
 
「今にコミットメントが必要」
なんなの、この声は。
 
今、か。
 
わたしは、もしかして、今を生きていないのかも知れないな。

 

 

 

 

 

さあ、明日から関西へ。

 

 

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