※宅建Tシリーズと「基本テキスト」については「序章」をご覧ください。

1) 通謀虚偽表示

P: 契約の無効や取り消しができる、いわば「ワケアリ意思表示」の中で、「通謀虚偽表示」を最後にしたのは、何か理由があるのですか?

S:  そもそも「通謀虚偽表示」とは、どんな取引か? ですが、典型例としては、Aの所有する土地が、そのままでは競売にかけられてしまうので、Bに頼んで、AからBへ売った=所有権がBに移ったように見せかける…ですね。

この契約は、民法94条 ※説明のためABCを補足

 ①(Aと) 相手方Bと通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

  ② 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者Cに対抗することができない

によって、A⇔B間では無効ですが、事情を知らないでBから土地を買った C=善意の第三者 には対抗できない。

P: 今の話だと、Cは善意なら有過失でも、B⇔C間の取引は無効にならないってことですよね?

S:そこは、昭和12年の判例で「民法94条2項の善意の第三者というためには、虚偽表示であることを知らないことについての過失の有無は問わない」とされて、ずっと踏襲されています。

さらに、たとえCが悪意であっても、Cから土地を買ったDが善意なら、A・Bは、仮装土地売買の無効を、Dに対して主張できません。

P:A・Bと、Dとの関係でみれば、Dは善意の第三者といえますからね。 ※補足1
S: 今、Pくんが言ったように、「通謀虚偽表示」は 

  【A・B(AB間は無効)】対 第三者C、D…(善意なら保護、悪意なら保護されない)

のように、ほかの「意思表示」に比べて、ABCの関係が分かりやすいので、最後にしました。

2)「意思表示」はややこしい?  ※以下、説明のため、表意者A・相手方B・第三者Cを追加、( )は補足。

P: 通謀虚偽表示の場合、そもそも通謀した(示し合わせた)張本人のAとBだと、ルール違反で「天びん」にかける以前にアウトですよね?
S:そうですね。他にも「公序良俗違反」や、「心裡留保」で相手側Bが悪意(たとえばAの発言が真意でないと知ってる)なども、「天びん」にかけるまでもなく「無効」です。
そして、通謀したA・B 対 第3者Cでは、善意のCが保護されます。

P:「悪意の第三者」が、保護されるケースは、基本ないように思いますが、前回の宅建18(契約②)で相手方Bや第三者Cが、「善意(過失あり)」と「善意無過失」では、保護されるかどうか違うケースが混ざっていて、戸惑いました。

S: たしかに、

「心裡留保」の相手方は、

『『民法第93条
1 意思表示は、表意者Aがその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方Bが表意者の真意を知り、又は知ることができた(過失あり)ときは、その意思表示は、無効とする。』

でしたし、「錯誤」では、95条3で『錯誤が表意者の重大な過失』だったときは、『原則、取り消しができない』

ただし、
『 ① 相手方Bが表意者Aに錯誤があることを知り(悪意)、又は重大な過失(重過失)によって知らなかったとき。』

は、例外として取り消しができるなど、条文レベルでも規定が細かいですよね。

ただ、「錯誤」はそもそも表意者Aに落ち度(過失)があるんですが、同時にAの事情によっては、助けてあげてもよいケースもあるので、「判例」レベルで判断が積み重なり、現在の形になったんですよ。

 

ちょうど、法務省・民事局が作成した、2020年施行の民法改正に関わる下記のPDF(以下、単に文書)

 「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-主な改正事項-」

 https://www.moj.go.jp/content/001259612.pdf

のP.35~37に、「意思表示」について、改正のいきさつ(これまでの課題と改正の意図)を、とくに「錯誤」について詳しく説明してましたので、ご紹介します。

3)改正(2020)で、「錯誤」が変わった背景

P:文書の35ページで、まず「意思表示に問題があるケース」として

 ・心裡留保(民法93条)

 ・通謀虚偽表示(94条)

 ・錯誤(95条)

 ・詐欺/強迫(96条)

について、それぞれ分かりやすい例を挙げています…Sさんが説明された例と同じものもありますね。

S:「詐欺」の「壺」は、いわゆる「霊感商法」(ツボ商法)がらみでいろいろ判例もあるので、例としてよく出てきます。※補足2

そして、「錯誤」の例は、

『土地の譲渡に伴って自らが納税義務を負うのに、相手方が納税義務を負うと誤解し、土地を譲渡した(売主に錯誤)』ですね。

Pくん、この例は、宅建18で説明した

 「表示の錯誤」…間違って真意と異なる意思を表明した場合

 「動機の錯誤」…真意どおりに意思を表明しているが、その真意が何らかの誤解に基づいていた場合

の、どちらに当たりますか?
P: 売主が、「相手方(買主)が納税義務を負うと誤解」してますので、「動機の錯誤」です。

S:「動機の錯誤」については、民法改正以前の判例で、『動機の錯誤については、その動機が意思表示の内容として表示されていることが必要。』とされていたのを、条文に取り込んだわけです。

改正前の95条の条文は、

『 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。』

とシンプルだったんですが、逆に、

  単純な書類の書き間違い(表示の錯誤)

と、

 「税金は相手方が払うものと誤解」(動機の錯誤)

を同列に扱うのは、無理があったのでしょう。

P:あと、改正前の「錯誤」は、「無効」だったんですね!

S:「錯誤」が、「無効」→「取り消し」になったいきさつは、文書の37ページに詳しく書いてあります。

P: 「無効」と「取り消し」については、過去記事でも何度か触れていますが、筆者の理解があいまいだったので、Sさんから質問をされるまえに、Google geminiに、「無効と取り消しの違い 簡単に」で聞いてみました。

『法律用語としての「無効」と「取消し」は、どちらも法律行為の効果を最初から否定するものであるという点では共通しています。

ただし、無効は最初から効力を発生せず、取消しは一度効力を発生した後に遡って無効にするという違いがあります。
無効は「最初から何もなかった」という意味で、原則として誰でも主張することができます。

無効には時効がなく、いつまでも主張することができます。
一方、取消しは「取り消すことによって、最初から何もなかったことにする」という意味で、「遡及効」とも呼ばれます。取消しは、取消原因がある場合に、取消権者が取消という意思表示を行ったときにはじめて効力を遡って無効にします。

取消しできる人は決まっており、できるまでの期間も決まっています。』(2024年8月10日)

S:回答の最後の「できるまでの期間」という言い回しは? でしたが、文書37ページの下記表の内容

も、うまくまとめてますね。

P:改正前、「詐欺」は「取消」で、被害者には5年の期間制限があり、一方で「錯誤」は、「無効」だと主張できる期間に制限がない…というのは、やはり不公平だったということですね。

4)改正民法(2020)で、「詐欺」・「心裡留保」はどう変わったか?

S:「詐欺」については、宅建17の「詐欺」の説明のときに、

改正前の96条3項

「ただし、詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することはできません。」

改正後96条3項

善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。」

ことを説明、関連記事(リンク)も紹介しています。

また、「心裡留保」は、宅建18で、民法第93条の条文

『1 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。』

を紹介しましたが、この2項「~善意の第三者に対抗することができない。」が、20年の改正で追加された部分です。

こちらも、下記の説明のように、判例を条文に取り込んだものです。

 

 

P:次回(宅建20)以降は、「債権」編を予定していますが、そもそも今回紹介した「文書」が、「民法(債権関係)の改正~」という題名で、その中に、今回の「意思表示」はじめ、当シリーズでこれまで取り上げた「時効」、「意思能力制度」「代理」なども入っていますね。

S: 基本テキストでは2~53ページにあたる箇所は、「債権」や「契約」を理解するには必要不可欠な知識なので、今回説明した「意思表示」の部分以外でも、とくに宅建試験を受験する方は、知識を再確認するために、この「文書」を読むと参考になると思います。

なお、一般消費者むけに造られたパンフレット

 「売買, 消費貸借, 定型約款などの契約に関する民法のルールが変わります」

 https://www.moj.go.jp/content/001399958.pdf

もありますが、こちらもある程度の法律知識がないと、そもそも読む気にならないと思います(P:禿同)。

宅建試験合格まではいかなくとも、これらのパンフレットや、宅建業法の三大書面(重要事項説明書、37条書面、媒介契約書)を、Pくんも読めるレベルになってもらえるように、記事作成を続ける予定です。 ※補足3

 

【補足】

補足1:有名な最高裁の判例(昭和45年7月24日)で、※甲乙~を、ABCDに変更
「民法94条2項にいう第三者は、虚偽表示の当事者またはその一般承継人以外の者で、その表示の目的につき法律上利害関係を有する者をいい、AB間の虚偽表示の相手方Bとの間で表示の目的につき直接取引関係に立ったCが悪意の場合でも、Cからの転得者Dが善意であるときは、Dは善意の第三者にあたるとした」

なお、善意のDからさらに土地を買ったEが、A・Bの仮装売買を知っていた=悪意のときについては、過去10年の宅建試験では出題がないようですが、参考に ↓

 

補足2:「霊感商法」などの違法な勧誘行為については、民法以外でも、いろいろな法律が制定され、消費者保護が強化されています。

身近に被害にあった方がおられたら、まず、最寄りの自治体などの相談窓口で相談を。

 

補足3:Sさんは、今年度(24年10月)の宅建試験受験は見送るそうですが、当初の予定(宅建:序章)どおり、目的:「住み替え」、手段「宅建試験挑戦」で、宅建試験の勉強を続けるそうです。

 

【写真・画提供】Pixabay

【BGM】

S選曲:米米クラブ 「浪漫飛行」

P選曲:Aqua Timez 「虹」(THE FIRST TAKE)

 

※宅建Tシリーズと「基本テキスト」については「序章」をご覧ください。

A) 心裡留保

P:前回の「詐欺・強迫」に続いて、契約の取り消しができたり、無効になる事例ですね。

S: 基本テキストの並び順とは違いますが、まず、心裡留保(しんりりゅうほ)について。

P: そもそも、読み方が? でした…。
なにか「明鏡止水」のような四字熟語っぽく見えますが…。
S:「基本テキスト」では、あっさり「冗談のことです」と書いています。
P: 「冗談」ですか?
S:  もう少し法律寄りにいいかえると「意思表示が真意ではない」ということです。
民法の条文だと下線部、
『民法第93条
1 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。』
で、実際に裁判にもなっています。

 

 

上のケースでは、大学の学長(意思表示を受けた側)と教授(意思表示をした側=表意者)との関係にいろいろ問題があったようで、教授がいったん退職届を出したんですが、その退職届が、93条により無効と判断されました。

P: 退職届を出したことが「教授の真意ではない」と認められたんですか?

S:単に「意思表示が真意ではない」だけだと、それこそ冗談を真に受けた人がかわいそうなので、その意思表示は有効です。

しかし、但し書きに『相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたとき』は無効とありますよね。

P:なるほど、上の裁判では、大学の学長(意思表示を受けた側)が、『退職の意思表示が債権者の真意に基づくものではないことを知っていた(と推認された)』ために、無効となったわけですね?

S: そうです。

ちなみに、

  相手方が表意者の真意を知り=悪意

  知ることができた=善意有過失

ということですので、「善意」・「悪意」の基本ワードがまだあいまいという方は、基本テキストの16ページに分かりやすい図が載っていますので、ご覧ください。

 

P: まとめると、「心裡留保」では、相手方が「善意無過失」だと、表意者の意思表示は有効。

善意有過失、悪意のときは「無効」。

S:さらに、93条-2により「善意の第三者」についても、表意者の意思表示は有効。

P:ここは「善意無過失」ではないんですね~。

S:単なる「善意」と、「善意(有過失)/善意無過失」については、次の(B)「錯誤」でも触れるので、先に参考記事をあげておきます。

 

 

※生成AIの作画(提供:Pixabay)

 
B)錯誤
P:「錯誤」は「Mistake:間違い」ってことですか?
S: 基本テキスト(12ページ)では、「勘違い」といっています。
人間には、間違いが付きものなので、心裡留保より民法の条文が細かいです。 ※補足1
『第95条
1.意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
 ① 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
 ② 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
 ① 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
 ② 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。』
P: 錯誤にもとづく意思表示は(原則)取り消しできるということは分かりましたが、
   意思表示に対応する意思を欠く錯誤 
とか、言い回しが分かりにくいですね!
S: 2020年10月過去問(問6)の出題文で、①、②の具体例をみてみましょう。 ※補足2 ※「重大な過失」は後述
1-① 意思表示に対応する意思を欠く錯誤=言い間違い、書き間違いのケース=表示の錯誤

 肢1:Aは、自己所有の自動車を100万円で売却するつもりであったが、重大な過失によりBに対し「10万円で売却する」と言ってしまい、Bが過失なく「Aは本当に10万円で売るつもりだ」と信じて購入を申し込み、AB間に売買契約が成立した場合

1-② 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤=動機の錯誤
 肢3:Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
P:この過去問の肢2
 肢2:Aは、自己所有の時価100万円の壺を10万円程度であると思い込み、Bに対し「手元にお金がないので、10万円で売却したい」と言ったところ、BはAの言葉を信じ「それなら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
は、絵画と壺の違いはありますが、ほとんど同じ文にみえますが?
S:肢3は、AがBに対して「贋作である」と言ってます。
ここが、95条2の、「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り」に当たります。
つまり、Aは「贋作である」と信じていたから、本当は100万円の価値のある絵を、10万円でBに売った。そのとき「贋作だから」とBに告げています →Aは取消しできる。
一方、肢2でAは、単に「手元にお金がない」から10万円でBに壺を売るといってますが、これだけだと、「100万円の壺を10万円だと勘違いした」(動機の錯誤)を、Bさんに伝えてませんよね →Aは取消しできない。
さきほど、Pくんは「錯誤は原則、取り消しできる」と理解したようですが、逆に、単なる「勘違い」で簡単に売買取引が取り消しできたら、大変ですから、いろいろな条件がついています。
95条1の「法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なもの」も、そうですね。
 

B-2)重大な過失

P:たしかに、95条3は「錯誤が表意者の重大な過失」だったときは、「原則、取り消しができない」ただし、次の2つのケース
 ① 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
 ② 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
では、例外として取り消しができる、としてますね。
S:さきほどの過去問(2020年10月過去問:問6)
 肢1:Aは、自己所有の自動車を100万円で売却するつもりであったが、重大な過失によりBに対し「10万円で売却する」と言ってしまい、Bが過失なく「Aは本当に10万円で売るつもりだ」と信じて購入を申し込み、AB間に売買契約が成立した場合
が、95条3「重大な過失あり」の典型ケースで、Aは取り消しできません。
一方で、95条3-①は、相手方にも重大な過失があったり、悪意(表意者に錯誤があることを知っていた)のときは、表意者に重大な過失があったとしても、お互い様ということで? 取り消しができる。
なので、もし、上の肢1の相手方Bにも「重大な過失」があれば、Aは取り消しできます。
P: だから、問題文にわざわざ「Bが過失なく」と書いてあるわけですね。
S:また、95条3-②は、たとえばバンクシーの公式版画作品を、単なる複製ポスターと思い込んで、AがBへ1万円で売ったとして、Bも同じ事情で「複製ポスター」と思い込んでいたら、たとえそれがAの「重大な過失」だったとしても、これもBもお互い様ということで、Aは取り消しできることになります。

B-3)錯誤と善意の第三者

P:条文4の

 4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

は、

「1-① 意思表示に対応する意思を欠く錯誤=表示の錯誤」では、善意・無過失の第三者に対しては、取消しができないということですよね?

S:そうです。たとえば、先ほどの

「肢3:Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合」

でいえば、Bが第三者Cに絵画を転売した場合ですね。

Bに対しては、「贋作である」とAが言ってるので、A-B間での取り消しはできますが、いきさつを知らないCに対しては、Aは「取消したから絵を返せ」とは言えないわけです。

P:「心裡留保」では、

 ・善意の第三者に対抗できない

「錯誤」では、

 ・善意無過失の第三者に対抗できない

で、微妙に条件が違いますよね?

S: もしPくんが、売主Aの立場で、Bとの取引を取り消したから、第三者Cに対して「売られた絵を返してほしい」と申し入れたとして、「善意」と「善意無過失」だと、どちらが返してもらいやすいと思いますか?

P: 心裡留保の

 「善意のC」に対抗できない=善意のCに過失があっても対抗できない=Aは絵を返してもらえない

ということですから、「錯誤」の方が、返してもらいやすいですよね?

S: そうですね。

もちろん売主Aは、もし「錯誤」を主張して、Cを相手に裁判をしようとしたら、「Cに過失があった」ことを証明しなければなりませんが…。

 

前回の「詐欺・強迫」や、今回の「心裡留保」、「錯誤」などは、条文の語句「取り消し」・「無効」の違いや、第三者との対抗関係の違いなど、ややこしく感じるかもしれませんが、次回は民法改正(2020)とからめて説明をする予定です。

C)公序良俗に反する契約

P: ここも四文字(公序良俗)ですね。

生成AI(Google Gemini)に「公序良俗とは 分かりやすく」で聞いたんですが、

『公序良俗(こうじょりょうぞく)とは、法律用語で「公の秩序」と「善良の風俗」をまとめた総称です。公の秩序は国家や社会の秩序、一般的な利益を指し、善良の風俗は社会の一般的な道徳観念を指します。公の秩序と善良の風俗は厳密に区別されているわけではなく、全体として社会的妥当性を意味するものとして用いられています。』【2024年7月28日)

…法律用語なのでしかたないかもしれませんけど、これで分かりやすい??

S:「公序良俗に反する契約」の例を、ネットの解説からピックアップすると

 ・密輸などの犯罪行為の約束やこのための資金融資
 ・不倫関係を維持するための金銭や物の提供

 ・裏口入学をさせるとの契約
 ・男女を差別するような雇用契約
 ・人の無知・軽率や窮状につけ込んで不当な利益を得る契約

などで、どの例もいまの社会常識からみて、ちょっと容認できない契約ですよね。

このような契約は、当然、最初から「無効」ですし、第三者にも対抗できます。

 

ちなみに宅建15で、「認知症高齢者の不動産が狙われる!」を話題にしましたが、下の「国民生活センタ 暮らしの判例:一人暮らしの高齢者が居住不動産を低廉な価格で売り渡す契約を無効とした判例」では、「高齢で理解力が低下していた可能性のある売主に、買主がその不合理性を十分 に説明しないままに契約を締結させて暴利を得ようとしたものであり、公序良俗に反して無効」としています。

https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202302_14.pdf

P:もし、宅建試験に出題された場合、一般常識で公序良俗に反しているケースは、無効と考えればOKですかね?

S: 宅建・過去問の中には、下記2002年問7 肢3のような、

 

 

民法の「損害賠償額の予定(420条)」がらみで、出題したケースもあったようですが、その記述自体が民法改正で変わりました

ただし今後、「公序良俗」としては、2002年のような出題はないと思います。

「債務の不履行」については、次回「契約③」で「意思表示」編をしめくくったら、「債務」編に移る予定で、その時にまた触れます。

P:次回は、 文の途中でSさんが話されたように、「通謀虚偽表示」と「意思表示」のまとめを予定しています。

 

【補足】

補足1:民法改正(2020)前は、

『第95条
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。』

 

補足2 過去問の解説

 

 

【写真提供】

Pixabay

【BGM】

S選曲:平井 堅×小田和正 「瞳をとじて」

P選曲:神はサイコロを振らない×キタニタツヤ「愛のけだもの」

※宅建Tシリーズと「基本テキスト」については「序章」をご覧ください。

 

A) 民法と特別法の「契約」

P: 前回は、これまで当ブログの「就活S」シリーズでレギュラーだったD君(社会人4年目)との対談記事だったんですが、実は入社するときの「雇用契約」も民法(623条)の守備範囲だったんですね!

S: 正社員に限らず、大学生のときのアルバイトなども、民法623条の条文

『雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。』

にあてはまるので、Pくんも昔から民法623条のお世話になってきたわけです。

ただし、雇う方(使用者)と雇われる方(労働者)とでは、力関係に大きな差があることが多いので、「労働契約法」などの規定で、労働者の保護をはかっています。「雇用契約は書面で」というのも、労働契約法の規定です。

詳しくは ↓

 

そして、同じような。民法の上に「特別法」が載るという構図が、賃貸を含む「宅地建物取引」にも当てはまります。

P: 特別法というのは、宅建試験のジャンルで言う「宅建業法」のことですよね?

S: 他にもありますが、やはり「宅建業法」はとても大事です。

宅建01でも簡単に触れましたが、宅建業法の「三大書面」(契約書)

 ・宅建業法35条書面(重要事項説明書)
 ・同 34条書面(媒介契約書)
 ・同 37条書面(契約書)

の攻略が、当ブログのヤマ場になります。

 

その前提として、民法の「契約」に関連する知識は当然必要になります。

とくに、宅建14,15で取り上げた、認知症高齢者の不動産取引がらみの事件は、同じ民法の「制限行為能力者/成年後見制度」との関りも深いですが、同時に「詐欺・強迫」など、契約の取り消しができる例外規定の理解も重要です。

さらに「(不動産)売買契約の解除または無効の主張」ができるかどうか? には、たとえば2021年12月試験の過去問4のように、

 ① 手付解除(民法557条1項)

 ② 買戻し特約(民法579条)

 ③ 他人物売買(民法561条)

 ④ 契約不適合責任(民法562条~第564条)

なども関わってきます。

ちなみに、過去問の解説は ↓

 

 

D:上の①~④は、それぞれ独立した項目として取り上げるそうで、今回はまず、

 ・民法の(売買)契約とは? (基本テキスト対応ページ:2 以下、同)

 ・詐欺/強迫 (4)

 ※関連して「不法行為」(204)

を。次回以降は、

 ・(通謀)虚偽表示 (10)

 ・心裡留保 (12)

 ・錯誤 (16)

 ・公序良俗に反する契約 (18)

続いて「債務不履行」など。その後で「契約不適合責任」(上記肢④)を予定しているとのことです。

S: 宅建試験の場合は、上に挙げたどの項目でも、契約の解除/無効/取り消しができるかどうか? が大事なポイントになります。

B)そもそも民法の「売買契約」とは?

S: 基本テキスト(2ページ)にも、『「契約の成立」そのものについて宅建試験で出題されることはない』と書いていますが、宅建試験に出題される「契約」の大部分は「売買契約」(賃貸借契約はいずれ別個で)なので、売買契約に関する民法の条文を紹介しておきます。 ※補足1

第555条「売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」

D:「不動産売買」でいえば、土地・建物などの財産権と代金とが「等価交換」される約束ということですよね?

S: 基本テキスト3ページに、シンプルな図(A:土地⇔B:代金)が載っているので、参考にしてください。

この図の関係を、もう少し法律的な言葉で表現すると、

  Aは、Bに土地を渡す義務(債務)がある/Bは、Aに代金を渡す義務(債務)がある

さらに、

  Bは、Aに対して土地の引き渡しを請求する権利(債権)がある/Aは、Bに対して代金の引き渡しを請求する権利(債権)がある

P: 債務の概念は、先に挙げた「債務不履行」などでも大事そうですが?

S: 「債務不履行」だけでなく、この後も、いろいろと債権/債務関係は出てきますよ。「債権」を基準に(矢印)を書いて関係を整理する方法がおすすめです。

 債権を基準にすると、 A→代金(引き渡し)債権→B / A←土地引き渡し債権←B ですね。

C)詐欺・強迫と善意の第三者

S: 刑事事件の「詐欺・脅迫」は、毎日のように新聞でも報道されていますので、Pくんも、詐欺と脅迫の違いはご存じと思います。

P: イメージはつかめてますが、説明は難しいので、今回は筆者が生成AI(Google gemini)に、「詐欺と脅迫の違い 分かりやすく」できいてみました。

『詐欺とは、相手方を騙して意思表示をさせる行為です。たとえば、オレオレ詐欺のように、お年寄りを騙して孫が困っているとう錯覚に陥らせお金を支払わせる行為などが詐欺に該当します。
脅迫とは、相手方に恐怖心を生じさせる目的で、相手方やその親族の生命、財産、身体、名誉、自由などに対して害悪を加える旨を告知することをいいます。たとえば、「取引をしないとひどい目に遭わせる」などと害悪を告知して、畏怖を感じさせる場合などが脅迫に該当します。
詐欺と脅迫に基づく意思表示は、民法第96条第1項により取り消すことができます。ただし、詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することはできません。また、詐欺による意思表示の取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないとき、または、詐欺による意思表示をした時から20年を経過したとき時効によって消滅します。』(24年7月7日)

S: この答え方だと、大学生の法学レポートとしてもけっこう、通用しそうですね!

ただし、3か所? なところがありました。ちょうど今回のテーマにも関わるところですので、詳しく言います。

(1)民法96条1項の条文は「 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる」なので、刑法の脅迫(罪)と、民法の強迫とは使い分けてほしかった。

(2)民法96条2項「相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。」 

同3項「 前二項の規定による詐欺の意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

とを、うまくまとめてますが…。Pくん、何か気づきました?

P:生成AIの回答は「ただし、詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することはできません。」でしたが、今の96条3項は、「善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。」でしたね。

S:実は、この箇所は2020年の民法改正で、変更されたんですよ。

下記のページの解説では、『詐欺の被害者であるXが、注意すれば詐欺の事実を知ることができた(過失がある)Zに負けてしまうという結論は、不合理ではないかと考えられ、今回改正がされた』とのことです。

 

(3)『詐欺による意思表示の取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないとき、(中略)時効によって消滅します。』の5年間について。

改正民法(2020年施行)の724条

不法行為による損害賠償の請求権は、被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする」

と、

724条の2

人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。」

とをミックスしたことには感心したんですが、「詐欺」は、『人の生命又は身体を害する不法行為』にはあてはまらないので、

『また、詐欺による意思表示の取消権は、追認をすることができる時から3年間行使しないとき、または、詐欺による意思表示をした時から20年を経過したとき時効によって消滅します。』 *補足2

になるはずです。

P:すみません! 724条の「不法行為による損害賠償の請求権」というのが、そもそも? なんですが…。

S:「不法行為」については、基本テキスト204ページ~で、独立した項目として説明されていますので、「不法行為による損害賠償の請求権」と併せて、次のD)でまとめて説明します。

C-1)詐欺による契約は、原則、取り消せるが…。宅建試験で要注意!!

P:そういえば、宅建07 でも、「善意の第三者」や「詐欺・強迫」について、触れていましたね。

 

 

S: そうでしたね。

宅建07でも言いましたが、宅建試験では売主、買主、第三者間の取引で、本来は〇〇だが、例外として、△△を理由にした契約の取り消しができるか? のひねりを加えるパターンがみられます。

詐欺の場合、たとえば2019年の宅建過去問・問1では、

『AがBに甲土地を売却し、Bが所有権移転登記を備えた場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。 ※①②とも(正)
 肢① AがBとの売買契約をBの詐欺を理由に取り消した後、CがBから甲土地を買い受けて所有権移転登記を備えた場合、AC間の関係は対抗問題となり、Aは、いわゆる背信的悪意者ではないCに対して、登記なくして甲土地の返還を請求することができない。
 肢② AがBとの売買契約をBの詐欺を理由に取り消す前に、Bの詐欺について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けて所有権移転登記を備えていた場合、AはCに対して、甲土地の返還を請求することができる。』

ここで、肢①では、問題文のとおり、AはBの詐欺を理由に取り消せる。

その後は、C,B間の対抗問題になるので、宅建07をご覧ください。

P :肢①の、取り消し後の第三者Cについて、問題文でわざわざ「背信的悪意者ではないC」としているのは?

S:「背信的悪意者」も宅建07で触れていますが、「詐欺・脅迫により登記申請を妨げた者」に対しては、Aは登記がなくても対抗できるので、「Cは背信的悪意者ではない」と加えたわけです。

一方で、肢②は、「Bの詐欺について悪意のC」なので、こちらは、民法第96条3項の

「③前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。」

により、詐欺について悪意のCは、そもそもAの取り消しに対抗できません。

ちなみに、この問題は2019年の出題なので、今後は「注意すれば詐欺の事実を知ることができたC」のような表現で出題があるかもしれません。

なお、基本テキストの8ページに、詐欺・強迫で取り消しを第三者に対抗できるか? のまとめ表が載っています。

D)不法行為と、不法行為の損害賠償請求権

D-1)不法行為とは

S: 基本テキストの204ページでは、不法行為とは「故意または過失によって他人に損害を与えること」としています。

P:今回の「詐欺・強迫」以外にも、いろいろありそうですね~。

S:そのとおりです。

下のページでは、

 ・他人を殴ってけがをさせる行為
 ・誹謗中傷をして他人に精神的損害を与える行為
 ・交通事故を起こして被害者にケガをさせる行為

などを、挙げています。

P: もし、誰かが、当ブログについての誹謗中傷をネットに書き込んだら、筆者に精神的損害を与えたことになるわけですね?

S: 実際には「不法行為に当たるか?」の立証は難しいので、もしも被害にあったら次の「損害賠償請求」とセットで、弁護士に相談ですね。

D-2)不法行為の損害賠償請求権

S:そして、Pくんが、ネットで中傷をうけたら、民法709条の『故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。』によって、加害者への損害賠償請求権(被害者→加害者に対する債権)をもちます…もちろん、裁判で請求権が認められれば…ですが。

P:損害賠償請求権の消滅時効は、先のC)に出てきた

改正民法(2020年施行)の724条
『不法行為による損害賠償の請求権は、被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする』

ですよね?
S:そのとおり。詐欺や、Pくんの精神的損害などの消滅時効は、3年ですね。

そして、「他人を殴ってけがをさせる行為」(ただし、正当防衛は除く)などだと、724条の2
『人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。』

によって、5年間になるわけです。

ちなみに、「損害賠償権の相殺」は、宅建試験で過去何度もでているテーマですが、いまPくんに説明しても混乱すると思いますので、「債務不履行」の後で触れます。

D-3 特殊不法行為

S: D-2で説明した(一般)不法行為の他に、民法の条文で規定された、いわゆる「特殊不法行為」があります。

基本テキストにも、

 ・使用者責任(205ページ 民法715条)

 ・共同不法行為(205ページ 民法719条)

 ・工作物責任(206ページ 民法717条)

が載っていますし、下記ページに分かりやすい説明が載っていますので、それぞれご覧ください。

 

 

P:「共同不法行為」というのは、「不法行為」を共同で行ったということですか?

S: ここは、民法の条文を見た方がてっとり早いですね。

民法719条

『・1項 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。 共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。 

・2項 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。』

たとえば、大学構内で3人でキャッチボールをしていて、ボールがそれて研究棟の窓ガラスを割った…というときは、その3人が連帯して、損害賠償しなくてはなりません。

P: 実際に投げた本人だけでなく、3人が共同で責任を負うわけですね?

S:そうです。もし、3人以外に、グループで教唆(ここでキャッチボール平気だよねと、そそのかす)や幇助(ほうじょ:ボールひろい?)した者も、同様に責任を負います。

被害者(大学当局)は、加害者全員に、損害の全額を請求できます。

P:全員に一斉に請求していいんですか?

S:被害者が取りはぐれのないように、わざわざこういう条文があるわけです。

たとえば、5万の請求だとして、どうやってお金をだしあうか? は3人の間の問題で、被害者の関知するところではないですよね。

P: 確かに、ぼくが被害者の立場なら、やっぱり「とにかく、さっさと全額はらえ!!」と言いますね。

S:宅地取引の例は、上の不動産保証協会(埼玉)の記事に載っています。

 

P:次回は、
 ・心裡留保 (12)
 ・錯誤 (16)
 ・公序良俗に反する契約 (18)

を予定しています。

 

【補足】
補足1:民法の「典型契約13種類」と非典型契約について。

 

 

補足2 民法126条 『取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様とする。』

【BGM】

S選曲:My Little Lover 「Hello, Again 〜昔からある場所〜」

P選曲(D推奨):神はサイコロを振らない 「1 on 1」

※2020年8月掲載の記事「就活S feat.機電系D 22卒・機械・電気電子・情報は「推薦」を使うべきか?」を、26卒向けに24年6月に改訂、9月に加筆しました。

自治体まで「大学推薦枠」で、機電系争奪に参戦したR7年度の動向はこちらから

 

2020年8月、コロナ騒動の前にいちはやく推薦で某大手メーカーに内定したDくんに、機電系の就活(21卒)とくに、機電系の特長といえる推薦制度について聞きました(文末に内容を再掲載)

 

21年4月からは、首都圏の某所でエンジニアとして働きはじめたDくんも無事入社3年を過ごし、このたび都内に出張というので、上野駅付近でランチ(ちなみに、夜は同期会だそうです)。

しかし、この時期になぜ? わざわざ全国の若手社員が東京本社に集合するのか?

もしかして、26卒の採用がらみか?

どうせ聞いても、肯定も否定もしないであろうDくんと、まずは25卒について。

 

P:マイナビのデータによると、6/15時点で、25卒の内々定率が全体80.8%、理系87.4%だそうです。

そして、就活サイト・ワンキャリアのホームページ(6/20)には、「サマーインターン佳境」の文字が。

こっちは、当然26卒向けですよね。

D:「メーカー」で検索してみたら、6/30締め切りの会社や、早くも「2次募集」と書いてる某半導体大手メーカー。早期選考特典ありの1Dayインターンなど、各社さまざまですね~。

P:一方で、機電系専門の就活サイトUnivaは、現時点(6月末)では、イベントの情報なし。

※24年10月時点で、関東での有力企業が参加するイベントが増えてきましたね~

 

 

D: 「夏季シーズンのやり残しを無くし、焦燥感を払拭して10月以降の選考に挑めるように」(上記ページ開催趣旨より)

ですか~。 

P:「売り手市場でもあるため9月頃から早期選考が増え始めます」とも書いてますので、26卒機電系の就活は、この9月から企業研究や業界研究は、しておいた方がよいかな?

D:21卒の僕の場合でも、10月ごろから「先輩(リクルーター)」が、学部に来られてましたしね。

もし、興味のある企業の「先輩」が学部や研究室においでになったら、その時がベストタイミングということですので、とにかく話に食いついてみることを、お勧めします。

●リクルーター制のメリット・デメリット

P: 機電系の就活は、学部(学校)推薦が特徴なんですが、リクルーター枠は「推薦」とは別と、以前の記事(文章末に再掲)で聞きました。

その時は、Dくんは「就活する側」でしたが…。

D:リクルーターは学部の先輩ですので、けっこう遠慮なく会社の内情を質問できました、ぼくはそれに納得して、推薦応募を決めました。

P: ただ、途中で断りにくくなる気はしますが…。

D: メーカーといっても、社風はさまざまですし、機電系といっても機械・電気電子のジャンルは幅広いので、ウチの社風にぴったりで、専攻もマッチしているという学生への勧誘は熱心になるし、良い学生なんだけどウチの職場で長く働けるかな? という人には、先輩のよしみで遠回しにアドバイスしてあげるかもしれません…。

ただ、同じ会社内でも、事業所によってまったく雰囲気の違う職場もあるので、あくまで自分の職場について、になりますが。

P:ご友人のZくんは就活中、某メーカーの人事(M社からの転職組)の方に、就活合同セミナー会場の片隅で、「君は、この会社よりM社の方が向いている」と言われて、喜んでいいのか? 落ち込んだ方がいいのか? 複雑な心境になった…と言ってましたね。

●企業研究と「就活の軸」のは、早めにしておくと、「推薦」応募も迷わない

D: もし、今の院での研究の延長線上の仕事(開発も含め)をしたいのなら、専攻か研究室ルートで、夏か冬のインターンシップに参加することを、お勧めします。

ぼくの職場の他部署Aで、22年夏インターンシップで約1週間働いた学生が、今年の4月1日、当然のようにぼくらの部署Bにもあいさつに来てました。

ぼくの会社は、ジョブマッチング制ではないんですが、〇〇業界では有名なN先生の研究室の学生が、わざわざインターンシップに参加して、そのまま、わが社を志望してくれるのなら、当然、部署Aに配属する…という配慮はあったと思います。

逆に、トヨタは研究室とのパイプが強すぎて、推薦廃止、自由応募のみに変更したようですが、自動車業界はガソリンエンジンから、自動運転や電気自動車への大転換の途中という事情があります。

 

ぼくの会社でも、某新規事業については、昨年、かなりユニークな人材を採用したと聞いています。

P: データサイエンス系とか、大学の学部・専攻も変わってきましたからね。

そして機電系の場合は、今の自分の研究と直結する企業以外に、上述のデータサイエンス人材とか、さらに文系よりの仕事も含め、いろいろな選択肢がありますよね。

ちなみに、21年の記事で、YKKの募集職種をZくんやDくんとチェックしました。

今年も同じURL

 

で、職種案内が載ってました。

D: ぱっと見て、分かりやすい紹介になってますね。

機械系だと、

・生産技術(工場マネジメント、製造ライン開発)

・商品開発(新商品の企画・開発・設計)

・機械設計(商品の製造設備・製法・金型の設計・開発)
・解析技術
・生産管理 (生産設備の受注業務および生産計画立案)
電気電子系だと、
・生産技術(工場マネジメント、製造ライン開発)
・電装開発・制御・画像処理システム開発(商品の製造設備開発)

・情報システム

・生産管理  (生産設備の受注業務および生産計画立案)
あと、材料系を除く「その他理系」は、
・生産技術(工場マネジメント、製造ライン開発)
・情報システム
・購買・調達
と、けっこう違いがあることも、一目瞭然です。
P: その他理系でもOKの
 「生産技術」(工場マネジメント、製造ライン開発)
と、機電系のみの
 「生産管理」(生産設備の受注業務および生産計画立案)
との違いは、どんな感じですかね?
D: もし、ぼくの会社だったら、表現は違うかもしれませんが、
  生産技術=現場の工場での、マネジメント、製造ライン開発
  生産管理=本社部門での、生産設備の受注業務および生産計画立案
というニュアンスでしょうね。
P: 文系の友人から、銀行・証券会社で、入社直後の配属先が本社・超有力支店配属か、地方支店配属かの差は大きい! と聞いたことがありますが。
D: ぼくの同期だと逆に、E県に工場があるからと、E国立大出身者が何名も入社しています。
実質、地域限定だから「生産技術」を選ぶケースも多いと思いますよ。 
要は、何を優先して、就活をするか? の軸。これは、とにかく早めに決めておいた方が良いと思います。
もし、ぼくが地元の県にUターンをする気だったら、まっさきにG社に応募してましたね。
P: Dくんは、大学での研究を生かせる技術・開発職を希望して、いまや「桃栗(3年)」に到達、これから「柿(8年)」へと向かうわけですが、現時点での26卒へのアドバイスは?
D: 基本的なアドバイスは、以前の ↓ と変わりません。
この記事の当時はコロナ騒動の最中でしたが、機電系の場合は、企業を選ばなければ「教授推薦」という、奥の手もありますので、公式就活解禁日(3月1日)ww からスタートでも間に合うかもしれません。
けれど、入社後に納得できる職場を探したいのだったら、夏休み中に就活の軸を漠然とでもいいから考えて、秋から始動を始めた方が良いとは思います。
秋冬インターンシップも、いろいろな会社で開催されるはずです。
 

【BGM】

D選曲:水曜日のカンパネラ 「エジソン」

P選曲:Gigi D'Agostino 「The Riddle」

【写真】上・中=提供:Pixabay、下:筆者(デ・キリコ展とパンダのポスターが同居する、上野駅構内。これに科博の「昆虫展」が加わり、上野公園おそるべし!)

 

【参考:2020年 過去記事の内容を再掲 あくまで、2020年時点の情報です】

●1 機電系でも、やはり早期選考は有利

●2 機械・電気・情報工学系に多い「推薦」制度とは? 枠とは? 「推薦または自由」とは?

●3 「推薦」との合わせ技: リクルーター制度、ジョブマッチング

●4 「推薦」カードを使う?

 

●1 機電系でも、やはり早期選考は有利

D: ぼくの場合は、今年2月、コロナ騒動が本格化する前に学科OBルートの「早期選考」(推薦あり)で内々定をもらえたので、22卒の参考になるかな?

P: 「そもそも推薦とは? 」とか、「リクルータ」、「マッチング」など、聞きたいことはいろいろあります。

それに、Dくんと同じ研究室のyくんは、6月中旬くらいまで就活---ただし、5月中旬に推薦応募して、約1か月で大手企業の技術職の内々定をもらったそうで、修士1年4月(夏インターン応募準備スタート)から今年6月までの長丁場「就活」をしていたZくんが驚いてました。

D: 実はyくんも2月の早期選考(推薦あり) L社のあとの

  ・M社 3月~5月の選考(推薦あり) 

でも面接落ちしていたんですが、3度目の正直? でのN社内々定でした。

コミュニケーション能力とか学力とか、ぼくら同期の中でも平均以上でしたから、なんで落ちたか不思議でした。

P: 今年に限っては、コロナ騒動の影響で、急に選考のハードルを上げた企業もあったでしょう。

たとえば、三菱重工は、国産航空機「スペースジェット」の開発を縮小、最悪、完全撤退というニュースが最近(7月)、報道されました。

水面下(20年の2月~6月)では、三菱重工の一部の部門や、子会社を受けた21卒にも影響があったかもしれません。

でも、就活生には、自分側の問題なのか?(推薦利用でも、普通に落ちますよ) 企業側の都合なのか? は分かりませんよね。

ただ、yくんは、早期選考(推薦あり)でNoといわれたおかげで? 立て直しまでに計3回のチャンスがありました。

「推薦」の場合、これもあとで聞きますが、自由応募 との併用をどうするか? という問題があります。でも1~2月の早期選考は、「推薦」のみ(第一志望)を受けて、だめなら3月から推薦+自由応募併用への切り替えもできます。

 

●2 機械・電気・情報工学系に多い「推薦」制度とは? 枠とは? 「推薦または自由」 とは?

P: そもそも「推薦」制度とは? は、こちらのリンク先(理系ナビの記事)にまとめられています。

当ブログの記事でも、これまでも断片的に「推薦」制度についてふれています。

ただ、公式な制度ではなく大学/学部/学科と個別の企業との「約束」ですから、けっこう中身は違うはず。

たとえば「教授推薦」。

D: ぼくの研究室だと、歴代先輩は学科推薦であっさり決まってましたので、教授にお願いする必要がなかったですね。

P:  企業と共同研究している研究室では、その企業への特別ルートがあったりします。

以下はもっともポピュラーな、

  学科に企業が求人票を出す→学生が1社を選んで、就職担当の教授に推薦状を書いてもらう→学生が企業に推薦状を提出して応募

のパターンです。※1

「推薦制度」を使うか? 迷っているみなさんも含め、まずは自学科の「求人票」をチェックしてみましょう。 ※2

 

(2-1) 推薦枠

P: そして、求人票には、

  推薦あり 5

などと、謎の数字が書いてあることも。

D: そうですね。表現は違うかもしれませんが、

  推薦または自由

  推薦応募のみ

  自由応募のみ

  推薦 2 応相談

  推薦(学部1  院生3)

など、企業によって募集条件がけっこうばらばらでしたね。

このうち「推薦」とだけで数字が書いてないときは、応募数の制限なし。

つまり、同じ学科内から何人推薦応募してもOKです。

一方、5とあれば、学科から最大5人まで、推薦応募が可能。

これを、ぼくらは「枠」(わく)と呼んでました。

P: 学科内で、その会社を第一希望にする学生数が「枠(上限5)」以上いれば、学生同士の話し合いで5人を決めるケースが多いですが、慣例では「成績順」かな?

D: ぼくの学科では、就職担当教授の「調整」でしたが、教授の判断基準はやはり「学部の成績順」。

当事者としても、これがもっとも公平な気がします。

ただ「枠」より、希望者が多かった会社は、数社だけでしたが。

それに、ぼくのようなOBルートの場合、Q社は「枠数」に入れないそうです。

P: 首都圏国公立大学の工学系だと、求人票は数百社きます。※3

学生は、せいぜい1学科 100人くらい。

22卒では多少枠数を減らす企業もあるかもしれませんが、

    推薦枠数 >>> 学生数 

の状況は、変わらないと思います。

 

(2-2) 「推薦または自由」とは

D: 「推薦または自由」は、推薦と自由応募どちらも可能です。

yくんは、3月~5月のM社推薦応募と並行して、求人票に「推薦または自由」と書いていたO社とP社に自由応募もしていました。

ただ、自由応募の2社は、

  ・ES(エントリーシート)に書く文字数が多い

  ・選考スピードが遅い(コロナ騒動の影響もあったと思いますが…)

  ・選考ステップが4ステップ以上。「推薦」だと面談確約で、人事→技術→最終面接 とか 

『明らかに、面倒!! 』といってました。

P: 企業側にとって「推薦」の最大のメリットは、「いったん推薦応募した学生は、企業が不合格にしない限り、内定辞退もできない」。

つまり、機電情の学生は、推薦応募した瞬間に、生け簀の中の魚になってしまうわけです。

逆に、生け簀におびき寄せる? ために、さまざまな優遇措置(撒き餌)が用意されています。

「推薦または自由」と書いた企業からすれば、『なぜ推薦応募しないの?』 ということで、自由応募の学生は、いろいろな点で不利かもしれません。

筆者が自由応募する(滑り止め)なら、単に「自由」と書いている会社にします。

D: では、なぜわざわざ「推薦または自由」とするんでしょう?

P: そこは市場原理、つまり需要(企業の求人)と供給(応募学生)との関係でしょう。

一般に、 企業の需要は、

   理系  >>  文系

ですが、中でも 機電情 は、

   機械・電気電子・情報工学  >> 理系一般  >>文系

です。

一方、学生の人気=企業への応募数 には大きな差があります。

 そこで、機電情 といえど、

  理系学生に超人気の会社 → 自由応募のみ 例:ソニー

ですし、「推薦」についても、

  理系学生に人気  → 推薦 「枠」あり 例:2019年までの鉄道会社

  理系学生の標準  → 推薦または自由 (推薦だと優遇措置あり) もしくは、単に「推薦」

  理系学生にやや不人気 → 自由 (推薦応募=第一志望ではどうせ応募がない=滑り止め覚悟)。

  ※なお、外資系企業の場合は、自由応募&通年採用が多い(例:Bosh)

と、会社側が忖度した結果が、謎の「推薦または自由」 なのかも(あくまで、筆者の見解です)。

ちなみに、A社は、B大学のC学科の求人票は「自由」。一方、D大学は「推薦5」などと、大学・学科によって差をつけてるはず。

D: ぼくらは、そこまで考えてなかったですね…。

22卒のみなさんは、まず21卒の「求人票」で、どの企業が自学科には、どんな求人をしているか? チェックしてみるといいでしょう。

P: Dくんの言う通り、21卒向けの求人票で自学科を、企業がどれくらい「評価」しているか? はつかめますよ。

そして、22卒の求人票は、遅くても1月くらいには学科内で閲覧できるようになると思います。そこで、21卒求人内容と同じか? 比べてみましょう。

たとえば鉄道会社や海運(商船三井とか)など、コロナ騒動の余波で、いろいろ変動要素があり、その影響は、「求人枠」へ反映されるはずですから。

 

 

●3 「推薦」との合わせ技: リクルーター制度、ジョブマッチング

(3-1) リクルーター制度のメリット・デメリット

P: Dくんの場合は、Q社のOBが学科内で11月に説明会を開いてくれて、そこからQ社のリクルータルートで「早期選考」(1月~2月:コロナ騒動前に逃げ切り内々定)を受けたわけですよね。

D: いわゆるリクルーター制度も、各社いろいろあるようですが、メリットとしては、

 ・OBが事前に社内情報をくわしく説明してくれる(学科の先輩なので、○○部署、研究部門の話も聞ける)。 

 ・社内見学 ぼくは、コロナ騒動前なので、1次(人事)面接のときに、OBのご厚意で面接会場周辺を見学させてもらえました。

 ・会社によっては、ES(エントリーシート)の添削、面接対策(技術面接のポイント)もリクルーターがアドバイスしてくれる

 ・会社によっては、面接で落ちてもフィードバックをしてくれる

 ・部門別採用の場合は、複数回(別部門)チャレンジのチャンスがある

などです。

デメリットは、推薦応募一択 という点ですね。

P: リクルーター制度と「推薦」は表裏一体。

さきほど言った「囲い込み」の手段のひとつで、

企業のHPに、書いている大林組 ↓

https://www.obayashi.co.jp/recruit/shinsotsu/information/schedule.html

とか、日本触媒 ↓

https://www.shokubai.co.jp/ja/recruit/graduate/special/work/muroi.html

など以外にも、昔からけっこうな数の会社がOBを出身学科に派遣して「一本釣り」しています。

一部のハイスペック学生には、文系を含めインターンシップ参加後にリクルータが付いた…という話は聞きますよね。

 

(3-2) ジョブマッチングとは?

D: 学科の同期は「ジョブマッチング」で応募。

最終面接(役員面接)前に、推薦状の提出を求められたそうです。

P: ジョブマッチングについては、一般的な推薦との違いも含めて、こちらの記事の説明がわかりやすいでしょう。

簡単にいえば、大企業の「部署」・「技術職種」単位で応募できる制度です。

メリットは、

 ・自分の専攻に近い部署・職務への配属が予約される

デメリットは、

 ・少ない枠を、同じようなスペックの学生で奪い合う

人事ではなく、応募した職場が主導して採用業務をするケースが多いので、内定辞退されないように、原則「推薦」応募です。

D: でも、最初から推薦応募でなく、途中からなのは、なぜでしょうか?

P: マッチングという言葉は、マッチングサイト(お見合いサイト)を思い浮かべると、わかりやすいかも。

お見合い候補は複数いても、お見合い(面接)は1対1で、お互い断っても良い。

つまり、話し合いの結果合わないと思ったら、学生の側からも「No」といえます。

「採用部署」の担当者(エンジニア)とのすり合わせの結果、双方がOKとなったら、役員面接にすすみます。役員のOKが出てから、内々定辞退されると採用部署が困りますから、「役員面接前」に、推薦状を出してもらうのでしょう。

一方、リクルーターの場合は、OBはあくまで業務=時間給発生 で、学生の勧誘・サポートをしているわけですから、OBのサービスを受ける学生の側にも、対価=推薦状をはじめから払ってもらおうと考えますよ。

筆者は仕事の上で、ますます 

   等価交換の原理 by 鋼の錬金術師 

を意識するようになりました。

文系でも理系でも、「就活」では

  企業から給料をもらう「対価」として、自分は何を「対価」として提供できるか? 

を考えておくと、ESでの「自分の強み」や「ガクチカ」が書きやすいと思います。

 

そして、機電情についていえば、企業が期待している「対価」は、なんといっても、「専門知識」です。

専門知識に対する評価の高さが、「推薦」制度に現れているわけで、学部生より院生が圧倒的に有利な理由でもあります。

 

●4 「推薦」カードを使う?

P: 最後に、Dくんとしては、22卒・学科の後輩から推薦応募をすべきか? 尋ねられたら、どうこたえますか?

D: 今、Pさんの話を聞いた上での答になりますが、

  「漠然と、推薦応募か自由応募か? とか考えないで、まずどんな会社に行きたいか? 考え、行動してみよう」。

ぼくの場合も、OBの話を十分聞いて、納得できたから推薦応募したわけです。

…もし来年5月になっても、後輩が苦戦してるようなら、『まだ推薦応募できる企業を就職担当教授に聞いてみたら? 』 とメールしますが…。 ※4

 

●2020年12月 関連記事 トヨタが大学推薦全廃!? 

 

※0 Dくんのプロフィールは、過去の記事に掲載

※1 Dくんの追加コメント 「21卒だと、学科公式の推薦状発行は〇月□日から でしたが、実際は、ぼくやyくんほかの早期応募組が、就職担当の教授から 推薦予定メールを企業あてに送ってもらいました。」

※2 M1(22卒)でなくても、B1からの学部生でも、自学科の求人票は見られるはず。

※3 21卒首都圏国公立大学・工学系のZくんが数百社といってました。工学系の他の学科より、機電情の学科の方が求人数も多いはずです。

ちなみに、私立 立命館大学工学部電気電子工学科への求人は7500社だそうです。院生の就職先は、本「就活S」シリーズでDくんやZくん、筆者が言ってる「大手企業」のイメージに近いです。

※4 お盆前、Dくんの研究室の後輩(M1=22卒)から続々と、「9月〇日は就活のため、研究室活動を欠席します」という、連絡メッセージが届いているそうで、明らかに現M2=21卒より、出足が早いようですね。

【写真】

●2上 広島県観光ナビサイト 「ほたる見公園」

https://www.hiroshima-kankou.com/spot/4171

そのほかの写真は Pixabay 提供

BGM

D選曲 乃木坂46 「アナスターシャ」

P選曲 サイダーガール 「メランコリア」 ゆらぐるダンス完全版

※宅建Tシリーズと「基本テキスト」については「序章」をご覧ください。

A)不動産会社の仕事に「空き家管理業」が増える?

P:前回(宅建15)は、一人暮らしの高齢者が認知症になると、トラブルにあいやすく、かといって「住み替え」をしようとしても手続きが大変になる…という話でした。
今回は、所有者が分からなかったり行方不明の土地や建物の管理についてですが、ちょうど「空き家管理」についての新しいニュースが報道されて、急きょ加筆修正しました。
S:下記の報道(6月21日・読売新聞)です。
なにかの事情で「空き家」になったお宅の、建物・庭などの管理について、国交省が「ガイドライン」(手引き)を定め、「空き家に関する相談・管理業務でも、報酬が得られる」と明記することで不動産業者に「空き家管理業」に算入してもらう狙いだそうです。

 

 

P:え? 逆に今までは、管理料がもらえなかったんですか?

S: 宅建業者の売買仲介手数料などの報酬や必要経費、現地調査費(※補足1)などについては規定されていましたが、上の記事に書いてあるように 「空き家に関する相談・管理業務」は明記されていませんでした。 

P: なるほど、それで「不動産業者の1/3は、無償で管理を引き受けていた」わけですね。

S: 地方ですと、空き家の元の持ち主と生前親交があったとか、相続問題が片付けば売買は任せてもらえるからとか、いろいろな事情と、半分は厚意で無償管理してきたかもしれません。

でも、それでは不動産業者の仕事としては広まりませんよね。

そこで、国交省が「不動産業者による空き家管理受託のガイドライン」

https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001750009.pdf

を策定しました。

P: 管理サービスの料金まで決めているわけではないですね?

S: そこは「契約」によりますが、今までも、自治体によってはNPO法人と空き家管理についての協定を結んだりしていますので、依頼したい方は、お近くの自治体のHPなどから、その地方での管理サービスの相場は確認できると思います。

それと、「空き家」について相談窓口のある都県・市町村は多いので、まずは「相談」ですね。※補足3

↓ 東京都の相談窓口

B)所有者不明土地問題

B-1) 「所有者不明土地問題」から、民法などの改正が進行中
P: 上のA)は、元の持ち主が亡くなって「空き家」になった後、たとえば遺産分割の話し合いがこじれて売れない…などのケース。
一方で、このB)は、そもそも所有者が分からない土地・建物についてだそうですが、日本にそんなにあるんですか?
S: 令和4年度で、不動産登記簿では所有者が確認できなかった土地の割合が、約24%だったそうです! 
P: それもあって、「相続登記の義務化」(宅建03)が今年4月からスタートしたと。
S: そうです。
これまでにも宅建06で、相続などで土地・建物が共有状態になり、その共有者の中に所在不明の方がいた場合の共有物の管理や不動産の処分については説明していましたが、所有者不明土地問題は、2023年の民法改正(以下、23年改正)・不動産登記法改正など、24年以降の宅建試験でも出題が予想される箇所と関連が深いので、まず下記のページで、問題の背景をご理解いただければと思います。
P:上のページに、所有者不明土地が生じる主な原因として、
 ①土地の相続の際に登記の名義変更が行われないこと
 ②所有者が転居したときに住所変更の登記が行われないこと
があって、そもそもS家も ↓ の状態なんですよね。
S: 長年、固定資産税をはらってますので、「所有者不明土地」にカウントされてたら心外ですが! 補足3
「相続登記」をしてなかったのは事実なので…。
P: 政府の対応のその1が「相続登記の義務化」。これは、宅建03で取り上げました。
対応その2が「相続土地国家帰属制度」。
S:こちらは、宅建02で、Pくんが「いずれお世話になるかも?」と発言してましたが、くわしい紹介はしてませんでしたので、この機会に生成AI(Google gemini)に、「わかりやすく」で、説明してもらいました。
『相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈によって土地を取得した人が、一定の要件を満たしている場合に、その土地を手放して国に引き渡すことができる制度です。不要な土地だけを手放すことができ、管理の手間や税金の負担がなくなります。(中略)
制度を利用するには、国庫への帰属申請を行い、法務局の審査を経て承認を受ける必要があります。申請には、土地1筆あたり14,000円の審査手数料と、承認を受けた場合の10年間の土地の管理費用相当額の負担金がかかります。また、引き渡せる土地の要件が細かく決まっており、満たさない場合は利用できません。
相続土地国庫帰属制度と似た制度に相続放棄がありますが、相続放棄はすべての遺産の相続を拒否する制度であるのに対し、相続土地国庫帰属制度は遺産を相続しつつ、使わない土地だけを国に引き取ってもらう制度です。』(24年6月21日)
P: しっかり相続放棄との違いも説明してくれていますね! 
そして対応その3が、「民法のルール見直し」(2023年4月1日施行)。
S: 上の政府広報ページの順ですと
 ①土地・建物に特化した財産管理制度の創設=所有者不明土地・建物の管理制度
 ※共有制度の見直し →宅建06で書いたように、今後別対応予定
 ②遺産分割に関する新たなルールの導入
 ③相隣関係の見直し
です。

B-2①)所有者不明土地・建物の管理制度

S:いままでも、不在者財産管理人(民法25条①)などの規定はあったのですが、今回のテーマのように、空き家や所有者不明土地の問題などが深刻化してますので、土地・建物に特化した管理制度を別に創った(改正民法264の2~264の8)わけです。

 

 

昨年(23年)の宅建試験(問5)では、↓ のように、民法25条の「不在者」が出題されましたが、これを所有者不明土地管理制度の管理人(改正民法264条)に置き換えて、考えてみるとよいかな? 

ちなみに、所有者不明土地管理制度では、管理人の選任が必須です。

不動産取引推進機構HPより

P:ごみ屋敷のように、所有者がいても管理が不十分な土地・建物の管理制度もあわせて創設されたそうですね?

 

B-2の1.5)管理不全土地・建物
S:「管理不全土地・建物管理制度」(改正民法264条の9~第264条の14)ですね。利害関係人の請求により、裁判所が、管理人による管理を命じることができるようになりました。
前出の2つの管理制度との違いが、大阪府の資料(PDF) ↓ に載っていましたので、参考にしてください。
P:どこからが管理不全か? は、線引きが難しい気はしますが…。
S:前回(宅建14)で、認知症高齢者の一人暮らしの危険性(不動産の押し売り・押し買い)を話題にしましたが、認知症高齢者ですと、ごみ屋敷とまではいかないけれど、毎日のように間違ったゴミ出しをするお宅が、実際にS家のご近所にもあります。
たとえば、東京・武蔵野市には、高齢者のゴミ出しを支援する制度があるようです。
迷惑なときは、いったん市町村にご相談してから、この制度は最終手段ということで…。
 
B-2② 遺産分割に関する新たなルールの導入
S:宅建05で、遺産分割は説明しましたが、上の記事にでてきた「具体的相続分」については触れてませんでした。
P:「法定相続分」は、宅建04ででてきましたが…。
S: 相続は、ただでさえ「相続欠格/相続廃除/相続放棄」など、例外処理? があるので、「具体的相続分」にはふれていなかったんですが、たとえば「生前贈与を受けたこと(特別受益)や、療養看護など特別の寄与をしたことなどの個別の事情」があれば、それを「具体的相続分」として考慮して、最終的な相続分を決めようという考え方です。
ただ、それぞれの家族の事情が複雑すぎて…、それが遺産分割が進まない一因でもありました。
それで、被相続人の死亡から10年が経過した後は、原則として具体的相続分を考慮せず、法定相続分(または遺言など)で遺産分割することに変更されました(改正民法904条の3)。
P: Sさんが、宅建12(イェーリング:権利のための闘争)で話されてたように、文句があるなら、さっさと裁判で決着をつけろということですね。

B-2③ 相隣関係の見直し

S: 昨年(23年)の宅建試験の問2に、さっそく出題されてます。
くわしくは下記の、解説記事をご覧ください。

P:Sさんが、宅建02(補足1)で話題にしていた、隣地からはみ出した木の枝を切れるか? 問題が、肢2で出てますね~。

S: これも、今回とりあげた「空き家」問題や「管理不全土地・建物」への対処の一環で、催告すれば、手入れされていないで越境してきた隣家の枝などを、自分で切れるようになったわけです。

P: 次回(宅建17)以降は、前回話題にした高齢者をねらった「不当契約」事件もありましたので、基本テキストの「意思表示」(契約、詐欺・強迫など)を予定しています。

 

【補足】

補足1 基本テキスト・宅建業法 134ページ~ 「報酬額の制限」。そして、142ページに「(低廉な)空き家等特例」の説明が掲載されています。ここが、宅建試験の計算問題で出題されると、たぶん面倒なのでご参考に ↓。

 

 

補足2 国交省のプロジェクトページ

 

・補足3 

 

 

 


国交省HPより 図(部分)
昨年(23年)12月に、「空家等対策の推進に関する特別措置法」の一部改正がありました。この改正については、夏ごろに、今年度の試験対策(改正点情報)として、ネットで話題になるようなら、リンクを紹介する予定です。

【参考】

23年民法等の改正点まとめ

法務省・民事局作成。分量は多いですが、説明が分かりやすいので、適宜ポイントを拾い読みすると良いでしょう。

文書の冒頭に、「所有者不明土地の解消に向けた法の見直し」である旨が書いてありますね。

https://houmukyoku.moj.go.jp/matsuyama/content/001344983.pdf

【BGM】

S選曲:Robbie Williams  「Angel」

P選曲:くるり「ばらの花」  P&S選曲:くるり×小田和正 「ばらの花」

【写真提供】

Pixabay