仲俣申喜男さんの「夜の鳥」を弾きに、昨日から北軽井沢に来ています。
今日録音するのですが、昨日初めて、仲俣さんが生前愛用していたアンティークのエラールを試弾させてもらいました。
ピアノの方から心を開いてくるようなピアノでした。
アンティークのピアノはタッチにもそれぞれ個性があるので、弾きにくいことを覚悟していたのに、想像と違って素直でクセがない。
明るく伸びやかな音。
粒立って飛び上がってくる音。
仲俣さんが無念な感じで亡くなってしまっていることや、ピアノも長く放置されていたことや、残された曲は「夜の鳥」という難解な現代音楽ということなどから、
わたしの曲に対するイメージは、暗く不気味な深夜の森、死の気配だったのです。
でも、ピアノを弾いて気付いた!
この曲の夜の暗闇は、生命が誕生する前の生命力みなぎる暗闇だ。
このアンティークのエラールは85鍵盤、現代のピアノの88鍵盤より高音の数が3つ少ない。
「夜の鳥」の曲の中の最高音は、このエラールの一番高い音ぎりぎりまで使い切ってる。
「夜の鳥」をこのピアノで作曲したことは間違いないだろう。
ピアノはこの曲を知リ尽くしてる。
夜ホテルに戻って、もう一度楽譜の後ろの仲俣さんのメッセージを見てみました。
その中の一文。
「夜は、依然として太古からの神秘の力を保ちつづけているのを、ひしひしと感ぜずにはいられない。」
仲俣さんが曲に込めたのは「太古からの神秘の力」。
彼のメッセージは、彼の息のかかったエラールに宿っていました。
ピアノは知っていた。
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