忘れられない鳥がいます。
昨日、仲俣さんの『夜の鳥』の出現で思い出しました。
先日ブログで書いた、ポンポンさんの故郷ソーリューを訪れた時に出会った鳥です。
仲俣さんが作曲したのは『夜の鳥』ですが、わたしが出会ったのは夜明けの一番鳥。
その鳥の歌声に憧れて、メシアンの『鳥のカタログ』を曲目に組み込んだリサイタルを2006年に開催しました。
その時のプログラムノートに載せた文章『夜明けの鳥のエクスタシー』を引っ張りだしてみました。
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『夜明けの鳥のエクスタシー』
夜明けに出会った一番鳥の歌が、今回のプログラムのきっかけとなりました。
パリから南へ二時間ほど車で行くと、ソーリューという町があります。その小さな田舎町のホテルで、一羽の鳥に出会いました。
ふと目覚めると午前4時。初夏の夜明けの気配。窓の外に広がる静寂の中に、ちらちらと動く影がありました。
窓辺にそっと近づいて、カーテンを揺らさないように外をのぞくと、一面芝生の中庭の中心に一本の高くて細い木があり、そのてっぺんに一羽の鳥がとまっています。ぴんと張った長い尾と柔らかそうな胸、片手に乗るくらいの大きさでしょうか。得意げに胸を張ったシルエットは、中庭全体を監視するようにあちらこちらに目を配っている様子です。
しばらくして空がわずかに明るくなってきたころ、突然、鳥の動きが止まりました。そして、全身を震わせて一息で、長い長いフレーズを歌ったのです。活きのいいメロディーが響きわたります。それを合図に、姿の見えない他の鳥たちがいっせいに合唱をはじめました。
気付くと、空は青白く澄んでいました。彼の一声は夜明けの合図だったのです。
のびのびと体をそらせて歌い続ける、一番鳥の歌声の色あざやかなリズムに憧れて、メシアンの“鳥のカタログ”をプログラムの中心にしました。
メシアンの鳥たちの歌を弾きながら、鳥の気分になって上空から世界を眺めたとき、ドビュッシーのプレリュードの中に息づく自然や、チャーミングな登場人物たちが見えてきました。プログラムの後半では、そのドビュッシーの語るお話の世界で、遊んでみたいと思います。
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後日、この鳥の名前がクロウタドリだと知りました。
写真はクロウタドリ(ウィキペディア掲載画像)。
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