昨日、一冊の楽譜が私のところに来ました。
持って来たのは、プレイエルのピアニーノを修復した和田さんです。
現在和田さんが修復中のエラールのグランドピアノの元持ち主が仲俣申喜男(なかまたのぶきお)さんという作曲家で、その方の作品の楽譜です。
残念なことに、仲俣さんは数年前に倒れて以来、意識不明のまま。
身寄りもないので家を処分する際、エラールは和田さんのところに来たとのこと。
仲俣さんの形見のようなエラールの修復が完成したら、誰かに買われてしまう前に、仲俣さんの曲を演奏してあげたい、というのが和田さんの思いです。
しかし、残されたのは難解な楽譜のみ。
録音された音源は残っていません。
仲俣さんの少ない情報のなかに「パリでメシアンに師事」というのがあり、私がたまたまブログでメシアンのことを少し書いたことから、楽譜が私のところにやってくることになりました。
そのブログはこちら。
一目で現代音楽とわかる楽譜。
複雑な数式を前にした気分です。
その楽譜を前に、意識不明の仲俣さんのことを考えてみました。
わたしが仲俣さんだったら。。。
真っ暗闇の中でいま何を思う?
生涯をかけた作品も、大切なエラールも、貴重な蔵書も、懐かしい家も、何もかも、無くなってしまう。
いや、楽譜だ!
楽譜がある!
楽譜は分身だ!
他の人間の解釈がいっさい介入しない本物の情報のみを、音符という記号に変換して閉じ込めた楽譜を、未来のいつかの誰かに託す。
楽譜があれば十分じゃないか?
そうか。
この楽譜は仲俣さんの分身として、暗闇から軽々と時空を超えて来たのだな。
『夜の鳥』というタイトルを聞いた時、なんでこの楽譜が私のところに来たのか、わかったような気がしました。
この曲を迎える準備は、私の中で、20年以上前から始まっていたみたいです。
つづく
写真は、敬虔なカトリック教徒でもあったメシアンが、生涯オルガンを弾いていたパリのサント・トリニテ教会に去年訪れた時のもの。
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(一日一即興757日目2019年1月4日)
~ 水に映る雲ゆれる The clouds are reflected in the swaying water ~ 雲の船 ~
一日ひとつ即興演奏をしています。
なにも考えず、その時その空中に漂っているものをピアノに渡す実験です。