「哭悲 THE SADNESS」　★★★★～世知辛いご時世に勇気あるグロムービーの傑作

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」は、映画鑑賞後の率直な感想を伝えるため、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれる場合があります。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の趣旨についてご理解のうえ十分注意してお読みくださるようご了承願います。

「『シネマ報告書2022』の掲載にあたって」

世知辛いご時世に勇気あるグロムービーの傑作 ★★★★

レジーナ・レイ

ベラント・チュウ

ジョニー・ワン

ラン・ウエイホア

ラルフ・チウ

アップル・チェン

【あらすじ】

　台湾で感染拡大していた謎のウイルス“アルヴィンウイルス”。専門家は警鐘を鳴らすも、単なる風邪の症状と変わらないため、変わらぬ日々が続いていた。

　しかしある時、アルヴィンウイルスが突然変異を起こし人間の脳に作用して凶暴性を助長、感染者たちは罪悪感に苦しみながらも暴力衝動に抗えず、街中で殺人と拷問が横行する事態になる。

　離れ離れになってしまった恋人同士のカイティンとジュンジョーは、なんとか生きて再会べく、狂気に満ちた街を彷徨う―

【コメント】

　2022年のレビューもあと数本。あれも観てないこれも観ときゃよかったと心残りはある状況ですが、その中でもこれは絶対に観ておかなくてはいけないぞと決めていたのが本作。とてつもないゴア描写でR18+指定を受けた台湾製ホラーです。

　本作、7月に劇場公開されていて、R18+指定の影響なのか都内でも劇場は数館、しかも連日満員の大盛況だった模様。僕もネットで予告を観てかなりグロそうだぞと、果たして劇場で観て耐えられるだろうかと躊躇したまま、結果的にスルーしてしまいました。

　今般、年の暮れにめでたくレンタルが開始されたのですが、いつもながらTSUTAYA DISCASでいつレンタルできるか分からない状態。じゃあどこかで配信されていないかと調べていたところ、動画配信サービス「U-NEXT」で独占配信されているとの情報を得、ここは本作を観るために思い切ってU-NEXTに登録、鑑賞に至った次第です。

　U-NEXT、ちょっと月額高いなーと思っていたんですが、何気にラインナップが充実しているし、雑誌や漫画も読めるのでお得かもしれない。

　いや～これは・・・グロぜ・・・予告や口コミに寸分たがわずグロかった・・・これでもかというほどの血、血、血の嵐、四肢損壊、贓物、目を覆いたくなる拷問のオンパレード。でも、面白い！最高に面白いぞ！倫理だモラルだと、とかく映画でも興行収入に影響を与えるR指定、こんな世知辛いご時世にこれほどのゴア描写を盛り込んだ本作の勇気を褒め称えたいですね。もちろんグロもここ昨今では最高峰ですが、ただただグロいだけじゃない、作品としても十分面白く、ホラームービーとして傑作であることは間違いないです。映画鑑賞後の晩に夢に出てきたくらいにインパクトがありましたね。いや～ある意味劇場スルーして良かったかも・・・

　本作は、所謂ゾンビ系ホラーの亜種ではあるんですが、面白いのが設定で、最初は風邪のような症状のウイルスが突然変異によって脳に作用し凶暴性を抑えきれなくなるというもの。しかも感染者自身の意識は残っていて、罪悪感にさいなまれながらも人間が持つ欲求を暴走させ、創造性を発揮してありとあらゆる拷問を繰り広げるという設定が非常に面白い。ゾンビの場合、ただただ人間を食らうだけの存在なんですが、本作はウイルスによって人間本来の本能・本性が助長され抑えが効かなくなるという点は、意外とありそうでリアルなんです。本作を監督したロブ・ジャバスも、昨今のコロナウイルスの世界的拡大が本作の大きなヒントになったそうで、決してSFな世界観じゃないぞと思えてなりません。

　ここ数年、ネットでグロいグロいと評されてきた映画をいろいろと観てきましたが、どれも拍子抜けというか、この程度でグロいと言われるのか、潔癖な世の中になってきたな～と思っていた中で、本作のインパクトは絶大です。平和なのはしょっぱなの10分程度、そこからはありとあらゆるゴアゴアのオンパレード。エグ過ぎてモザイクかかっている部分も何カ所かありますし、血を見るだけで目を背けてしまう人は、本作で卒倒してしまうんじゃないでしょうか。

　しかもただただゴアの凄さだけじゃなく、モンスターと化すそれぞれの登場人物の存在感、キャラが立っているんですね。主人公の美男美女もそうですが、冒頭で顔面の皮膚を引きちぎるババア、性欲丸出しで襲ってくるハゲ散らかした中年サラリーマン、電車でナイフ振り回してサクサクっと人を殺しまくる男、傘で目ん玉刺される渡辺直美似の女子などなど、とにかくそれぞれもシーンがとても強烈に印象に残るんです。

　リアルな設定、容赦ないグロ描写、印象深いキャラたち、本作の面白さはこれに尽きると思っています。

　ラストのバッドエンドも最高で、ウイルス抗体を持つと思われる主人公の女の子（キレカワです）が、助けのヘリが待つ屋上に出た後に聞こえる銃弾の嵐と、彼氏が完全に変貌し不敵な笑みを浮かべるシーン。救われないラストも最高です。

　これだけ話題となった本作、個人的には続編、いや3部作を作るくらいでシリーズ化希望です。本作はウイルス発生から暴徒化する街がメイン、続ける余地は十分にあります。それこそゾンビ映画の大家ジョージ・A・ロメロ御大の3部作にならって製作してほしいところです。まあでも、劇場で観るかはゴア描写次第ですが・・・ともあれ期待です。

【2022年度 Myランキング】（12/23時点）

　本作は、本年度のベスト10中6位（暫定）にランクイン。

　やっと仕事越えたかな・・・？

（ベスト）…　★★★☆以上が基準

　　１位：スパイダーマンノー・ウェイ・ホーム ★★★★☆

　　２位：トップガンマーヴェリック ★★★★☆

　　３位：シン・ウルトラマン ★★★★☆

　　４位：さがす ★★★★

　　５位：ある男 ★★★★

　　６位：哭悲 THE SADNESS　★★★★

　　７位：キングダム2 遥かなる大地へ ★★★★

　　８位：MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない ★★★★