組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。

 

このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。

 

今回のテーマは、「観察事項と改善の機会」について。

 

マネジメントシステム審査の場合、指摘区分は、機関によって異なりますが、一般的には、不適合、観察事項、改善の機会、Good Point・・・などではないでしょうか。

主な指摘区分の一般的な定義を下記に示すと。。。

 

・不適合:要求事項を満たしていないこと

・観察事項:将来、不適合となる可能性が懸念される問題

・改善の機会:パフォーマンスを向上するための活動に改善の余地があること

 

というような感じになります。

 

不適合は、「要求事項を満たさないこと」です。

つまり、「要求事項」には、認証規格(例:ISO9001、14001など)、組織に該当する法適用級事項、技術規格、顧客要求事項、明文化されていないが商慣習的に要求されている暗黙の要求事項、組織が自ら決めた手順などがあります。

したがって、不適合指摘を起票するときは、これらの要求事項を挙げ、それに対して、このような不適合の事実があった、という書き方になります。

 

不適合指摘を第三者監査はもちろん、購買先、協力会社などの第二者監査、自組織の内部監査を経験して起票したことがあればわかりますが、「不適合」は、「書きやすい指摘」です。

基本構文が「○○と規定されているが××ではない」となるからです。

 

書きにくいのは、「観察事項」と「改善の機会」です。

まず、観察事項ですが、「定義的には不適合となるが、一般的には不適合とはしない」ような事例です。

わかり易い事例が、ぱっと出てきませんが、単発的なケアレスミスで、すぐに関係者が気づいてリカバリーしているようなケースは、定義的には「不適合」です。

しかし、原因究明し、再発防止策をとるレベルでもない場合、「不適合」とはしづらいのです。

 

では、ひとつランクを下げて「観察事項」とすると、その指摘の状況が目に浮かぶ場合は、監査結果のレビューアーも「了解」できるのですが、文章表現上は「不足」や「手順との不整合」といった文言になるので「なぜ不適合としなかったのか」と指摘されやすいのです。

 

また、「要求事項を現状は満たしていないとは言いがたいが、不適合になるリスクがある」ケースは、「観察事項」となるのですが、これは、

「現状は、要求事項を満たしていないとはいえないこと」

「将来不適合となる懸念がどこにあったのか」

のふたつを文章表現しないといけないので、書き方の難易度が上がるのです。

 

改善の機会は、「パフォーマンスを向上するための活動に改善の余地がある」という定義になるので、具体的に方法論を示すと「コンサルティング」になり「監査の客観性、公平性」の担保ができなくなります。

かといって、「○○プロセスの運用に改善の余地がある」とだけ書けば、相手には「なんのこっちゃ」となるので、どうしても文章表現は、具体的になります。

具体的に表現すると、監査側が「こうするべきでは?」と暗に指摘しているようになるので、これも、書き方のテクニックが必要になるのです。

 

第三者認証機関の場合は、審査チームの審査結果を審査部門責任者がレビューし、「審査判定委員会」といった会議体で評価するシステムを採用しているケースが多いです。

審査判定委員会は、審査結果を客観的に審議することによって、認証登録の信頼性が高まる、といったメリットもあります。しかし、私見ですが、メリットよりデメリットの方が、現状は殆どの機関で大きい気がします。

差し障りがあるので、簡単に言えば、「審査員としては、組織のことを考えて、また、次回審査チームへの注意ポイントとして一生懸命指摘を起票」しても、下手をすると組織の業態や商慣習を把握していない判定委員のつまらない指摘で、審査員が「判定委員会で無用な議論となり、やぶ蛇になるから、指摘を書くのを止めておこう」という判断に繋がるからです。

 

判定委員、認定審査における認定審査員の全員が「なるほど」という指摘を書くのは、大変難しいです。

ただ、「書かないのが無難」と力量の低い審査員は別ですが、ちゃんとした審査員にそういう行動を起こさせるような判定委員や認定審査員は、この認証制度における「がん」だな、と思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ725号より)

 

【好評発売中!】
『ISOの復権 マネジメントシステム認証制度が社会的価値を持つために必要なこと

(ブイツーソリューション刊)

http://www.v2-solution.com/booklist/978-4-434-26285-2.html

 

“できるビジネスマンのマネジメント本”(玄武書房)

https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/

 

【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】
(パソコンでアクセスしている方)

http://www.mag2.com/m/0000218071.html
(携帯でアクセスしている方)
http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html
Twitter:https://twitter.com/ariga9001