2026年7月10日付の「集英社オンライン」が、

『閉店ラッシュの「イトーヨーカドー」がなぜ復活? セブン&アイから分離されたヨークHD、営業利益急回復の舞台裏』

と題した見出し記事を報じていました。

 

個人的には、イトーヨーカドーの「復活」というか、業績回復は、不採算地域の店舗の閉店と食品分野に資源を集中させたことによるものと、感覚的には、感じています。

 

以下に、この記事を要約し、イトーヨーカドーの「復活」の要因と今後の展望とリスクと機会について、考察しました。

 

《記事の要約》

閉店ラッシュなど苦戦が伝えられてきたイトーヨーカドーが、再び収益力を高めつつある。

運営会社のヨーク・ホールディングスは、店舗の再編やコスト削減を進めた結果、業績が大きく改善し、グループ会社のロフトも過去最高益を更新した。

 

イトーヨーカドーは2025年9月、セブン&アイ・ホールディングスから米投資ファンドのベインキャピタルへ売却された。

売却前には不採算店舗の整理が進められ、2年間で34店舗を閉鎖。北海道、東北、信越から撤退し、首都圏中心の店舗戦略へ転換した。

 

新体制では、組織改革やITコストの見直し、セントラルキッチンの活用など徹底した経営効率化を推進。

さらに、総合スーパーとして幅広く事業を展開する従来型から、「食」を中心とした事業へ経営資源を集中した。

専門店やテナント事業はグループ会社へ移管し、イトーヨーカドーは食品事業に専念する体制を整えている。

 

商品面では、プライベートブランド「セブン・ザ・プライス」を2026年度中に約400品目へ拡充する計画を進める。

価格をメーカー品より1~2割程度抑え、物価高の中で高まる節約志向への対応を強化する。

また、総菜ブランド「YORK DELI」もオリジナル商品の拡充を図り、品質向上と差別化を目指す。

 

さらに、ロフトは大型店舗中心から採算性の高い小型店へ転換し、コスメを軸とした独自性のある売り場づくりが奏功している。

ヨーク・ホールディングスは今後、スーパーマーケットの買収も視野に入れ、事業拡大を目指す方針だ。

構造改革による収益改善を土台に、成長戦略が新たな段階へ入ろうとしている。

(要約、ここまで)

 

《筆者の考察》

<「復活」の本質は"選択と集中" イトーヨーカドー再生は本物なのか>

 

イトーヨーカドーの業績回復は、「復活」と表現されることが多い。

しかし、その実態を冷静に分析すると、短期間で利益が改善した最大の要因は、不採算店舗の整理による構造改革である。

多店舗展開企業では赤字店舗を閉鎖すれば利益率は大きく改善するため、現時点では真の競争力が回復したかどうかを判断するには時期尚早という見方もできる。

 

一方で、今回の改革には単なる店舗閉鎖以上の意味がある。

従来の総合スーパーは「何でも売る」業態だったが、ネット通販や専門店との競争が激化する中、その優位性は薄れていた。

そこでイトーヨーカドーは食品・総菜・日用品へ経営資源を集中し、「毎日の暮らしを支えるスーパー」へ再定義した。この方向転換は市場環境に適応した合理的な経営判断と言える。

 

特に注目されるのは、プライベートブランドと総菜ブランドの強化である。

物価高が続く現在、消費者は「安いだけ」ではなく、「品質も良く家事の負担を減らせる商品」を求めている。

家庭では「一から全て作る」でも「全て買う」でもなく、「手作りに一品加える」という需要が拡大している。

こうした生活スタイルの変化を的確に捉えた戦略は、中長期的にも成長余地が大きい。

 

また、ベインキャピタルの経営手法も見逃せない。

同社は企業を買収して短期利益だけを追求するのではなく、組織改革やIT投資、業務改善を徹底し、企業価値を高めてから成長戦略へ移行することで知られる。

今回も経営合理化を進めたうえで、スーパー買収による規模拡大を視野に入れている。

 

では、セブン&アイ・ホールディングスがイトーヨーカドーを売却した判断は誤りだったのだろうか。

結果だけを見れば「売却後に回復した」と映るが、必ずしもそう単純ではない。

セブン&アイは高収益のコンビニ事業を中核としており、利益率の低いスーパー事業との経営資源配分に課題を抱えていた。

一方、ベインにとってはスーパー事業そのものが主役であり、経営資源を集中できる。

この違いが、現在の成果につながっていると考えられる。

 

もっとも、今後のリスクも少なくない。

食品価格や人件費の上昇、競合スーパーやドラッグストアとの競争激化、ネットスーパーの拡大など、経営環境は依然厳しい。

今後数年間、既存店売上と利益率を維持・向上できるかが、本当の意味での「復活」を証明することになる。

 

企業経営では「何を伸ばすか」と同じくらい、「何をやめるか」が重要である。

イトーヨーカドーの再生は、まさにISO思考でいう「選択と集中」と「継続的改善」を実践した好例であり、日本企業の構造改革の一つのモデルケースとして注目される。
 

 

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